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武蔵野台地の湧き水復活を考える

武蔵野台地の下にある砂礫層の正体

2016.04.16 08:01

扇状地って何だ!?

 扇状地という言葉、中学や高校の地理で一度は聞いたことがあるかと思います。山間部を流れた川が平野や盆地に流れ出たところにできる扇形の地形です。

 狭い山間部の渓谷を勢いよく流れていた川が開けたところにドバッと出るわけですから、洪水などの度に運んできた土砂もそこへ流し込みます。それを長い年月をかけて繰り返すことで、山側から平野側へ扇形に広がる、堆積した土砂による地形ができあがるわけです。それが扇状地です。

 扇状地は運ばれた土砂によって出来た土地なので、小石や礫が多く、水はけが良いのが特徴です。水はけがいいという事は、この扇状地を作った大河川そのものの水も、多くが地下に浸透してしまいます。

 浸透した水は一度地下水として地下を流れます。こういった地上の河川と関係が深いものを伏流水といいます。

 伏流水は扇状地の端っこで再び地上に姿を表し、川となって流れ出ます。だから、扇状地は水はけが良いのと同時に、末端部は湧き水が多いというのも特徴なのです。


 余談ですが、日本の有名な扇状地の一つに滋賀県の安曇川の扇状地があります。ここは、比良山地・丹波高地を抜けたあと、そのまま琵琶湖に注ぐので、河口は三角州と一体となった綺麗な扇型の扇状地となっています。

 その扇状地上で安曇川は流量を減らす一方で伏流水が湧水となってあちこちから湧き出し、古い集落には各家屋に川端(かばた)という水場が作られるなど、湧水と共存した文化が育まれています。


(リンク)安曇川の三角州・扇状地

(写真)針江の川端(かばた)



武蔵野台地の下にある多摩川の扇状地

 実は武蔵野台地はその大部分が、多摩川の扇状地でした。「でした」と言うのは、その扇状地の上には火山灰が降り積もり、武蔵野台地という台地になっているからです。

 関東山地を流れ出た多摩川は関東平野に出たときに水と一緒に土砂を吐き出し、それが堆積して扇状地を作りました。扇状地では洪水の時に何かの拍子に勢いよく土砂が堆積したり削られたりして、多摩川は扇状地から下流の流路を時々変えることもありました。

 現在、多摩川は青梅から南東方向に流れていますが、その昔は北西方向に流れ、荒川に合流していたこともあったそうです。

 しかし、その扇状地は富士山、箱根山、浅間山、榛名山、赤城山、男体山などの火山に囲まれ、火山灰が降り積もる土地でした。最初は水の流れで火山灰も洗い流されていましたが、多摩川が現在の流路で固定され、次第に多摩川自身の水の力で堀下がっていくと扇状地に積もる火山灰はどんどん堆積するようになりました。


 こうして扇状地の土砂の上には、主に火山灰によってできた約10メートルの土の層が出来上がりました。この土の層をまとめて関東ローム層と呼び、関東ローム層でできた高台を武蔵野台地と言い、扇状地だったものはその下の砂礫層として埋まっています。

 関東ローム層も厳密には立川ローム層とか、武蔵野ローム層、下末吉ローム層、多摩ローム層などに分類できるのですが、とりあえずその話はおいておき、ひとまずまとめると、


 東京の市街地はほとんどが武蔵野台地の上にあり、その武蔵野台地は関東ローム層という火山灰台地であり、その下には多摩川の扇状地が広がっている!


ということになります。


(参考・下記画像)「武蔵野台地の河川と水環境」角田 2015 ※画像はp6より引用