声を出して 52
「何か、修学旅行みたいね。」
「こんな風に一緒にお風呂に入ったり、一緒のベッドで眠ったりするのも今日が最後ね。」
ミナとジュリと一緒にお風呂に入って同じベッドで眠るのは、時々お互いの家に行ってしていた事だが、ペク家に来てからは初めての事だった。
「そんなことないよ。これからも時々こんな風に泊まりに来てよ。」
ミナとジュリは顔を見合わせてクスッと笑った。
「それは無理だよ。」
「無理?」
「ハニは、明日からペク・スンジョの奥さんだよ。」
「そうだよ、結婚をするのだから。」
鈍感なハニは、ミナやジュリが言おうとしている事がまだ理解出来ていなかった。
「判んないの?ハニは。」
「うん、親友じゃなくなるの?」
「それはないよ。私達はこの先もずっと親友だよ。ただね・・・・」
ミナはこう言った事を言うのはちょっと苦手だ。
それとは反対に、ジュリはいつも気を張らずに普通に話す事は平気だ。
「あのさ・・・・あんたはペク・スンジョの奥さんになるんだよ。まず同じベッドで眠るのは私たちじゃなくて、ペク・スンジョ!」
「あっ!」
「そして、一緒にお風呂に入るのもペク・スンジョ。」
「そ・そ・そ・・・それは困る・・・・・」
「困るって、一緒にお風呂に入ったりする以上の事を、一緒にベッドに入った時にするんだよ。」
「きゃ~~」
ハニの悲鳴は隣の部屋のスンジョにも聞こえるが、それ以上に階下で飲んでいる親たちにも聞こえた。
「ハニちゃんたち、楽しそうね。」
「そうだね。」
「ハニは、昔から遠足の前に興奮して眠れなくなる子供だったから、寝坊をしないで起きられれば・・・・・」
「大丈夫ですよ。」
ハニたちの部屋から聞こえる話し声は、何を言っているのかはっきりと聞き取れないが、スンジョもウンジョも『うるさい』とは言わず、ただ黙って聞いていた。
「お兄ちゃん、結局ハニを選んだね。」
「そうだな。」
お袋に反発をして、自分の気持ちを誤魔化していたが、結局お袋が思った通りにハニを生涯の伴侶として選ぶことになった。
「でも、お兄ちゃんにはハニがお似合いだよ。お兄ちゃんの性格には問題があるから。」
小学生の弟にも見透かされていた自分の気持ちと、問題のある自分の性格。
確かにオレの捻くれた性格に付き合ってくれるのも合わせてくれるのも、オ・ハニ以外はいない。
「まっ、お兄ちゃんの幸せそうな顔を見たら、誰でもこれで良かったと思うよ。」
少々生意気になって来たウンジョの声も嬉しそうだった。
これで良かった、これが良かったと自分で素直になれた気持が本当に良かったと思った。
「とにかく・・・・・おめでとう!!」
照れ臭いのかウンジョはスンジョにお祝いの言葉を言うと、パット布団をかぶって寝る事にした。