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僕と落語 -8/蒲敏樹

2017.06.17 12:35

突然だが、いま最も食べたいものを挙げるならば、「朴葉寿司」と「鮎」だ。僕の故郷は岐阜県の郡上である。緑の濃い深い山がずっと連なり、幾筋も流れる谷や水量豊富な川に沿って貼り付くように人家が点在する。よく晴れた日に山をザッと風が渡ると、山の表面が艶やかな白色に変わる瞬間がある。風にあおられた朴葉の葉が一斉に裏を向くからだ。この朴葉で鮭や茗荷を和えた酢飯を包む。まだ酢飯が熱いうちに包んで重石をかけるので、朴葉の表面が煮えて何とも瑞々しい香りが立つ。これが何ともオツで、主食にするならば5枚や6枚はペロリと食べてしまうし、常温辛口の酒を呑みながらチビチビとつまんでも旨い。

梅雨で谷や川が増水すると、川底の石についた藻が世代交代して鮮やかな緑色に変わる。それを餌にするのが鮎で、水系によっても違うが、およそいま時分に漁が解禁となる。香魚の別名がある様に新鮮な藻を食べて育った鮎は熟れた西瓜のような香りがあり、急流で鍛えられてよく身が締まり、背が隆起して体側の黄色が目を見張るほど美しい。これは塩焼きに限る。刺身も煮物も旨いが、あの青い香りと白身の弾力は塩焼きでなければ。これにはちょっと上等の酒がいい。よく冷やしてやると尚いい。鮎の香りは酒と相性抜群なのだ。そうして、酒の合間に故郷を思い浮かべる。

石川啄木は上野駅へ「訛り」を聞きに行くことで故郷を偲んだようだが、僕の場合は「味」と「匂い」が故郷への窓のようだ。

さて、なぜ故郷の話かというと、「桂弥太郎」さんという噺家さんをご存知だろうか。

実は、僕もつい先ごろ故郷の先輩のFacebookで知ったばかりで、「桂弥太郎後援会結成」とあったのだ。

調べてみると米朝一門で吉弥さんのお弟子さんらしい。年齢は35歳。へぇーっ、こんな人も居ったんかと思い、カミさんと「なんか嬉しいな。故郷の風を感じるわ。」などと話していたところである。

ところが故郷の風は「感じる」どころか猛烈に吹いてきた。第三回小豆寄席の打ち合わせを、いつもどうりメールでしていたのだが、歌之助師匠から届いた文面に目が点になった。

「桂弥太郎という後輩と伺います。」

え?

僕「桂弥太郎さんはもしかして郡上八幡出身の方ではないでしょうか。」

歌之助師匠「同郷でしたね」

歌之助師匠は桂弥太郎さんが、僕と同郷と知って依頼した訳ではないようだ。何というタイムリー。噺は全く聞いたことはないが、俄然気持ちも盛り上がる。

7月9日、小豆寄席当日はカミさんに朴葉寿司を作ってもらって歌之助師匠と桂弥太郎さんを出向かえよう。またひとつ楽しみが増えた。

最後に、第三回小豆寄席の詳細を。

~みんなが笑える落語の時間~

第三回小豆寄席

出演 桂歌之助 桂弥太郎

日時 平成29年7月9日(日) 開場16:30 開演17:00

場所 小豆島オリーブ公園 サン・オリーブ和室

料金 2000円

ただ今予約受付中です!当日入場も可。お楽しみに。

▲前回の小豆寄席のようす。(写真:太田有紀)



蒲 敏樹
1978年岐阜生まれ、2010年より小豆島。
波花堂塩屋&猟師&百姓。