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ハニー's Room

声を出して 44

2019.10.16 14:15

言わなくてもいい事を言って、言わないと判らない事を言わないで


それは自分でもよくわかっていた。

 でも、あの時にハニに言ってはいけなかった。

 結婚式まであと数日のこの時に、ハニと喧嘩をしてはいけない。 

オレだってそうだから、ハニなら尚更の事、勉強に身が入らないだろう。 


「お袋、悪いけど甘い物を作ってくれるか?」 

「まぁ!スンジョが甘い物?」 

「オレじゃない。」 

グミはピンと来た。

 「スンジョも、変わったわね。」

 「そうか?」

 「ハニちゃんはいい子でしょ?」

 「いい子かどうか・・・・課題提出を忘れるなんて、小学生並だ。」 


そんな事を言っても、それはハニの為に言った言葉だった。


「忙しかったって、そんなのが理由になるか!」

 「判っているわよ。自分でもちゃんとやるつもりで、途中までは終わらせていたけど、ドレスや指輪を選ぶのにスンジョ君が・・・・・」 

「お前はそうやって、人の所為や何かの所為にする。その性格を治せ!」

 「私に性格を治せって言うよりも、スンジョ君の性格を治した方がいいと思う!!」

 家の中で喧嘩をすれば、ハニもお袋が間に入って来るのを判っていたから、大学の駐車場に向かう間に言いたいだけ言って車に乗った。 


普通は、喧嘩をした後に食べる物も不味くて喉を通らないのに、アイツはいつもと変わらずと言うよりも、いつもよりも素早く食べ終えていた。


「おばさん、少し体調が悪いので、片付けを休んでもいいですか?」

 「いいわよ。お式も近いし、精神的に不安定なのよね?」

 お袋は単純にそう思ったのだろう。

 さすがにウンジョは、こちらの事情も分からないし、いつもと同じ調子で嫌味を言っているだけだった。 


「体調が悪いって言うのに、脂っこいステーキを一気に飲みこむように食べるし、ご飯粒一粒も残さずに食べているし・・・・・いてっ!蹴っ飛ばすなよ。」

 「蹴ったのは、ハニじゃない。お兄ちゃんだ。まだみんなが食べているんだから、食べ終わるまで席を立つな。」

 「寝たいの!」 

癇癪を起こしたハニを止めるのは、父親であるおじさんでも無理だと言っていた。

 「甘い物でも食べれば、落ち付くかもしれんな・・・・」 

それはハニだけじゃなく、一般的に女の子は甘い物で釣ればいい事は、女の子の気持ちを知らないオレでも判る。 


お袋に作ってもらった、ハニが大好きだと言っていた『メガプリン』 甘くはないが、全卵と生クリームで作ったこの味が好きだと言っていたらしい。

 「ハニ・・・ちょっといいか?」

 「・・・・・・」

 思った通り、返事はなかった。 子供みたいなところも、今は可愛いと思う。 

「返事をしなくても開けるからな。」

 勢いよくスンジョがドアを開けると、ハニは机に向かって座っていた。 


「ハニらしい・・」 

その言葉が思わず声に出てしまっても、ハニは動く事はなかった。

 一歩一歩静かに歩いて、机の上に『メガプリン』を乗せたトレイを置いて、スプーンで少し救って半開きのハニの口の中に入れると、ぐっすりと眠っているのに、それを美味しそうにペロンと食べた。