知れば、知るほど、好きになる 「オルガン」「仮面劇」
楽器ミュージアム
オルガン
ヨーロッパの大聖堂を訪ねると、何本ものパイプがそびえるオルガンが眼にとまります。色彩に溢れるステンドグラスのように、豊かな響きで空間全体を包み込むオルガンの歴史はたいへん古く、紀元前にまで遡ります。
かつて日本ではオルガンを「風琴」と呼んでいましたが、その名の通り、パイプに空気を流して音を鳴らす、笛と同じ構造でできています。
オルガンの最大の特徴は多彩な音色です。色合いの異なる響きは、パイプの材質や形状の違いによって作られます。パイプはオルガンの表側だけでなく内部にもびっしりと並んでいます。神奈川県民ホールに設置されたオルガンには30種類の音色があって、パイプは全部で2024本もあります。
オルガン奏者は、手鍵盤と足鍵盤を使って演奏しますが、さらにストップと呼ばれるつまみも操作して複数のパイプを組み合わせて、柔らかな弱音から華麗で力強い音まで響かせるのです。
Photoキャプション
(上)神奈川県民ホールのオルガン ©Hiroshi Togo
(左)オルガン内部に並んだパイプ
(右)手鍵盤と足鍵盤が並んだ演奏台 ©Hiroshi Togo
演劇の小箱
演劇の起源は仮面劇
演劇の起源は何でしょうか。確かな資料として残っている最古の演劇は「ギリシャ悲劇」です。紀元前6世紀末に成立したといわれます。哲学者アリストテレスは著書「詩学」の中で、ギリシャ悲劇を分析し、世界初といわれるドラマ理論を書き残し、演劇の要素として、筋(プロット)、人物(キャラクター)、思想(テーマ)、語法(レクシス)、旋律(メロディ)、視覚的装飾(スペクタル)、そして精神浄化(カタルシス)などをあげています。まさに現代の演劇に欠かせないものばかりです。
それでは我が国の演劇の起源はどうでしょうか。歴代室町将軍に愛された「能」でしょうか。さらに時代をさかのぼり、日本書紀に書かれている「伎楽」でしょうか。
実は、ギリシャ悲劇、能、伎楽に共通することがあります。それは仮面劇であることです。太古から仮面を付けることで、人はその仮面が表す存在に変化すると信じられていました。また、演劇とは、本来の自分とは異なる人物や存在になりきり、別の物語を生きる、ということです。仮面と演劇は切っても切り離せないもの。だからこそ、洋の東西を問わず、演劇の起源は仮面劇なのでしょう。
*伎楽(ぎがく):大陸南部・呉国の王族が欽明天皇(540~572年)に伎楽調度品を献上し、推古天皇20年(612年)に伎楽自体が百済から伝わる。ルーツは西域、ギリシャ、インドなど諸説がある。行道(行列して練り歩く:往路)、無言劇、行道(行列して戻る:復路)の三部構成。奈良の大仏開眼供養(752年)でも上演され、正倉院にその時使用された伎楽面が残されている。