【事例編】地中で暮らす動物を地中のエネルギーで守る~埼玉県こども動物自然公園
地中で暮らす動物を地中のエネルギーで守っています――。埼玉県こども動物自然公園(埼玉県東松山市岩殿554)では9月13日、新動物舎「ecoハウチュー」が新たにオープンしましたが、施設の空調で地中熱利用ヒートポンプシステムを導入した点も注目されます。導入の経緯やシステムの概要などを取材しました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
※この記事は「Geo Value」Vol.85(ECO SEED配信:2019年10月15日)より転載したものです。
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◆9月13日にお披露目された屋内展示の新動物舎「eco ハウチュー」に地中熱導入◆
埼玉県こども動物自然公園は1980年に開園した東松山市内にある県立の動物園。46ヘクタールの県内最大級の動物園であり、県内学校の遠足の地としても県民に親しまれ、取材当日も数多くの観光バスが来園し、平日でも多くの来園者で賑わっていました。
その埼玉県こども動物自然公園で9月13日にお披露目となった「ecoハウチュー」は延床面積253㎡の屋内展示舎。舎内は昼に活動する動物と夜に活動する動物を展示するエリアに分かれ、国内初公開となるキボシイワハイラックスやグンディ、ウスイロホソオクモネズミを含む計19種類が飼育・展示されています。
◆熱源は鋼管杭方式、直接膨張方式の地中熱ヒートポンプを導入◆
地中熱利用ヒートポンプシステムはこの新しい舎で導入されました。地中熱の採熱管は、入り口の反対側にある作業車の駐車スペース等に設けられています。鋼管杭方式で、深さ12mの鋼管杭15本設置。ヒートポンプは直接膨張方式の地中熱ヒートポンプ(冷暖房能力6.8kW2台、開発:ホームエネシス)で、飼育員等が作業等を行う部屋(バックヤード)の冷暖房、「ハダカデバネズミ」(右下写真:ECO SEED撮影)を展示する部屋(4.0m×2.5m)の暖房で使用しています。
◆温度、湿度変化に極めて敏感な「ハダカデバネズミ」の暖房に使用◆
地中熱を暖房熱源として利用している「ハダカデバネズミ」は、アフリカ大陸産の地中性のげっ歯類。生涯のほとんどを地中で過ごす特殊な生態で、体毛がなく視力もほとんどないのが特徴です。近年ではその独特な風貌等から人気が高まっていますが、特殊な環境下で生活することからも、温度や湿度の変化に極めて敏感で、部屋は常に25℃~30℃に保つ必要があり、地中熱は主に年間を通して暖房として利用するとのことです。
この地中熱利用ヒートポンプシステムにより同規模の空気熱源ヒートポンプに比べ、電気消費量を約40%削減できる見込みとなっており、今後の運転成績等も注目されそうです。
◆「こども動物自然公園ECO Zoo整備事業」で2012年度から再エネ設備順次導入◆
新動物舎で地中熱利用ヒートポンプシステムを導入した背景には、埼玉県が進める「エコタウンプロジェクト」があり、その一環として、埼玉県こども動物自然公園では2012年度から『こども動物自然公園ECO-Zoo整備事業』を進めています。
これにより、2012年には太陽熱を利用した「カピバラ温泉」、2013年には太陽光発電によるコアラ舎の冷暖房、2014年には太陽光発電によるペンギンプールの波動装置などを導入。2015年には飼育している動物のフンを利用した堆肥化なども実施しています。地中熱利用は一連の取り組みの1つで、最も新しい取り組みとなっています。
動物舎等施設への再生可能エネルギーの導入は、各施設設備の更新に合わせて行われており、今後も順次進められていく見通しとなっています。今後ほかの施設でも地中熱利用が進むか注目されます。
なお、最寄り駅は東武東上線「高坂駅」。高坂駅西口から「鳩山ニュータウン」行きに乗車し、「こども動物自然公園」バス停で下車。
※埼玉県こども動物自然公園ホームページは下記アドレス。