声を出して 37
「結婚式の会場だけをお袋はおさえてくれているけど、どんな形の式にするかはオレ達の希望通りにして貰う事にした。」
「いつの間に・・・・」
「人前結婚にしようかと思う。」
「人前?」
広い公園を歩いているのはスンジョとハニの二人だけ。
田舎の公園とはいえ、植えられている木は手入れされ、雑誌やドラマや映画の撮影に使われそうな雰囲気だった。
「参列してくれる人たちの前で、結婚の誓いをするんだ。で・・司会はギョンス先輩に頼んだら、快く引き受けてくれた。」
「素早い・・・・知らないうちに、スンジョ君がいろいろ考えてくれているとは思わなかった。」
カサカサと落ち葉を踏む音が、ハニの言葉に同調するように音を立てている。
「ハニはそこまで気が回らないだろ?ドレス選びは男のオレでは判らないからな・・・・オレが出来る事はしておいただけだ。」
「そうなんだ・・・・・」
スンジョが時々メモを見ながら、結婚式の段取りを話してくれる姿を見て、スンジョでもメモに書いて考えるのだと思った。
こうして段取りを聞いていると、少しずつ緊張して来たのを感じた。
本当に、私はスンジョ君と結婚をするんだ。
話す事も出来なかった二年半。
物陰からスンジョ君を見る事だけでも幸せで、目が合ったと自分勝手に思い込み、誰かと話している声を聞くだけで耳がダンボになった。
勇気を出して手紙を書いたのは大失敗だったけど、パパのお陰で学校中で一番スンジョ君の近くにいる事が出来るようになった。
意地悪ばかり言われて何度喧嘩をした事か。
ヘラとお見合いをしたと知った時は、もうこの世の終わりだと思うしかなかった。
それなのに・・・・それなのに・・・・・
「新婚旅行はどこに行く?」
「時間が取れない。」
「行こうよ!ねぇ・・・・」
「じゃぁ、どこがいいんだ?」
「オーストラリアか・・・・イタリアなんて行きたいな・・・」
「3泊4日が限界だ。」
「じゃ・・・島がいいな・・」
「汝矣島。」
「よ・汝矣島って、ソウルじゃない。せめてソウルから離れて・・・・済州島とか・・・・」
スンジョがポケットから携帯を出して、インストールされているゲームを起動した。
「同じ絵柄が三つそろったら、ハニが行きたい済州島にしてやるよ。」
「本当?って・・・あ~~~揃わないように細工していない?」
「していない。いいからやってみろよ。」
オレが一人でハニに聞かないで決めた段取りだ、新婚旅行くらいはハニの希望に沿わせてやらないと・・・・・ たしかに細工はしているよ。
三つ絵柄が揃うように・・・・
ハニは揃った絵柄に驚き、ピョンピョンと兎のように飛び跳ねて喜んでいた。