「THE STORY OF A BABY/赤ちゃんのはなし」マリー・ホール・エッツ
自分たちも娘が、まだ妻のお腹の中にいるときに、この絵本を二人んで読んでいました。
「THE STORY OF A BABY/赤ちゃんのはなし」マリー・ホール・エッツ
受精卵が生まれた状態から、このお話は始まります。
科学や生命の歴史の話題をふんだんに盛り込みながら、人間の赤ちゃんが女性のお腹の中でどのように成長をし、生まれてくるのかをこの絵本を通して教えてくれるのです。
教科書のような絵本、と言ってしまえばその通りなのですけれど、この絵本の奥には、教科書的なものではない、もっと別の暖かなものが流れていて、それが自分は、絵本の秘密だと、ぼんやりと思っています。
自分は、子どものための絵本が作られる動機には、喜びがなければいけないと思っています。
喜びを源にして、子どものための創作は、すべて作られるべきだと考えているのです。このことに関しては、細かくその喜びを定義したり、子どものための絵本、というものを定義したり、とその意味を正確に言うのに、詳細な説明が必要となってはしまうのですけれど、短い言葉で言えば、子どものための絵本は喜びから生まれるべきだと、自分はそう思っているのです。
そしてエッツの絵本には、そのすべての絵本に喜びが溢れているように感じられます。
それは勿論この教科書、とも言えるような絵本についてもそうなんです。
それは内容だったり、絵のタッチだとか、そうしたはっきりとしたものから出てくるのではなく、それらをも含んだこの絵本の隅々から感じ取ることが出来るのです。
生命の誕生の喜び、学ぶことの喜び、そして赤ん坊が初めて笑うことの喜び。
この絵本は子どものために作られた絵本では無いと思いますが、これから絵本を子どもに読む立場になる人に向けて、子どものための絵本に必ずなければならない、いちばん大切なことを語っている気がするのです。
この絵本の日本語版の装丁を林明子さんが手掛けているというのも必然である気がします。林さんのすべての絵本を読んでいるわけではないのですが、林さんの作品もそうした喜びがいつもその底に流れているのを感じることの出来る作家だと思っています。あまりにメジャーな作家なので自分が言及することはあまりないのですけれど、素晴らしい作家さんだといつも思っています。
当店にはこの日本語版の「赤ちゃんのはなし」と原書アメリカ版の「THE STORY OF A BABY」の1962年6刷のものを先日、オンラインストアに更新しております。
中の印刷などが目に見えて違う、と言うことはないのですけれど、この年代の刷でカバー付きで残っているのはちょっと珍しいですね。
お値段もそこまで高くないので、エッツが好きな方で、古い原書版も持っておきたいという方にはオススメですよ。
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
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