日本全体が一つの「ラグビーチーム」になる日
黄 文葦
現在、日本でラグビーが盛り上がっている。9月20日から11月2日まで第9回ラグビーワールドカップが日本で開催されている。アジア初の開催となる。特に、ラグビー日本代表の活躍ぶりが話題になっている。
私は時々サッカーを観戦しているが、ラグビーについては全然興味がなかった。最近、ラグビー日本代表のおかげで、ラグビーというスポーツに興味を持つようになった。日本代表選手31人のうち、15人が外国出身、日本に帰化していない外国籍の選手も7人いる。ラグビー日本の国際化に感心した。
日本国籍でなければ代表選手にはなれない野球やサッカーなどのスポーツと違い、ラグビーは国籍にとらわれない独自の選考基準がある、日本を例にすると、一、出生地が日本。二、両親、祖父母のうち1人が日本出身。これは血縁による条件。三、日本で3年以上、継続して居住。または通算10年にわたり居住。これは地縁による条件。以上三つの条件を一つクリアすれば、ラグビー日本代表になれる。実は数十年間にわたって、ラグビー日本が積極的に「外の人」を「内の人」として迎えている。そのオープンな素晴らしい姿勢に拍手を送りたい。これからもラグビー日本を応援したいと思っている。
選手の選考基準から見ると、ラグビーは寛容なスポーツだと言える。ラグビー選手がチームを選ぶ自由度は高そうである。一つの発想だが、もしも卓球にラグビーのような選手の選考基準ができたら、多くの中国出身の卓球選手が世界の国々で活躍できるではないか。そうしたら、世界の卓球レベルが一気にあがるはず。
ラグビー日本代表からいろいろ考えさせられた。「国籍は何ですか」、「ナショナリズムは何ですか」と改めて考えてみたい。将来、国籍が消えていく日が来るのではないか、と思ってしまった。国々の人間同士の異文化刺激はかけがえのない価値あるものである。
周知のように、日本で暮らす外国人が段々増えてきた。2018年末の在日外国人が273万人で、総人口に占める割合が今年から始めて2%を超えて、2.09%になった。また、出入国管理法の改正に伴い、今年4月から新たな在留資格として「特定技能1号」と「同2号」が新設された。20年後、外国人が人口の5%以上を占める可能性が十分ある。
日本の外国人政策はラグビー日本の精神に学ぶべきだと思う。日本全体が一つの「ラグビーチーム」になればいい。いろんな肌の色と文化背景の人が理解し合い、同じ目標に向かって頑張る。ラグビー日本が多文化共生社会の理想なモデルになっている。
日本における外国人労働者受け入れ政策は、なかなか労働者が足りないという「建前」から抜けられない。現場の労働者が足りないという問題点だけではなく、少子高齢化で人口が少なくなっていく。正真正銘の移民政策が必要ではないか。ラグビー日本のように国籍を超えて、地縁・血縁を生かして、幅広く優秀な海外人材を受け入れるべきだろう。目の前のニーズで、単純作業の労働者を受け入れることが急務だけれども、日本の将来のために、これからは高度人材を招くべきである。高度人材は日本で労働するだけではなく、日本にどんどんアイデアをもたらすはず。その価値は無限大だ。政府には、優秀な人材が働きやすい環境を整えていただきたい。
また、政府は外国人に対し、「以心伝心」が足りなさそうである。外国人を「人間」ではなく単に「労働力」と見なした結果、日本では「日本人社会」と「外国人労働者社会」が分断されやすい。あとどのぐらい日本にいられるのか、次のビザ更新はできるのか、それは多くの外国人労働者を悩ませる問題である。
知り合いのバングラデシュ人留学生は専門学校で学んでおり、来年卒業する予定。今年から一生懸命就職活動をしている。しかし、この前、合同就職説明会に行ってみたら、いくつもの会社から「日本人社員のみ募集する」と言われ、がっかりしたという。それでも日本で仕事をしたいと言い続ける彼は諦めずに頑張っている。せっかく日本に馴染んできた留学生に対し、しっかり就職支援制度を整えてもらいたい。例えば、専門士の資格を持つ専門学校卒業の留学生に特定技能の一年間在留資格を与える。それから、彼らが日本で仕事を探す。専門学校の二年間、留学生は勉強に専念したほうがいい。
ラグビーのスタジアムで、肌の色が違うラグビー日本代表の選手たちが肩を組んで、尊く「君が代」を歌う。テレビでこの光景を観て、本当に誇らしい日本代表チームだと思わずにいられなくて涙が出た。20年近く日本で暮らしている私には確かに「君が代」は美しいもの。外国人がこころから日本を愛するために、日本にとっては、できることはなんだろうか。それは政府の課題でもあり、日本人の人生の宿題でもあるかもしれない。近い将来、日本全体が一つの「ラグビーチーム」になる日が到来するだろう。日本がラグビー日本代表のようにいつまでも生き生きしてほしい。