音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ26 エリソ・ヴィルサラーゼ ピアノ・リサイタル
神奈川県立音楽堂
魂が紡ぐ至高のロシア・ピアニズム
エリソ・ヴィルサラーゼがついに音楽堂にやってくる。ネイガウスやザークらに学び、リヒテルにも薫陶を受けた彼女の演奏には、ロシア・ピアニズムの伝統が脈々と受け継がれている。その特徴でもある完璧無比な演奏技巧と音の響きの美しさ、表現の精妙さとともに、彼女の音楽には熱い想いと確固とした信念が貫く。
待望のリサイタルでは、彼女の十八番とする作曲家の作品が並ぶ。ロシアの二大音楽院を創設したアントン&ニコライ・ルビンシテインからチャイコフスキーへと継承されたロシアの音楽教育は、ヴィルサラーゼのなかにも深く息づいている。そんな彼女は、チャイコフスキーの音世界をどのように聴かせてくれるだろうか。また、プロコフィエフの生きた時代を経験した彼女は、革命前の同時期に初演された「トッカータ」と「サルカズム」を選曲。これらの作品にはプロコフィエフ特有の力動的なリズム感と風刺的でクールな感性が潜む。そして後半は、彼女が得意としているシューマン。いずれの作品も彼と恋人クララとの恋愛時期の創作であり、深いロマンティシズムとともに、複雑な心の動きが音楽の中で絡まり合う。
70代後半にさしかかったヴィルサラーゼ。圧倒的な迫力とともに透明なリリシズムを湛えたプロコフィエフ、そしてシューマンでは聴く者を瞬く間にファンタジーの奥深くへと惹き込んでゆく。さまざまな思考や感情の交錯する彼らの声にヴィルサラーゼは耳を傾け、強靭な指を駆使して輻輳(ふくそう)した音のラビリンスを解きほぐし、音楽の流れを描き分ける。その演奏を特色づけるのは、彼女の知性と広いパースペクティヴである。深い思索を経た彼女の演奏には、強い説得力と使命感が漲(みなぎ)っている。
道下京子(音楽評論)
音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ26 エリソ・ヴィルサラーゼ ピアノ・リサイタル
2020年1月13日(月・祝) 15:00
出演:エリソ・ヴィルサラーゼ
チャイコフスキー:「四季」 Op.37b より
プロコフィエフ:風刺(サルカズム)Op.17
プロコフィエフ:トッカータ ニ短調 Op.11
シューマン:ノヴェレッテ Op.21 第8番 嬰へ短調
シューマン:幻想曲 Op.17
全席指定 一般6000円 学生(24歳以下・枚数限定)3000円
シルバー(65歳以上・枚数限定)5500円(売切)
*詳細は音楽堂HPをご確認ください。
Photo
エリソ・ヴィルサラーゼ ©Nikolai Puschilin