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ファゴット奏者、ジェレミー・パパセルジオについて/彼との出会い

2019.11.03 23:19

つい最近Facebookに師匠であるJérémie Papasergio(ジェレミー・パパセルジオ)の演奏動画あげました。そこで、せっかくなので僕と彼との出会い、日本ではあまり知られていない演奏家としての彼について書こうと思いました。。

身長よりも大きな楽器を持っているのが彼。




僕とJérémie Papasergio との最初の出会いは大学の資料室でした。


大学一年生だった僕は、ファゴット奏者の名前が書かれたCDの存在を知るたびに図書館へ行き、友人に貸してもらい、海外の音楽サイトを舐めるように探すという生活をしていました。(1~2年後にはYoutubeでなんでも見つかるようになりましたが)


そこで人生で二枚目のドゥルツィアンのソロCDを発見します。

「ファゴットの前にあったもの~低音管楽器ドゥルツィアン、その豊かな世界~」というCDでした。


高校時代Paolo Tognon氏の演奏でひたすら聞いていたドゥルツィアン(もちろん素晴らしい)。



この人はどんな演奏するのかな♪とピクニックに行くような感覚でプレイヤーに入れました。

 



数分後。。。

 

。。。。!!!



目玉が飛び出て、アゴは外れ、飲みかけのジュースを噴き出しました。

と言うのは嘘ですが、とんでもなくびっくりしました。

これがドゥルツィアン?!

っていうかファゴットでもこんなこと出来ないよ!



CDには信じられないような超絶技巧で縦横無尽に動き回るドゥルツィアンが収録されていました。

ベルトーリのソナタ。

5:00からクライマックスへの超絶技巧は必聴!!!




今思うと、その録音は僕の中にあるドゥルツィアンを演奏したいという欲求に、密かにに火をともしていたのだと思います。


その直後、バロックファゴットの先生の門をたたきましたが、モダンファゴットで一人前になる前にバロックは無理だ。ということで、泣く泣くその火にフタをしたのでした。。






それから五年後。僕は念願のバロックファゴットを始め、演奏活動もしていました。


また、大学も卒業し漠然と留学に憧れを持っていましたが、踏み出せずにいました。

 

 




そのころ仲良しの後輩がバロックファゴットのCDを貸してくれました。


「テレマンとファゴット - 独奏ソナタ, トリオ・ソナタ, 四重奏ソナタ, 同時代人たち」


奏者は……


Jérémie Papasergio!


へぇ!懐かしい。彼はバロックファゴットも吹くのか。

どれどれ、プレイヤーぽちっと。。。

 


数分後。。。

 


。。。。!!!!!

 


 


フタをされていた火がメラメラ燃えるのを感じました。





CDを聞いた直後、僕は彼の所属するアンサンブルであるDolce Memoireの代表者に連絡をし、彼の連絡先を知り、フランスで彼のレッスンを受け、大学を受験し、現在に至ります。

 

 




 

モナコ出身の彼は非常にエレガントで、家族を愛する大らかで優しい人でした。

フランスでは、奥さんと子供、家族全員が音楽家のパパセルジオ一家として有名!

 


La Petite BandeやLe Concert Spirituel等のヨーロッパを代表する古楽オーケストラに参加する彼ですが、専門はファゴット、ドゥルツィアンだけではありません。


実はリコーダー出身の彼は、ルネサンスからバロック初期の音楽をもっとも得意としており、それらの時代に使われていた管楽器の多くを吹きこなします。(リコーダー、ショーム、クルムホルン、ドゥルツィアン、セルパンなどなど)。

特にバス楽器の名手であり、グレートバスショームやバスクロモルン(17世紀末にフランスで使われていたオーボエ族)などにおいては、世界でも彼ほど吹きこなせる人はいないと思います。


彼が中心メンバーでもあるDoulce Memoireでは、それらの楽器を一度の演奏会で使い分ける姿を見ることが出来ます。

 



教師としての彼は、歴史的な裏付けを持った奏法というのを非常に重要視しています。(裏付けのある奏法と言っても、それに答えはないと思いますが)

僕が演奏について疑問を投げかけるたびに、それは18**年に出版された音楽辞典を参考にするといいよ。とスラスラと一次資料の紹介を始めます。一時間まるまるお話で終わることもあります。僕はもともとその手の話が好きなので、レッスンへ行く度に新しい質問を持っていくことにしています。

 


演奏が超一流なのはもちろんのことで、レッスンではいつも通奏低音を吹いてくれます。自由自在で力強く、それでいてなめらかな彼の通奏低音と一緒に演奏すると、自分の音楽が魔法のようにスルスルと前へ進むのです。

 



フランス語のように流動的なファゴットを演奏する彼。なおかつ人間的にもたいへん魅力的な彼。世界的にも貴重なファゴット奏者ではないでしょうか。

 



今をときめく歌い手、カウンターテナーのJarousskyによるヴィヴァルディのカンタータ。

通奏低音をJérémieのバロックファゴットとチェンバロのみで受け持っています。