会津八一「学規」展示
9月下旬の学園祭校内書道展では、書道の探究学習の一環として会津八一(1881~1956年)「学規(がっき)」を展示しました。
書道で扱う素材は文字です。その文字は先人が叡智を結集して作り出し、長い歳月をかけてその文字に「美」を与えてきました。
書は同じ文字でもいろいろな書き方ができます。
高等学校芸術科書道の学びでは「漢字仮名交じり書」の学習を行います。
この学習では、文字や言葉のイメージに合わせて、線の太さや強弱、墨の濃淡による表現などを工夫し、いろいろな線で書に表情を生み出すことを学んでいきます。
そして、作者の思いや伝えたい文字や言葉のイメージを、それまでに学んだ「書の古典の書風を生かして」作品づくりを進めていきます。
墨の濃淡、字の大きさや太さ、文字の配置などを工夫することで、自分の気に入ったことばに命を吹き込み、ご自分の想いを伝えていく創作活動が「漢字仮名交じりの書」の表現です。
また「漢字仮名交じりの書」の学習では、その見方や考え方を知るために、近現代の文学者や作家や芸術家の残した書に触れたり、言語を豊かにし文字文化を尊重するために先人が残した書の文化的価値や伝統を学んでいきます。
それらを鑑賞したり創作活動をしながら、「見る・比べる・考える」の視点で文字全般に関しての視野を広げ,文字表現を通して言語を豊かにしながら、鑑賞と創作を繰り返すのが「漢字仮名交じりの書」の循環学習です。
高等学校芸術科書道の学習では「文字文化」の伝統の継承の意味でも、機会あるごとに文字の「美」に触れ、それらの名筆を鑑賞したり、その名筆を構成する様々な要素を学んでいくことが大切です。
本年度の学園祭では、「漢字仮名交じりの書」の鑑賞教材として、会津八一(1881~1956年)先生の「学規」を展示しました。
会津八一先生は新潟県出身。東京専門学校(現早稲田大学)卒業後(明治39年)、新潟の有恒学舎の教師として赴任したのが教育者としての始まりでした。
八一先生はこの地に4年赴任し、明治43年には坪内逍遥の推薦で早稲田中学の英語教師となります。
超人的な授業時間数での学生との接触は、彼の生き方を支える大きな魅力となりました。
大正3年には「秋艸堂学規」という八一の人生訓を学生に送ります。
会津八一先生は1881年(明治14年)8月1日に生まれたことから八一(やいち)と名付けられました。書家、歌人、美術史研究など、幅広い活動で知られています。
早稲田大学では東洋美術の研究に勤しみ、型破りの先生であったため、多くの学生たちが先生の下に集まってきたと言われています。
その学生たちに、大正3年に「秋艸堂学規」という八一の人生訓四ヶ条を学生に書いて与えました。
それがこの「学規」です。
簡潔ですが、一つ一つの言葉が大きな力で伝わってきます。
會津八一は、その後も自ら定めた「学規」を座右の銘とし、弟子たちにも書き与えていました。
一.ふかくこの生を愛すべし
一.かへりみて己を知るべし
一.学芸を以て性を養ふべし
一.日々新面目あるべし
1命を大切にし、 2 反省を怠らず、 3 学問芸術で人格を磨き、 4 毎日着実に前進しようという生活の指針は、どんな立場の人たちにも大切な内容です。