声を出して 38
なんだかんだ言っても、スンジョ君はスンジョ君なりに、私の事を考えていてくれた。
ひねくれスンジョ君の事を、私はまだ判っていないのかもしれない。
「スンジョ君!大好き!」
「おい!離れろ!!」
「ふふん・・・・」
「何がふふん・・・だ。運転をしているのだから、大人しく座って前でも見てろよ。結婚式を挙げる前に死ぬつもりかよ!」
そんなに大きな声を出さなくてもいいのに・・・・
「ごめんなさい・・嬉し過ぎて・・・」
「嬉し過ぎてもいいけど、今死んでもオ・ギドンの娘のままだぞ!」
「どういう意味なの・・・いくつになっても、オ・ギドンの娘には変わりはないでしょ?」
時々スンジョ君は意味がよく判らない事を言う。
「ハニは、ペク・スンジョの彼女にもなっていないのだから。」
「だからどういう意味なのよ!」
ハニをからかうのはオレの生きがいで息抜きだ。
子供みたいに無邪気に笑う顔に、口を尖らせて怒る顔、目に涙を溜めに鼻を赤くしている顔、そのどれもみんなオレだけを見ている時に見る事の出来る表情はオレの好きなハニの顔。
ハニはスンジョに言われたように、顔を正面に向けて座り直した。
ひと月前は絶望の時期だったのに、今は夢を見ているような気持ちだった。
もう数日後にはスンジョとの結婚式。
スンジョにも言われた『彼女にもなっていない』という言葉に反論などする気も無かった。
それが事実なのだから。
スンジョからの告白も無ければ、付き合っていた訳でもなく、ハニに了承することなく、行き成り親の前での結婚宣言だったのだから。
「さっきまで燥いでいたのに、妙に静かだな・・・・目を開けたまま寝たのか?」
「起きてる!私ね・・・考えたのだけど・・・」
「考えた?」
「どうせ死ぬのなら、ペク・スンジョの妻として死にたい。」
クスッとスンジョが笑うと、ハニは何が面白かったのかと不思議そうな顔をした。
「結局お前は結婚をする前に、死ぬ時の事を考えているのか?」
「そう言うわけじゃ・・・・」
「判っているけど、何か食べて帰るか?どうせこの時間に家に帰っても、オレたちが泊まって来ると思ってお袋は夕食を作っていないだろうから。」
「デート?」
「デート。」
「うん!!」
ハニはまたスンジョの腕に抱き付くと、驚いたスンジョは急ブレーキを踏んだ。
「だから、まだオレは死にたくないから。死にたいのなら自分だけにしろ!!」