ゆでジャガイモ
センセーの声
私 「レッスンでやったことで何を覚えてる?」
Aさん「色々あるけど、、、あの熊が出てくる絵本!夜に家を抜け出すストーリーの。
みんなで一緒に読んだりして。今でも音を覚えてるよ。」
私 「あー、Bears in the Nightね。音源が、ドラマみたいで迫力あったもんねー。」
Aさん「ん?それ(ドラマ仕立ての音)じゃなくて、センセーの声で覚えてるよ。」
私 「はぁ?どーゆーこと?」
Aさん「センセーの声が今でもあたまに浮かぶよ!」
私 「.........」
高級食材 vs ゆでジャガイモ
はじめまして
北海道在住の新井希久子です。
自宅で英語教室を開いています。
冒頭の会話は、小1から高3になるまでレッスンに通ってくれた教室「一期生」と私の間のやりとりです。英語は得意科目のまま高校を卒業する彼女と「レッスンの思い出」をおしゃべりしていた時に飛び出した「衝撃発言」。
なぜ、「衝撃発言」かというと、、、
小学校低学年だった彼女たちにBears In the Nightを読んだのは、、、
「音源使ってネイティブの音を聞かせられる!(自分の怪しい英語発音を聞かせなくて済む!)」
「たくさん前置詞が出てくるから、お勉強的!」
という私なりの「英語教育的観点」からのチョイスだったからです。
それなのに、、、覚えているのは、、、、
「センセーの声」
だとは!!
なんなん?
まるで、
輸入物の高級食材を奮発して整えたディナーで、一番おいしいと言われたのが、、、
つけあわせの「ゆでジャガイモ」
って言われた気分。
絵本の「読みきかせ」について、そして「何かを子どもに教える」ことについて、私が考えを深めるきっかけになった事件でした。
がんばらない読みきかせ
私はオホーツク地方、大空町で英語教室を開いています。
札幌まではJRで片道5時間くらい。
町の郊外からは、知床半島の斜里岳がこんな風に見えます。
教室は、2005年の1月に3名の生徒さんでスタート。今は、小学生から高校生までのレッスンと、大人の方には多読をオススメして絵本をメインで本を貸し出し中。レッスンではB.B.カードを主に使い、中高生には補習や受験指導もしています。そして地元図書館の「読み語り」の時間や、教育委員会主催のイベントなどで英語の絵本の読みきかせもしています。
絵本をレッスンで使いはじめたのは「楽しく英語を教えられるかな?」の軽い気持ちでした。前述したように「ネイティブの音」や「前置詞」「英単語」をインプットしちゃおう!」。そんな「教える側の論理(笑)」を瓦解させた「教えられる側」からの言葉。
「センセーの声で残っている。」
高級食材より、ゆでジャガイモ。
もしかしたら、あれも、これも、とオトナの善意で「与え」たとしても、それを「受け取る」子どもたちにとっては「ありがた迷惑」かも。お腹いっぱいなのにオトナに気を遣って「おいしいよ」ってムリして言ってる場面もあるかも。さらに、英語に限らず、子どもたちにとって必要なことって、身近な誰かと「一緒に楽しんだ経験」としてココロに残るようなものなのでは?
主役は子どもたちなんだから、その目線を大事にしたい。
そして現状、英語で生活する必要に追われていない日本の子どもたちにとっての「英語」は、教える側がそれくらいの「ゆとり」を持って届けていくのがいいのでは?
そんな風に今では考えています。
今でも、英語の絵本の読みきかせをレッスンでは続けていますが、「読みきかせる」というよりむしろ「一緒におしゃべり」しながら。
「しあわせな」というより「がんばらない」読みきかせです。
しあわせな多読
レッスンなどで使っている絵本は、大人の方にむけて貸し出しもしています。むしろ「英語多読」に興味を持って集ってくださる皆さんの感想やリクエストに合わせて本をそろえていったら、、、、
いつの間にか「絵本」が集まり、その本をレッスンでも読んでいる、、という感じです。
その好みは千差万別。
お砂糖たっぷりの、あまーいスウィーツ系のキラキラ絵本がお好みの方。
スローライフ満載のほのぼの系推しの方。
クスッと笑える軽いコメディをお好きな方。
消化不良を起こしそうなシュールで難解なものが得意な方。
世の中は、こーんなにたくさんの「世界」と「表現」にあふれているんだ!
と、いうことを本を借りてくださる皆さんと一緒に楽しむ日々。
自分ひとりで読んでいるだけでは、広がらなかった世界です。
多読は私にゆでたてのジャガイモのようなホクホクとした、、、
「しあわせ」
を運んでくれています。