不登校と「考え方のくせ」
今回お話しするのは、「不登校と考え方のくせ」
「考え方のくせ」と言うのは「認知のゆがみ」とも言われ、意味としては「極端な考え方、正しいけれど、役に立たない考え方」の事を言います。
これは子どもだけに見られることではなく、大人も一緒です。
例えばこんな例があります。
A君は不登校で、いじめられたわけでもなく、学習についていけないわけでもなく、理由を聞いても明確な答えが返ってきません。ただ「B君と喧嘩してるから…」とだけいいます。しかし、B君にいくら確認してみても、喧嘩した事実はないと言います。どういうことなのでしょうか…?
A君にじっくりとお話を聞いていくと、こう考えていることが分かりました。
「B君が挨拶してくれなかった。B君は僕の事が嫌いなんだ。B君に嫌われるくらいならもう学校にいかない」
A君にはもともと友達は少なく、ただB君とは仲良しでよく一緒に遊んでいました。どうもそんなB君から挨拶がなかったことが数回あり、その他の些細なことも重なって、学校に行き渋るようになり、そのまま不登校となったようです。
今この記事を読んでくださっている方は、「考えすぎ。極端すぎる」とそう思う事でしょう。
でも例えばこんなことを感じたことはありませんか?こう振舞ったことはありませんか?
出かけ先で知り合い2人を見つけたけれど、知り合いは2人で喋っていて、”チラッとこちらを見た”けれど、すぐに目を逸らしてお話を続けていた。「あれ?」と思って声を掛けたけれど、”無視をされ”たので、「自分の悪口を言っている」のだと思い、嫌な気持ちになってその場を離れた。その後もなんとなく話しかけづらくなって、少し距離を置くようになった。
こういう経験は、多かれ少なかれ誰でも経験があるものではないでしょうか?
お気づきのように、これはA君のとった思考や行動とほぼ同じパターンです。
”挨拶がなかった”ことは(たぶん)事実ですが
「B君は僕の事が嫌い」、や、「無視をされた」、「自分の悪口を言っている」はあくまであなたの「考え」であって、事実ではありません。
しかし、そう考えることによって、「B君に嫌われるなら学校に行かない」というネガティブな気持ちや行動になったり、「自分の悪口を言っている(=自分の事が嫌いなんだ)」という沈んだ気持ちや、”距離を置く”という行動に至ります。
子どもでも大人でも、自分が弱っていたり、難しい環境にいるとこういう考え方になりやすいものです。
こういった極端な考え方や、正しいけれど、役に立たない思考のことを、「考え方のくせ」と言います。
「C君にいじめられた。僕はこれからもずっといじめられるだろう」(極端な思考)
「C君にいじめられた。問題は解決したけれど、また誰かにいじめられたらと思うと怖くて学校にいけない」(正しいが、そう考え続けると恐怖や不安が増し、結果学校に行けなくなる、という点で、役に立たない思考)
子どもは多角的に物事をとらえることが難しく、なかなかそれをうまく言葉で表現できないことが多いものです。こういった考えをはっきりと自覚できているかどうかも、子ども次第です。思春期になると親に自分の考えを話すことに抵抗もあるので、より何を考えているのか分かりづらくもなります。
他にも、認知のゆがみにはこういったものがあります。
心の健康副読本編集委員会、「悩みは、我慢するしかないのかな?」より抜粋
「うちの子もこういう所ある~!」と思われた方も多いのではないでしょうか。
こういった「考え方のくせ」は修正することが可能です。
修正と言っても、信頼できるカウンセラーとの間でじっくりと自分の考えや気持ちを認識し、間違っている点は指摘し、より柔軟に別の考え方をした方が良い点は、一緒にどう考えればよりハッピーで前向きな気持ちになれるのか、相談していきます。
”B君が挨拶してくれなかった”のは、
”聞こえなかった”からかもしれないし、”B君自身になにか問題があった(その時A君の事とは無関係に頭を悩ませている時期だった”かもしれません。
「B君に嫌われた」と考えていましたが、学校の先生や友達から情報を聞くと、A君が学校に行き渋りだした時期にB君からA君に心配の声を掛けてきたこともあったそうです。
しかし、「B君に嫌われた」と思っていたA君は、疑心暗鬼になってそのB君の声を”心配”、”思いやり”とは取れなかったようでした。
落ち着いて、「自分が逆の立場だったら」などと考えると、意識の片隅に追いやられていたそういったB君の行動の意味も理解できるようになります。
「B君が挨拶をしてくれなかったのはたまたまだし、自分が悪いわけではない」、「学校を休んでいる間、D君がプリントを届けてくれていて、いつも「待ってるで」と温かい声を掛けていってくれる。困ったらD君にも助けてもらえるかもしれない」
こんな風に考えると、気持ちが楽になる事でしょう。
こういった”考え”と”気持ち”、”行動”の関係を「認知の三角形」といいます。
この3つは相互に影響しあっています。
「考え」を変えることで気持ちが変わり、行動が変わることもありますし、
行動を先に帰る事で気持ちに変化が起こり、「考え」が変わることもあります。
どこにどう介入するかはケースバイケースです。
不登校の裏に「考え方のくせ」がある場合、
単純に登校刺激を与えたり、心の回復を待つだけでは変化は起こりづらいものです。
なぜなら、この「考え方のくせ」は知らない間に本人に身に着いたものであり、自分でそれを自覚すること自体が難しく、心のどこかで「極端かもしれない」と思っていても、本人にとってはまぎれもない”事実”だからです。
不登校の理由は決して「考え方のくせ」だけではありませんが
気になる方は是非一度お問い合わせください。
一緒にお子様の「考え方のくせ」を探り、解決に向けた糸口をつかみましょう。