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宝石の国〜創作〜

2019.10.27 13:00

あまりにも、あまりにも言葉が過ぎる、そう叫んで部屋を出たパイライトを、アズライトとマラカイトが追う。部屋の中心で溜息をつくセレスタイトの横でアンダルサイトは表情一つ変えず目の前に佇むチューライトとタンザナイトを見遣る。


「硬度が低いものを予め、ねぇ…。」

「いい例がそこにいるじゃない。」

「うっ…。」

「別に無差別に低硬度をってわけじゃないもの。」

「言いたい事は分かる、それこそいい例が一番側にいるんだから。」

「ねぇ、そこまで言わなくても良くないですか?」

「黙って、セレスちゃん。」

「うるさい、低硬度。」

「後にして、年増さ。」

「言いたい放題だね!?というか、数秒違いで年増さって言われてもなぁ…。」


肩を竦めて苦笑いを零すセレスタイトを横目に、アンダルサイトは俄かに騒がしくなった外を眺める。ふわふわと雪蝶が飛び始め、そろそろ冬眠の準備をしようとジェードたちと話をしたのがつい一昨日だ。その寒い外では先のチューライトとタンザナイトの問題発言『低硬度は生まれる前に壊す。』を金剛先生に報告するべく勇み足で駆けていくパイライトの背中が遠ざかる。そしてそれを追うのはマラカイトとアズライトである。年増さ低硬度と散々な言われようなセレスタイトの次に低硬度の彼らも思うところはある、とまで考えたアンダルサイトは首を振った。事実この隣で笑っているセレスタイトでさえ思うところは無いのだろう。


「とにかく。それは流石に金剛先生に報告、はいくけれど、実行するかは別問題だよ。」

「でしょうね。」

「月並みな言い方で悪いけど、生まれ来る子らにはその理由がある、あたしたちがそうであるように、ね。」

「アンダルは優しいんだか、優しくないんだか、さっぱりだよね。」

「本当にね。」


そう言葉を残してチューライト、タンザナイトはパイライトたちとは別の方向へと向かってゆく。広い部屋に残されたアンダルサイトとセレスタイトはその高い足音が完全に届かなくなったところで、ふ、と互いに視線を合わせて息を吐いた。


「どうするんですか、この案件。」

「どうしたいの、低硬度代表は。」

「いやいやー、代表だなんておこがましい。」

「言いたい事は分かる。」

「確かに、わたしもそう思う。」

「セレスならそう言うと思ったよ、でも、許可はしない。」

「うん、アンダルならきっとそう言うと思った。」


肩を竦めてふわっと笑うセレスタイトにアンダルサイトもようやく肩の力を抜いた。長く意識を持ってしまっているが故に、こうして後続を導く役割などというものを仰せつかるようになって、自由気ままにいた頃を懐かしむ余裕もなくなった。


「パイラ、また余計なこと言ってなきゃ良いけど。」

「わたし、追った方が良いですかね?」

「要らないでしょ、そこはアズが上手くやる。」

「パイラの暴言にマラカが更に混乱させて、アズが上手くまとめるんですね、分かります。」

「セレスは、ジェードたちとの会議があるでしょ。」

「うん、もう少ししたらユークが迎えに来てくれるから、それまでは…。」


一緒に居ようかな、というセレスタイトの言葉は几帳面そうな声で掻き消された。驚いた様子のアンダルサイトとセレスタイトの視線の先では、きらりと黄褐色が輝いていた。パイライトではないと分かるとアンダルサイトは途端に興味を失い、セレスタイトも見覚えが無いのか首を傾げた。


「ユークレースから頼まれてセレスタイトを迎えに来ました。インペリアルトパーズルースです。」

「あぁ、あのトパーズ隊の。」

「トパーズ隊?」


アンダルサイトは訝しげにセレスタイトを見る。


「新しい知識の編纂を金剛先生から頼まれたうちみたいな七体編成のチームですよ。」

「新しい知識、ね。」

「ごめんなさい、お待たせして。すぐに行きます。それじゃあ、アンダル、パイラたちのフォローよろしくね。」

「フォローはセレスの仕事でしょうが。」

「帰ってきたらやるからさ、それまではよろしくってこと!」


不平をぶちまけようとするアンダルサイトに手を振ったセレスタイトはインペリアルトパーズルースと共にその部屋を後にする。しばらく歩いた後にインペリアルトパーズルースが足を止めた。


「低硬度を、意識を持つ前に壊すというのは、本気なのか?」


その言葉に今度はセレスタイトが足を止めた。どう答えるか考えあぐねているセレスタイトの背中に更にインペリアルトパーズルースの言葉が刺さる。


「もう既に意識を持っている低硬度は、どうなるんだ。」


諦めて振り返ったセレスタイトの瞳に何かに堪える様子のインペリアルトパーズルースが映る。あの時、素知らぬふりをしたが、セレスタイトはこのインペリアルトパーズルースをよく知っている。もちろん、インペリアルトパーズルースもセレスタイトをまたよく知っている。その瞳に揺らめく強い感情の色にセレスタイトは更に言葉を選んでしまう。


「何も彼らだって本気じゃないよ、もちろんパイラだって、チューラたちが本気でそう思ってるとは思ってない、ただ…。」

「でもあんたは低高度で、あの人たちは!」

「それは貴方も同じでしょう、ルース。」

「っ…!」

「貴方は優しいからきっと気に病むだろうなと思っていたよ、だからこそ聞いて欲しくはなかった。わたしたちみたいな汚い優しさを理解して欲しいだなんて、言えないもの。」

「汚い、優しさ…?」

「うん、それもまた優しさだよ。」


セレスタイトの言葉にインペリアルトパーズルースはきりりと自身の歯が鳴るのを感じた。


「それは、詭弁だっ…!」

その言葉をただセレスタイトは目を閉じて肯定した。



後続の発見及び育成を目的とした「導師」の集まり。気難しい宝石たちの集まり。


○桃簾石(とうれんせき/チューライト)赤

チューラ。The問題児。中だろうが外だろうが大方問題はこれが起こす。しかしそれを仲間内が責めることは一切無く、甘やかしているとされればそれまでなのであるが、それも含めて魅力なのだと他六つは気にする様子は無い。硬度は六半、唯一タンザナイトと行動ができる逸材でもある。石言葉は慈愛。


○紅柱石(こうちゅうせき/アンダルサイト)橙

アンダル。一応その名の通り大黒柱とも言えるべき七つを繫ぎ止める中心的存在で、時に六つの存在を上手く誘導し、目的のためであれば手段は選ばない。その内側の性質を知るのは秒単位で年長であるセレスタイトのみである。硬度は七半で、七つの中では最も硬く丈夫であることもまた強くある理由である。石言葉は希望。


○黄鉄鉱(おうてっこう/パイライト)黄

パイラ。七つの中では唯一戦闘をある程度得意としていて、周囲への当たりも強く、何かと問題が絶えない。が、仲間を思う気持ちは他の追随を許さず、特にこの七つの繋がりを最も大切に思っている。要は寂しがり屋のガラスハートの持ち主。硬度は六半、むしろこれで多少なりとも脆かった場合が恐ろしい。石言葉は信念。


○孔雀石(くじゃくいし/マラカイト)緑

マラカ。絶対的なバランスと強運の持ち主で、それを仲間内からは悪運が強いだけと揶揄されるものの、そのおかげで今まで難関を乗り越えてきたと言っても過言ではない。が、やはり仲間内からは残念属性としてからかわれ続けている。硬度としては少々脆く四程度だが、そもそもあまり割ることがない。石言葉は繁栄。


○天青石(てんせいせき/セレスタイト)空

セレス。秒単位の差ではあるが一応最年長で、七つのバランサー的役割を担う。いわゆる社畜という言葉でその性質は表され、自己犠牲の精神なのかただのお人好しなのかは置いておいて、使命感や責任感は誰よりもある。が、しかし七つの中では最も脆く、硬度は三半。故に、疲れやすく壊れやすい。石言葉は休息。


○藍銅鉱(らんどうこう/アズライト)藍

アズ。対外的なことを引き受ける窓口のような存在で、比較的とっつきやすい方。調子が良くテンションの高さから浮いていると思われがちで、その実密かに仲間を支えていることをあまり周囲には気付かせない。が、これもまた脆く、硬度は四程である。マラカイトとは同じ銅由来の二次鉱物である。石言葉は清浄。


○ 灰簾石(かいれんせき/タンザナイト)紫

タンザ。独自行動が多く見られるものの壊れたり割れたりすることが少ないいわゆる強い方。特有の多色性も影響して見る側によって様々な性格を見せるが根本的には変わらず、「美しくありたい」というのが本質。硬度は六半。チューライトとは突出した成分の違いはあれど元は同じ鉱物である。石言葉は高貴。



知識の収集を任された「探索者」の集まりトパーズ。中には戦いながら探索を行う者もいる。

○インペリアルトパーズ(シェリー)黄

全ては己の肉体で戦う。ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇るためか、それとも鍛錬の賜物か、とにかく体が強くできている。同じOH-タイプでも後述ルースとは一味違う。ルースの半分の硬さを持っていった原因はこれかもしれない。石言葉は潔白。


○インペリアルトパーズルース(ルース)橙

二刀を使いこなす戦闘狂。シェリーに硬さを半分取られたのではないかと思うくらい脆い、が、七半はある。音楽を嗜む文化的な一面もあるが、基本的には体を動かしていたいタイプ。付き合いが長いメンバーにはよく弄られる。石言葉は誠実。


○グリーントパーズ(グリーン)緑

基本は体を動かさず出来るだけ室内に引きこもっていたい派。が、しかし、大変な負けず嫌いなのでとにかく出し抜こうとする一面があったりなかったり。ただ抜群の観察眼を持ち、知識の編纂においては悪運なども共にしながら他を圧倒する力を見せる。石言葉は高潔。


○ミスティックトパーズ(ミスティ)混合

恐ろしい二面性、というか、中に別の人格が潜んでいるのではないかと思うレベルで意識内の抗争が激しい。体内の微小生物が様々な色を持っているため、との見解だがただ単に解釈違いと戦っているとは仲間の弁。トパーズの中では年若く、知識の編纂に最も意欲的である。石言葉は希望。


○ピンクトパーズ(ピンク)桃

構成元素の偏りによって生まれてしまった、という表現が正しい。そのおかげで随一の引きこもり体質を誇り、他人とのコミュニケーションをほぼ必要としない。しかし基本的に食事を必要としない宝石だが、光を浴びないと割と調子が出ないため、引きずり出されることもしばしば。石言葉は英知。


○ホワイトトパーズ(ホワイト)白

ダイヤモンドとやたら見間違えられるが、ダイヤモンドではないし割と脆いところがある。まだ未定。石言葉は謙虚。


○ブルートパーズ(ブルー)青

一番綺麗。美しい。が、そんなに有名ではない。まだ未定。石言葉は成功。