選んでいいの?涙の告白 ⑨
センター試験が迫っても、
勉強に気持ちはのらなかった。
夏季講習で実力を思い知らされて
現役では無理かな、と
思っていたようだった。
それでも志望校を変える気持ちには
ならなかった。
行きたい大学はそこしかない。
他の大学なら
行かなくてもいい。
そんな選択だった。
案の定、センター試験は
目標に届かなかった。
しかし二次試験の方がずっと
大変だった。
センターが終わった翌週から
また京都で直前講習に参加した。
そのままK芸大の二次試験になる。
1ヶ月近くの長丁場の講習だ。
体調も気になるところだ。
この予備校の画の評価は、
今時、
夏季講習の間、ずっと梅だった。
それがこの4ヶ月の希望になっていた。
K芸大の受験よりは現実味のある
目標だったかもしれない。
初めて1ヶ月も家を離れた。
朝から晩まで
どっぷり画に向き合う毎日。
毎日ツナギを着て、画を書いていた。
その3つの課題を1日半で、
午前午後で区切り、
1課題を3時間〜4時間で
仕上げなければならない。
つまり、日曜以外は毎日この3課題を、
繰り返し練習していくのだ。
そこまでするのかと
びっくりしたが
ある程度名の知れた芸大、美術大学は
直前までの講習は
普通のことらしい。
ずいぶん大変な道を選んだことを
改めて知った。
冬季講習でもなかなか「松」は
取れなかった。
デッサンはなんとか
追いついてきた。
毎日その日描いた写メがおくられてくる。
画に重量がでてきた。
芝生に、くしゃくしゃにしたアルミホイル
サランラップをかけた果物
よくもこんな課題を出すなー
という
気の遠くなりそうな課題だ。
細かい描写を4時間で仕上げるのだ。
集中力と、技術が試される。
嫌なことはなんでも
投げたしてきた長女が
ひたすら描き続けた。
それは驚きだった。
ないか。
怖くてたまらないことを選び、
やりたいことのために
やりたくないことにも
ひたむきに向き合った。
問題にあたるたびに
もがきながら
それでも
確かに自分の中で
響くものを
選んできた。
そして直前模試の色彩の課題で
を取れた。
長女が自分でつかみ取ったものだ。
2月も終わろうとしていた。
二次試験の2日間が終わったその日、
長女はK芸大の坂道を笑いながら
駆け降りてきた。
よっぽどできたのかと思ったら、
作った立体の課題が
倒れてしまったらしい。
かなりのマイナスだった。
でも、もう終わった!
そう言って笑った。
1月からの長い1ヶ月
本当によく頑張ったね。
心からそう言って
肩をたたいた。
長女は誇らしげに胸をはった。
4月から京都に住んで予備校に
通うことになった。
そんな強い想いとともに
いざ京都へ。
春の陽射しが眩しかった。
高校編 完
予備校が掲示しているK芸大の課題