霊能養成会と青年心霊グループの代表を迎えて
新たなる啓示
六章 霊能養成会と青年心霊グループの代表を迎えて
霊能養成会のメンバーを中心として開かれた交霊会で、シルバーバーチは矢つぎ早の質問を受けた。
───地上では肌色による人種差別が問題となっていますが、霊界でもあるのでしょうか。
「霊の世界が何もかも明るく美しいとものばかりと思うのは間違いです。なぜなら、そちらの世界から送り込まれてくる者によって構成されているからです。
もしそちらから送り込まれてくる者が聖人君子ばかりであれば、死後の世界は今すぐにも天国となるでしょう。ところが残念ながら、現実はおよそそれとはかけ離れております。私たちが迎え入れる者の中には、性格のいびつな者、無教養の者───霊的なことに無知な者───がいます。そういうものを学ぶ環境に置かれていなかった人たちです。
また、利己的なことにばかり奔走して、霊的な側面がまったく眠ったままの状態でやってくる者もいます。ですから、霊の世界を美と光と素敵さばかりであるかに想像するのは間違いです。
霊の道具となるための訓練をなさっているあなた方の役目、つまり霊能者となるための仕事は、人々に地上生活の本来の生き方を教えることによって、少しずつでも霊の世界の暗い部分を無くしていくことなのです。
そうすれば、どちらの世界も明るくなります。地上天国を願うのであれば、そうするよりほかに道はありません」
容易でない霊能者への道
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───霊的悟りへの道はなぜこんなに酷しいのでしょうか。
「霊的な褒賞が大した苦労もなく簡単に手に入るものだとすれば、それはあえて手に入れるほどの価値はないでしょう。
霊性を磨く道は容易ではありません。困難の連続です。奥深く踏み入るほど、平坦な人生にはない体験ばかりとなり、孤独を味わうようになります。
しかしその一方で、内面的にはそれに似合っただけの埋め合わせ───霊性の成長、悟り、背後霊との結束の強化、インスピレーションの増幅、直観的な価値判断力の向上、といったものが身につきます。霊的な成長の成就というのは、そうしたものを身につけることを言うのです」
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───誠実さ、一途さ、献身性をそなえた優秀な霊媒が育った時の、そちら側の反応はどのようなものでしょうか。
「潜在的な霊能者を探し出し、それを指導して〝使いものになる霊媒〟、つまりこちらから伝達する知識や叡知を純粋な形で受け止めてくれる段階にまで持っていくには、大変な時を要します。そして、その段階に来てから、今度は、内的な成長を成就する段階が始まるのです。
そういう献身的な霊媒、つまりこちらからの指導を素直に受け入れてくれる有能な人材を確保した時の喜びは、ひとしおです。
その霊媒を通してさらに大きな霊力を地上へ送り込み、それだけ多くの成果が成就されるからです。
地上というところは今もって混とんとして、悲劇と暗黒と無意味な苦悶にあふれ、間違った生き方、間違った考えが生み出す病いに苦しめられております。
そうしたものを一掃して地上なりの威厳と光輝にあふれた生活を創り出す資質を内部に秘めているにもかかわらず、現実がそのような状態であることが哀れに思えてなりません。なぜ人間は暗黒の方を好むのでしょうか。
が、そこにあなた方の活躍の場があるのです。死別の悲しみに暮れている人には死後の存続の事実を教え、病気に苦しむ人には癒やしを与え、生きる目的を見失っている人には本当の〝人の道〟を教えてあげるのです」
指導霊による大審議会
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───White(ホワイト) Brotherhood(ブラザーフッド) という指導霊ばかりの組織があるそうですが・・・・・・
「地上の同志を通して最大限の霊力を注ぎ、霊的知識を広めることを使命として働いている高級霊の組織です。きわめて高度に組織された集団です。
私たちはこうして地上で行なった仕事の成果を報告するために、ある特定の時期(地上のイースターとクリスマスに当たる)に地上圏から離れ、私たちの本来の住処である界層に帰ります。
そこで全員が一堂に会し、さらに高い界層から私たちを指揮しておられる方々から計画の進捗ぐあい、つまりどこが成功しどこがうまくいっていないかを指摘していただき、総合的な地球浄化の計画の今後の進展のための指示を仰ぎます」
訳者付記─── White(ホワイト) Brotherhood(ブラザーフッド) という用語は交霊会では何度か出ていたのであるが、霊言集に出たのはこれが最初である。シルバーバーチのいう〝大霊〟はもともと Great White Spirit といい、直訳すれば〝大いなる白色の霊〟となる。
それをシルバーバーチも大てい White を略してGreat Spirit と言っている。この〝白色〟というのはシルバーバーチのいう Shining Ones (光り輝く存在)のShining、すなわち光り輝いている様子をそう表現したもので、すでに形体を失い、ただ白く輝いている存在で、ここに紹介したイラストで言えば、神界に属する。
コナン・ドイルが死後まとめて送ってきた死後の界層のイラスト
(Ivan Cooke ; The Return of Arthur Conan Doyle より ) 本誌℘177
実はシルバーバーチも本来は神界の存在でありながら、この地球浄化の大事業のために、あえてバイブレーションを下げ、このイラストでいえば霊界の上層まで降りてきて、そこから例のインディアンを中継して放送している。
そういう指導の霊団は地球全体に組織されていて、それをホワイト・ブラザーフッドと呼んでいるのである。どうやらその最高責任者がシルバーバーチらしいのであるが、徹底して謙虚な態度を取り続けるシルバーバーチは、そのことを明からさまには言わない。
なお、前の一節のあと、「シルバーバーチが祈りの言葉を述べた」とあるが、それは省略されている。たぶんいつもの通りだからであろう。私の推察ではその時の会場は厳粛な雰囲気にあふれ、シルバーバーチも自然に祈りの言葉が出たのであろう。
それが終わってから、たぶん自分が地上の人間とは格が違うという印象を与えないようにという配慮からであろう、養成会メンバーに向かって次のように述べている。このあたりがいかにもシルバーバーチらしいと言えよう。
霊能者の責務
「かく申す私も、あなた方と同じく一個の人間的存在に過ぎません。叡智のすべて、真理のすべてを知り尽くしたわけではありません。地上でいう時間の概念でいえば、私は皆さん方のどなたよりも長い期間を生活してまいりました。その結果として皆さんよりは多くの知識を蓄えております。
それを、受け入れる用意のできた人に分けてあげるべく、これまでの道を後戻りして地上圏へ降りてくれないかとの要請を受けたのです。もしも私の述べることが皆さんのお役に立てば、それだけでこうして私が戻ってきた価値があったことになります。
今夜ご出席の皆さんが霊能力の開発につとめておられるグループであることは承知しております。
霊に宿された資質であり、それを開発することによって、あなた方のもとを訪れる人々のために役立てることができます。
霊力はもはや確実に地上に根づいております。かつてのように、無きものにすることは出来ません。いかなる人間も、またいかなる権威をもってしても、今や確実に根づき、そして着実に広がりつつある霊力を地上から追い払うことはできません。
地上界をそういう世界にすることが、霊界の高い界層の進化せる存在によって目論まれた計画の一環なのです。目的はただ一つ、地上人類に本当の自我に目覚めさせること、つまり、本来は霊的存在であり、それが今は物的身体を通して表現しているに過ぎないこと、そして、内部には神性を帯びた無限の可能性が秘められていて、それを少しでも多く発揮することが地上生活の目的であることを教えてあげることです。
霊力は生命そのものです。あなた方のいう〝神〟の分霊です。生命とは霊であり、霊とは生命なのです。霊はいかなる形態を通してでも生命を表現しています。
大霊から出たものが私たち霊界の存在を通して地上圏まで届けられ、地上のチャンネルないしはミーディアム(霊媒)を通して地上に注入されております。
それが物的身体の奥に宿る霊性に活力を賦与し、潜在する霊的資質を発現させることになるのです。
なぜ今の時代にそれが必要かといえば、それは唯物主義がもたらした混乱、黄金の子牛の像の崇拝、すなわちお金第一主義がはびこり過ぎたからです。
唯物主義はその本質自体が貪欲、強欲、自分第一主義に根ざしています。同じ天体上に住んでいながら、自分以外の者への思いやりも気遣いも考えず、ひたすら自分の快楽と蓄財に励みます。敵対関係、戦争、怨恨───こうしたものを産み出すのは唯物主義です。
物質がすべてである、死はすべての終わりである。だったら自分の思うままに生きて何が悪い、という論法です。
こうした自己中心の考えが地上界に暗黒と困難、闘争と暴力と憎み合いを生み出すのです。人間は霊的存在としての宿命を背負っているのですから、その宿命を成就するための生き方をするには、そうしたものを無くさないといけません。
残念ながら、慣習となっている伝統的な宗教も哲学も教育も、今では頼りにされなくなっています。とくに若い世代はそっぽを向いています。愛する人を失った時と同じように、悩みや苦しみを持つ人は教会や寺院やシナゴーグ(ユダヤ教の教会堂)を訪れますが、もはやそこには真の救いを与えてくれる人はいません。
病いを得た者が病院へ行っても、必ずしも治してもらえるとはかぎりません。哲学者も納得のいく答えを与えてくれません。
あれほどの鋭い頭脳を持った人が・・・・・・と思えるほどの学者でも、心霊現象を研究してその真実性を認めた先輩の科学者たちの業績を見て、ただあきれ返るばかりで、理解できずにいます。その気になれば今でも同じ実験ができるのですが・・・・・・
あなた方は、そうした現象を起こす霊力と同じものを顕現させて、他の何ものによっても出来ない形で人のために力になってあげることができます。
死別の悲しみに暮れる人を慰め、病いの人を癒やし、人生に疲れた人に生きる元気を与え、迷える人を導き、全生命の基盤である永遠の霊的実在を証明してみせることができます。
霊というものは実体のないもののように想像されがちですが、あなた方は霊こそ実在であることを証明してみせることができます。死後の生命の実在、不治の病いの治癒、その他諸々の霊媒現象によって立証できます。
それは人間本来の生き方の基盤を提供することでもあります。そういうものを必要とする人は、あなた方から呼び掛けなくても、向こうから訪れるようになります。
訪れた人に何らかの力になってあげることができたら、そういうチャンスを与えて下さったことを大霊に感謝することです。
もしも力になってあげることができなかったら、あるいはもしその人がまだ霊的に目覚める用意ができていなかったら、自分自身でなく、その人の為に、密かに涙を流してあげなさい。
あなた方としては、何時でも手を差し伸べられる用意をしておくことが大切です。あなた方自身も、そういう人がいてくれたからこそ霊的真理に目覚めることができたのですから。
神は、御機嫌がいいと褒美を与え、腹を立てるとバチを与えるというようなものではありません。原因と結果の連鎖が、摂理に則って自動的に、あるいは機械的に、途切れることなく続くのです。何事にも自分が責任を負うのです。
良い行ない、つまり人のためになることをすれば、自動的に霊性の向上という結果が生じます。反対に、人間の煩悩から過ちを犯した場合、言いかえると物的欲望に拘りすぎて堕落した生活に陥った時は、自動的に霊性が低下します。
人のために役立つことをしただけ、それだけあなた方も他人から、ここぞという時に手を差しのべてもらえるのです。
そうした生活を続けていると、内なる輝き、内なる落着き、内なる平安というものが具わってきていることに気づきます。それは、霊の世界の援助者との繋がりがより緊密になってきていることの証拠です」
青年心霊グループの代表との対話
その日は青年心霊グループ Psychic Youth Group の代表四人が出席していて、質問の順番が回ってきた。最初に出された質問は複雑だった。
───われわれ青年グループと同じように、今多くの若者が真実を求めております。われわれの子供が育つ環境をより良いものにしたいと願っております。そんな時になぜ人間どうしが殺し合い、傷つけ合うのでしょうか。なぜ人種どうし、あるいは宗教どうしで憎み合うのでしょうか。
なぜこうまで愛が乏しいのでしょうか。われわれは平和が欲しいのですが、いつ、どういう形で平和になるのでしょうか。われわれの先輩───われわれよりも人生の知恵を身につけているはずの世代が成就し得なかったことを、果たしてわれわれに為し得るでしょうか。われわれにあるのは若さと力とやる気です。
そして無知と愚かさ、強欲と憎しみをなくすための闘争に参加したいのです。何かアドバイスをいただければ有り難いのですが・・・・・・
「これはまた、大変な質問をして下さいましたね」と言ってから、改まった口調でこう続けた。
「あなたのおっしゃる〝無知〟と〝愚かさ〟は別に今に始まったものではありません。
したがって、それを一晩のうちになくする魔法のような手段はありません。大自然の働きの基調は革命(レボリューション)ではなく、進化(イボリューション)です。進化の過程はゆっくりと、そして着実に進行します。
物的なものの生長も、無理強いすると取り返しのつかないことになります。霊的なものも同じです。一気呵成に事を成就させようとすると誤ります。悲観的な気持ちからそう申すのではありません。霊的実在に少しでも目覚めた者は希望に溢れた物の見方をすべきであると、私は常々説いております。
無知から、あるいは愚かさから、人間がいかに無謀なことをしても、それにもおのずと限界というものがあります。大自然には法則というものがあり、そればかりは人間にはどうしようもないからです。
といって、今すぐ提案できる万能薬は、私たちも持ち合わせません。
申し上げられることは、霊的知識が広がり、その結果として無知が少なくなるにつれて、人間同士の対立が減り、戦争が減り、強欲が減り、光明の地域が増えていくということだけです。
私たちが人間に代わって地上環境を改めるわけにはいきません。受け入れる用意のある人間に霊的真理を教え、その人に生き方を正してもらうことしかできません。
人間にも、ある一定限度内でのことですが、選択の自由が与えられています。大霊の創造活動の一端を担って進化に貢献することもできますし、それを阻止したり、遅らせたり、邪魔立てすることもできます。それもアンチテーゼ(対立要素)としての貢献なのです。
大霊は人間を、操り人形やロボットとしてこしらえたのではありません。大霊の属性のすべて、いわゆる神性を潜在的に所有しているのです。ですから、自らの判断力を行使して選択すべきなのです。戦争という手段を選ぶことも許されます。が、
戦争では問題は解決されないどころか、さらに問題を生み出すこと、強欲や自己中心の考えは、その内部に自分自身の破滅のタネを宿していることを知るべきです。
ナザレ人イエスも〝剣を取るものは剣にて滅ぶ〟と言っております。それくらいのことは人間もいい加減に悟ってほしいものです。
あなた方としては、一人ひとりが、出来うる範囲内で霊的知識を広めることを心がければよろしい。
自分自身が光明を見出したように、今度は誰か自分以外の人たった一人に光明を見出させてあげることができたら、それだけでこの度の地上生活は有意義だったことになるのです。以上が私から申し上げられるお答えです」
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別のメンバーが代表して「正直言って現在のスピリチュアリズム運動は次元が低く・・・・・・」と言いかけたところ、シルバーバーチが───
「ちょっとお待ちください。私はその〝スピリチュアリズム運動〟とやらには関心はありません。私たち霊団としては霊的能力のある人、あるいは、それを発達させる段階に来ている人を援助することを仕事としており、その人がどこかの団体組織に属しているか否かは問いません。
組織というものはそれなりの目標を持って活動しており、それはそれで結構です。
が、私たちは、いついかなる場においても人の役に立つことをする人を援助することをもって、第一の責務と心得ております。
名称はどうでもよろしい。スピリチュアリスト、セオソフィスト(神智学会員)、ローゼクルーシャン(バラ十字会員)、こうしたものはただのラベルにすぎません。
肝心なことは、各自がその能力に応じて精一杯、真理の普及に努力することです。
霊媒能力を私たちが重要視するのは、その能力を通して地上界で真理普及のために最大の貢献ができるからです。
途方もなく大きな責任を担ったものであり、その能力を授かった者には聖なる信託がなされているのです」
シルバーバーチ
続く。