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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

我ここに立つ17-打ち殺し絞め殺し刺し殺せ

2019.11.04 04:14

1525年、農民戦争が激化する中で、ルターは「盗み殺す農民暴徒に対して」を発表、なんと彼らを「打ち殺し、絞め殺し、刺し殺しなさい」と諸侯を激励したのである。ルターは、暴徒化した農民達は悪魔にとりつかれてどうしようもないと考えたのである。

ルターからお墨付きをもらった諸侯は喜び、反乱は勢いを失っていった。ルターは教皇の権威を否定したにもかかわらず、ここでは生殺与奪をもつ権威者として振舞っているといわざるを得ない。なんのこたないミニ教皇になっちゃったのだ。

フランケンハウゼンの戦いではルターのおっしゃる通り、8千の農民のうち5千が殺害され、ミュンツァーも捕えられて、拷問の後処刑された。諸侯軍はその後も、あちこちで起こっていた農民の反乱を徹底的に鎮圧し、少なく見積もっても10万人の血が流れたとされている。

農民は中世初期の農奴の地位に落とされ、宗教改革で都市が独立して発展する一方、農村が遅れ都市と農村の差が際立つというドイツ独自の構造が生まれるきっかけとなった。またルターは、農民暴徒を殺せとまで言ったことを後に反省するが、「裏切られ」た南ドイツはカトリックに回帰するきっかけとなったとされている。

下はベルナー・トゥーベ作「フランケンハウゼンの戦い」