声を出して 51
「おばさん、お風呂借りまぁ~す。」
いつもは二階の風呂にハニは入るが、今日はミナとジュリと三人で入ったら・・・とグミに言われて、一階のグミとスチャンとギドンが使う広いバスルームを使う事になった。
きゃあ、きゃあと楽しそうに燥ぎながら、バスルームに向かって行くハニを見ていると、ギドンは納得はしたもののもう少し自分の可愛い娘でいて欲しかった。
「ギドンさん、お茶をどうぞ・・・・」
「すみません・・」
「はい、パパも・・」
熱いお茶をすすりながら、三人は無言でリビングのソファーに座っていた。
幼い子供のように、騒いでお湯をかけ合っているハニとミナとジュリの様子が、盗み聞きをしなくても判るくらいに楽しそうだった。
「ハニちゃんたち、楽しそうね・・・・」
「まったく、明日は結婚式なのに、いつまでも子供で・・・・・」
「いいじゃないですか。私が急かしてしまったような結婚式に、ハニちゃんにもギドンさんにも申し訳ない気持ちがするのですよ。」
「申し訳ないだなんて・・・・母親がいないものですから、何を準備したらいいのか・・・」
「準備なんてしなくてもよかったのに。お前は律儀だからな・・・・・」
結婚式の費用の殆どをスチャンが負担をし、二人が新婚生活をする為に使う部屋の改装までして貰い、甘えっぱなしの気がして気が引けていた。
「私も19歳と早い年齢で結婚したのですけど、いつが適齢期何んてわからないからと思ったけど、ハニちゃんの気持ちを考えたら早くにお式を挙げてペク家の嫁にしたくて、考えたらまだミナちゃんやジュリちゃんと騒ぎたい年齢ですものね。」
親の想いとは裏腹に、明日の結婚式の緊張など全く感じないハニのはしゃいだ声がバスルームからよく聞こえて来た。
ハニたちの楽しい入浴の様子は、二階のバスタブに浸かっているスンジョの所まで聞こえて来た。
普段は別の所から聞こえて来る音や声にそれほど気にすることも無いが、今日はハニの独身最後の夜だからと泊まりに来たミナ達との楽しい思い出づくりと称して騒いでいる事がまたスンジョにとって初めての体験だった。
女の子は何かにつけて思い出づくりと言う事は知ってはいたが、こうして自分もその場面にいると思うと、こんな風にたまには騒いでみるのもいいような気がした。
結婚していずれは親になれば、こうした楽しい時間を過ごすことも無いのだから、今のうちに沢山友達と騒ぐのもいい。
人を気遣う事が苦手な自分の態度に傷付いた時に、心から許せる友達がいれば、ハニにとって辛い事は起こるはずがない。
スンジョが身体を拭いて、髪をドライヤーで乾かしていると、バスルームのドアの前でキャアキャアと騒ぎながら、三人はハニの部屋の中に入って行った。