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なるさ 療育学習室

マンガを使ったSST~コミック会話について~

2019.11.11 08:30

自閉症スペクトラム症に使用される支援ツールはたくさんあります。

コミック会話(CSC)という支援ツール(技法)を紹介します。対人関係場面の理解の促進、他者の感情理解の向上などに使用されています。

CSCとは人の線画に吹き出しを組み込み、会話の中での状況理解を促す技法です。これはキャロルグレイにより1998年に紹介されました。主に自閉症児、高機能自閉症児、アスペルガー障害児を対象に使用されるということです。

個人的にはADHDや知的に低いお子さんにも使用できる、汎用性の高い方法だと思っています。


CSCの具体的な活用

実際的な方法としては、セラピストが対象児と困った場面、問題場面を振り返り、1枚の紙に棒人間の絵で会話を書いていきます。気持ちは雲形の吹き出しにします。振り返ることで対象児の認知の仕方、対処行動を理解します。

そして、相手の気持ちや自分の気持ちの理解促進を促します。その中で他者に対して異なった認知がありそうであれば、一緒に考え、セラピストから認知を提供することも必要です。また、適切な対処行動を考えていくことも重要です。


以下に一例をあげています。

「そこどいて!じゃま!」という生徒がいて、他の生徒とトラブルになった場面です。

その場面を話し合いながら、線画にしていきます。

生徒から経過を聞きながら、自分の発言、相手の考えを一緒に考えて書き込みます。

実際には自分の考えを書き込んだりもして、もっと吹き出しを増やすこともあります。そして、可能であれば感情(怒り、不安、楽しさ、悲しみなど)を聞いて、数値で表します。

経過を一通り聞き取り、書き込んだ後、どのようにすれば良いのかを話し合います。

他の言い方で、その生徒が使えそうな言葉を聞き取ったり、提案して、適切な言動を書き込みます。

そして、次はどのように振る舞えばいいのか話し合い、終了です。

たったこれだけのようですが、紙面に描いて話をするだけで、落ち着いて話のできるようになります。また、自分を客観的にみることもでき、対処方法も冷静に話し合えます。

以下にコミック会話の効果について記載しています。


コミック会話の効果

外在化

視覚化することは、一度、状況や自分の気持ちを外に出すことになります。不快な気持ちを外に出し客観的に見ることで、それから距離を置いて擬人化できるようになります。「自分はこの時、悲しかった」などと感情を擬人化し言葉にできます。外在化することで言語化できるようになり、話し合うことができるようになります。


ユーモア

外在化することに加えて、コミック=漫画ということで、ユーモアとして捉える面もでてきます。コミックは楽しみであり、子どもをはじめ大抵の日本人には親近感が湧くはずです。イライラをユーモアで見ていくことは、少し余裕を持ちながら見ていくきっかけになります。また、ユーモアや笑いはストレスを緩和し、健康をもたらします。臨床場面では笑いを扱うことも効果的とも言われます。ユーモアを持たせる効果もCSCにはあるかもしれません。


表現の多様化

CSCはコミックということで様々な表現に変化していく可能性もあります。好きな漫画の主人公の認知を持ち出してもいいかもしれません。漫画だけでなく、理想の人の考えを持ち出す、更にその理想の人の人物画を子どもなりに描いてみて表現してもいいかもしれません。様々な表現の広がることを認めながら話し合いを継続するきっかけになります。



以上がCSCの大まかな概要です。

ただ、最も大事なのは、対象児の自発性と自己肯定感を大事にしながらセラピーを進める必要があるということです。

よくあることが、どうしても教育的になり子どもと対立してしまうことです。

そう考えると対人関係などの場の振り返りはカウンセリング技法などのトレーニングを受けた人や第三者がよいのかなと感じます。