卵巣がんにおけるアバスチン維持療法へのオラパリブ追加で無増悪生存期間を有意に延長
Source: ESMO
オラパリブとアバスチンの併用療法を受けたすべての患者で、無増悪生存期間が有意に増加した
卵巣がんと新たに診断された患者において、プラチナ製剤を含む初回化学療法後のアバスチン維持療法にオラパリブを追加すると、アバスチン単剤療法と比較して、無増悪生存期間を有意に延長することを示した。この第3相試験結果は、スペインのバルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。
新たに診断された進行卵巣がん患者におけるオラパリブの有効性と安全性を評価したPAOLA-1 / ENGOT-ov25試験の結果は、Center LeonBérardのIsabelle L. Ray-Coquard氏により発表された。
PAOLA-1 /ENGOT-ov25試験は、新たに診断されたFIGO進行期で3~4期、高悪性度漿液性または類内膜の卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんの患者を登録したランダム化二重盲検国際第3相試験(NCT02477644)である。
プラチナ製剤を含む化学療法+アバスチンを併用した臨床的完全奏効または部分奏効の患者を「アバスチン15mg / kgを3週間ごとに15ヶ月投与+オラパリブ錠剤300mgを1日2回最長24ヶ月投与する群」と「アバスチン15mg / kgを3週間ごとに15ヶ月投与+プラセボ内服群」に2:1の割合でランダムに分けた。アバスチン投与期間にはプラチナ製剤を含む化学療法において同時併用した期間も含まれる。患者は初回治療の奏功度およびBRCA遺伝子変異で層別化した。
主要評価ポイントは、被験者すべて(ITT)(注1)に対し研究者がRECIST v1.1に基づいて評価した無増悪生存期間(PFS)とした。
追跡期間中央値は、オラパリブ投与群患者537人で24.0ヶ月、プラセボ投与群患者269人で22.7ヶ月であった。
データ収集59%の時点での解析では、無増悪生存期間中央値はプラセボ投与群で16.6ヶ月であったのに対し、オラパリブ投与群では22.1ヶ月であった。(ハザード比[HR] 0.59 ;95%信頼区間[CI]、0.49-0.72;p <0.0001)
BRCA遺伝子変異を有する患者およびHRD陽性患者は、オラパリブにより無増悪生存期間が大幅に改善した。
事前に指定されたサブグループ分析の結果も提示された。BRCA遺伝子変異の状態によって層別化された患者については、237人の患者はBRCA遺伝子変異を有し、569人の患者はBRCA遺伝子変異を有していなかった。
BRCA遺伝子変異を有する患者では、オラパリブ投与群患者の無憎悪生存期間の中央値は37.2ヶ月であったのに対し、プラセボ群では21.7ヶ月だった。(HR 0.31; 95%CI 0.20-0.47)BRCA遺伝子変異を有しない患者では、オラパリブ投与群患者で18.9ヶ月、プラセボ群で16.0ヶ月の無憎悪生存期間中央値を示した。(HR 0.71; 95%CI、0.58-0.88)
相同組換え修復異常(HRD)による分析では、387人の患者がHRD陽性であることが示され、内152人がBRCA遺伝子変異を有していなかった。相同組換え修復異常(HRD)陰性または不明だったのは419人だった。
相同組換え修復異常(HRD)陽性患者では、オラパリブ・アバスチン併用療法群患者の無憎悪生存期間の中央値は37.2ヶ月で、アバスチン単剤療法群は17.7ヶ月だった(HR 0.33; 95%CI、0.25-0.45)。オラパリブで治療した相同組換え修復異常(HRD)陽性のBRCA遺伝子変異を有しない患者における無憎悪生存期間の中央値は28.1ヶ月、アバスチン単剤療法群では16.6ヶ月だった(HR 0.43; 95%CI、0.28-0.66)。オラパリブは、相同組換え修復異常(HRD)陽性ではない患者ではほとんど効果がなかった。相同組換え修復異常(HRD)陰性または不明の患者では、無憎悪生存期間の中央値はオラパリブ・アバスチン併用療法群で16.9ヶ月、アバスチン単剤療法群では16.0ヶ月と差がなかった。(HR 0.92; 95%CI、0.72-1.17)。
グレード3以上の有害事象(AE)の発現率は、アバスチン単剤療法群においては51%、オラパリブ・アバスチン併用療法群においては57%だった。最も多かったのは、高血圧(19%対30%)および貧血(17%対1%未満)だった。
重篤な有害事象は5件で、1件はオラパリブ・アバスチン併用療法群、4件はアバスチン単剤療法群で発生した。オラパリブとプラセボを投与された患者でそれぞれ、休薬が54%対24%、減薬が41%対7%、治療中止は20%対6%で発生した。
オラパリブ・アバスチン併用療法群では、治療中断、減少、中止がより頻繁に発生したが、治療群間における臨床的なQOLの違いは認められなかった。
議論のポイント
第一選択治療に維持療法としてPARP阻害薬を追加することの有益性について、新たな標準治療としての使用を正当化するのに十分な臨床的意義があるか。バイオマーカー(遺伝子変異の有無)に関わらず初回治療後の維持療法として認められるか。有毒性などの懸念がないか。
PAOLA-1では、治療中止に至った有害事象の割合は20%であり、これはPARP阻害薬試験において報告された最も高い数値である。しかし、生活の質への影響はなかった。Oaknin博士は、進行卵巣がん患者の初回治療後の維持療法に関する現在の治療におけるパラダイムシフトが起こっていると結論づけた。
結論
PAOLA-1 / ENGOT-ov25では、オラパリブにより無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長が認められた。特に、BRCA遺伝子変異を有する患者およびHRD陽性の患者における無増悪生存期間は有意に延長が認められた。
著者は、この試験は、外科的手術やBRCA突然変異状態にかかわらず進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としてPARP阻害剤とアバスチンの有効性と安全性を評価する最初の第3相試験だと述べている。
開示
本研究は、AstraZeneca社、Merck & Co., Inc.社、Hoffmann-La Roche社およびARCAGY Researchから資金提供を受け実施した。
(注1)
ITT解析とは、副作用による治療中止や検査の未実施、追跡不能、同意撤回などに関係なく、試験前に割り付けられた治療群として解析することを言う。
翻訳:そら
原文:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)