いつかきたみち、かえりみち。
その笑顔は眩しすぎた。
話している私が卑屈な気持ちになるほどに。
太陽に向けて咲く向日葵のように
まっすぐに光を受けて
一点の影もないように見えた。
ボイジャータロットの講座で知り合った
その人はよく笑う。
綺麗で艶があって華やか。
そして眩しい笑顔。
怖いものなしだ。
何一つ苦労もなく、
何一つ悩みもなく、
ただただ幸福であるように見えた。
ボイジャータロットの
リーダーになったばかりの彼女に
初セッションをしてもらった。
思春期の子達の反発と、
非協力に見える夫の中で
すっかり孤独を感じてしまっていたから。
そんな時だったから
彼女が
「だってそうでしょう?
ウチの家族だって、私がいないと回らないもの」
と、言って素敵に笑った時に
私はその笑顔が眩しすぎて、
胸がチクチクいたんだのだ。
「太陽?いやむしろどんよりとした雲と雷です」
と、言いたかった。
でも自虐的すぎて言えなかった。
「そんな自信が持てないな。
なんだか空回りしてて、何やってるなかな、
って思う。」
「そんなこと言わないで。
自信を持って!
まずはお母さんが人生を楽しまなきゃ、
笑顔になれないでしょう。」
そんなやり取りをしながらカードを引いた。
でもカードの記憶は全くない。
彼女の笑顔が眩しすぎて心が痛かったことしか
覚えてなかった。
あんなに幸せそうな人もいるんだなぁ。
しみじみそう思った。
どこかに影がないのか、
捜している自分もいた。
家族の話をすれば、
少し口は悪くなるけれど、
愛情があふれている。
彼女の妹さんと3人で
会うこともよくあったが、
実に優しい姉なのである。
うーん、なんだか腹立たしい気もする。
マイナスがなさすぎる。
悔しいぞ。
会う機会がふえて
ようやくようやく
無理矢理、見つけた。
それは欠点でもあるけれど長所でもある。
でもマイナスにカウントしたかった。
ちょっといじってみる。
反応を見たかった。
ムッとしないだろうか?
小さくドキドキしながら
大雑把をいじると、
むしろ肩をどつかれて大笑いされた。
負けた気がした。
何この人。
お母さんは太陽なのよ、じゃなく
ちょっと悔しいから
マイナスに脳天気をつけることにした。
チャンスを伺って
また大笑いされた。
もう負けた。
もう負けでいいです。
こっそり張り合うのをやめた。
何年もつきあっていると、
彼女が幸せでないことも
あった。
哀しみで涙にくれる姿も、
怒りがこぼれるときも
見てきた。
当たり前のこと。
姉妹2人ともだが、
いきなり泣き出すので驚く。
実に悲しげに泣く。
何度もつられて泣いた。
でもひとしきり泣くと
何かおかしなことを見つけるのか
見つけだすのか、くすりと笑う。
そして笑いだすこともしばしば。
その時、ハッとした。
涙があふれる場面にも
怒りがこぼれる時も
笑顔を作れる、作ろうとする
笑顔であろうとする彼女の意志だ。
彼女が太陽なだけ、じゃなくて、
それは彼女の強さだった。
また一つ肩の力が抜けた。
どんな時にも選択肢が
あることに気づく。
ずっと泣き続けることも、
ずっと怒り続けることも、
ずっとため息をつくことも、
ずっと笑顔でいようとすることも
泣きながらでも笑おうとすることも
選べるんだと。