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マヤ

臣隆妄想劇場⑦(修正版)

2019.10.12 07:20


『理性①』


 久しぶりに隆二のマンションを訪ねた。


インターホンを押す時間すらもどかしく思い、持っていた合鍵を使い中に入る。


部屋は綺麗に整頓されていて、人の気配はない。


ここじゃないのか?


時計を見ると、夜中の2時になっている。


迷うことなく、健ちゃんに電話をかけてみる。


『臣ちゃん?』


「健ちゃん、夜中に悪ぃ…」


「隆二、一緒じゃないかな?」


『隆二?隣で潰れて寝てるで』


やっぱ健ちゃんのとこか…


「今どこ?俺もそっち行っていい?」


『ん?ええけど、俺明日の朝早いし、そろそろ隆二送って帰ろうかと思ってたんや』


「健ちゃんと隆二だけいんの?」


『そやで』


「そっか…隆二は俺が送るから、もう少しそこで待っててよ」


『えっ⁉️わざわざ臣ちゃんが?』


「…うん、ちょっと隆二に用事があって…」


スマホを片手に健ちゃんと話を続けながら、タクシーを止め乗り込む。


『こいつ話できる状態とちゃうで。

今日はやめといた方がいいんとちゃうか?』



「とりあえずタクシー乗ったから、そっち行くね」


『えっ…そうなん?相変わらず早いな!えっと、場所は…』



数十分後、健ちゃんと合流して、泥酔状態の隆二を託された。


苦しい言い訳だな。


健ちゃんも流石に納得いかない顔してた。


タクシーの後部座席で俺の肩にもたれ、眠っている隆二の顔を見ながら考えを巡らす。


さて…どうするか?


二人で暮らすマンションに、同時に帰るワケにはいかないし…


仕方ない。


とりあえず隆二のマンションへ。


エントランスギリギリまで車をつけてもらい、隆二をおぶって足早に部屋へと向かう。


しばらく使っていないベットルームはキチンと整理されていて、少し寂しい印象を受けた。


隆二をそっとベットに寝かせ横に座る。


すると、隆二が手を伸ばして俺のTシャツの袖を掴み、

「健ちゃん…もう一件付き合え…」

と言った。


隆二の髪を撫でながら答えた。


「隆二…健ちゃんなら、もういないよ」


「お前どうした?何で家にいないの?」


「臣…えっ?…ここどこ?」


「お前のマンション」


「……」




「出かける時はメールよこせよ。心配すんだろ?」


やけに優しい声で臣が囁いた。


「臣…」


「健ちゃんの所で良かった…」


俺のピアスを軽く揺らし、親指が唇に触れた。


目を閉じてゆっくり顔を近づけてくる。


あ…キスされるな…


と思った瞬間、怒りが込み上げてきた。


「…んだよ。日本一のモテ男が…」


ピタッと臣の動きが止まり、大きく目を見開いた。


酔いに任せて、本音が口をついて出てくる。


「俺がつなぎで、あっちが本命じゃないの?」


「えっ?」


「俺は、本命と会えない時用のおかわり君かよ」




言ってることは滑稽だが、とても笑える内容ではない。


「お前…どうした?あんなゴシップ信じんのか?」


以前の隆二なら「臣も色々大変だね」と笑って軽く流してくれた。


「昔とは状況が違うだろ?」


「俺のこと信じられないのか?」


「…」


隆二の細くて長い首に手を当て、

スーッと撫で下ろし、頸動脈に触れると、早鐘のように脈打ってるのがわかる。


「俺に触んな」


「…隆二⁉️」


「二股か三股か知んないけど…キスしたいんなら本命とすればいいだろ?」


「いい加減にしろよ!」


「るせーっ!そんな…ペアの指輪嵌めた手で…俺に触れん…」


言い終わらないうちに隆二の顎を上げ、強く口づけする。


「んん…」と抵抗して突き放そうとする隆二の腕を掴み、ベッドに押し付けた。


一瞬顔を逸らして「やめ…」と隆二が呻(うめ)いた。


くっそ…


やっぱりキスだけじゃ、心まで繋ぎ止めておけないのか?


嫌がる隆二の唇を、強く吸い続けた。





『理性②』



次第に隆二が大人しくなり、そっと唇を離してみる。


「はぁ…は…ぁ」


お互いに息づかいが荒い。


「…隆二?」


全身に酒が回ってるようで、

俺の腕の中にいる隆二は、ほんのり赤く染まり、息をのむほど色っぽい。


「はぁ…きつ……い」


「もういいだろ…帰れよ…臣」


俺は下唇を強く噛み、悲しげな表情を浮かべた。


…どうすれば信じてくれんだよ?


本能的に行動を起こす。


隆二の首に唇を押し付け、

場所を変えながら音を立て強く吸う。


「⁉︎…なに…すんだよ…やめろ!」


唇を離し、隆二の上体を少し起こして、Tシャツを剥ぎ取る。




えっ⁉


アルコールのせいで、状況を把握するのに時間がかかる。


目を凝らして見ると、

ピアスを激しく揺らしながら、

臣もTシャツを脱ぎ捨てている。


お互いに上半身ハダカのまま、

臣は俺を強く抱き寄せた…


あまりの衝撃で、体に電流が走る。


今まで何度も唇を重ねてきたが、

こんな風に体を重ねたことはなかった。


「は…なせよ…臣…」


「俺は…お前だけなのに」


「信じてくれないなら、こうするしかないだろ?」


また唇を合わせ、舌を絡ませてくる。


いつもしているのとは、まったく異なる激しい口づけ…


そんなことはしないって言ってたのに…


…あ…でもそうじゃないな。


どこかでこうなることを望んでたのは、俺の方かもしれない。


しばらく一方的で強引な愛撫が続き、

「はぁ…」と臣が一呼吸する。


やっと自由になった両腕を、

ゆっくり臣の首に回して言った。


「臣…ひとつになりたいの?」


「そうするしか…」


臣が答えた。


「そうなったとして…今まで通りに…歌える?」


「……」


返事はない。


きっと今まで通りってワケにはいかない。


だから、そこは…


絶対に越えちゃいけない一線なのに。


しばらく見つめ合った。


一瞬、険しい表情を浮かべ、

臣は意を決したように、また強く口づけをしてくる。


荒々しい生き物のように、

臣の舌が絡んでくる。


ダメだ…辛い…


無理やり臣の顔を引き離した。


「臣…聞いて…お願い」


「…な…に?」


息が荒く、声がうわずっている。


「どうしても俺と…そうなりたいのなら…俺達のあの部屋でしてよ…」


「……」


「ここではやめてくれ…」



「…別れた後が…辛くなるからさ…」



「……」




隆二は左腕で顔を隠している。


汗か涙か…目から光るものが落ちた。


長い沈黙の中、俺の息づかいだけが聞こえる。


隆二は、声が出そうになるのをグッと押さえているようだ。


「別れた後の話なんかすんなよ…」


絞り出すようにそう呟くと、

俺は隆二から離れ、ベットにうつ伏せになった。



二人でいるのに、

切なくて、孤独な時間が流れていく。



二人はそのままで朝を迎えた。



すっかり日も高くなった頃…


「隆二、大丈夫か?…帰るぞ」


そう言って臣はベットの横に立ったまま、よく冷えたペットボトルを俺の頬にくっつけた。


「ん…」


気分が悪い…


こりゃ完全に二日酔いだな。


「シャワーは家に帰ってからにしろな」


「ん…顔だけ洗ってくる」


「ほら」と手を差しのべてきて、俺を起こした。


一瞬ふらつき、臣にもたれかかる。


昨日のあのセリフ…怒ってるだろな?臣…


しばらく立ったまま無言で抱き合う。


俺は臣の左肩に顎を乗っけて、ようやく立ってる。


「洗面所までついてこか?」


あれ?優しい…


「大丈夫、一人で行けるよ」


そう言って臣の顔を見上げた。


「うわっ …お前…ひでぇ顔」


「目、腫れてるぞ!鏡見てみろ」


優しい笑顔で送り出された。


ふらふらと洗面所へ向かいながら思った。


臣…怒ってないのかな?


「ゆっくりでいいからな!」


キッチンの方からコーヒーメーカーのスイッチを入れる音が聞こえた。


鏡に写った自分の顔を見て、しばらく立ち尽くす。


うわっ…ホントだ!ひでぇ顔…


ん?…なんだ?このアザ…




入れたてのコーヒーを手に持ち、

広いリビングのソファーに腰掛けようとすると、洗面所から隆二の絶叫が聞こえてきた。


「なにこれーっ!?…キ…キスマークだらけじゃん…」


何も答えないで、片方の眉をひくっと上げて、コーヒーを飲み微笑んだ。


「明日の撮影どーすんの?これ…」




未遂だよ…未遂



理性の勝ちだ。