声を出して 45
「う~~~さむっ・・・・」
窓を少しだけ開けて寝た覚えはなかった・・・・と言うよりも、机に伏して眠った記憶はなかった。
夕食もそこそこよりも、いつもと同じくらいしっかりと食べたからなのか、お腹の満腹感がいつも以上・・・・・・
「あれ?」
机の上に置かれた食べかけのメガプリン。
デザートを食べた記憶もないし、ここに持って来た記憶もないのに、どうして食べかけのメガプリンがあるのだろうか。
「おばさんが作ったメガプリン・・・・・遅い時間だから、食べるのが心配だけど、このプリン私の為に作ってくれたんだよね・・・・おばさん・・・本当に私に良くしてくれて・・・・遅い時間だとか言って食べないのもね・・・・・・」
結局ハニは、時間を気にしていても全部きれいに食べて、満足そうな顔をした。
遅い時間でも、食べた食器をそのままにしておくわけにもいかず、静かに部屋のドアを開けてキッチンに持って行く事にした。
「全部食べたのか・・・・」
背後から聞こえたその声に、危うく持っていた物を落としそうになった。
「!!ビックリした。驚かさないでよ。」
スンジョはハニが持っていたトレイを受け取ると、呆れたように笑った。
「お前ってさ・・・寝ていても食い気はあるんだな。」
「何の事?」
「判んないならいいさ・・・・」
ハッとした。
確かに、夢の中で食べた記憶はあった。
やたらリアルで、味覚も体感もあった。
「バカみたいに口を開けていたから、すくって入れたら起きている時よりも美味そうに食べていた。」
何も言い返せない。
喧嘩をしたから言い返せないのではなくて、何をしている時が一番幸せかと言えば、スンジョとこうしている時が幸せだが、甘い物を食べていると嫌な事を忘れたり、自分の行いを素直に反省する気持ちになるという事が、情けないが認める事の一つだ。
「私ね、スンジョ君の言うとおりだと思う。やらないといけない事をやらなかったからいけない。結婚の準備で忙しいのは言い訳。学生の本分は勉強・・・・スンジョ君のいい奥さんになるように努力をするから、嫌いにならないでね。」
子供みたいに素直に話す事を、自分は見習わないといけないと思った。
「言葉にするのは簡単だけど、本当にオレのいい奥さんになる努力をしろよ。」
「うん!」
スンジョのちょっとした一言だけで、輝くような笑顔になるハニ。
本当は言葉にして声に出すことが、スンジョには一番難しい事は本人も判っていた。