【Special Interview】『喜びと感動を増幅させるラスト10km』 渇いた身体に音楽を効かせて、いつも自分の決めたゴールまで──TAKUYA∞ [UVERworld]
「走る」と「生きる」と「歌う」は似ている──以前『走るひと3』のインタビューで、UVERworldのボーカル・TAKUYA∞さんはそう言った。その言葉を体現するかのように、彼は毎日欠かさず10キロを走り続け、自分たちの歌を届けながら生きている。そんなTAKUYA∞さんが『Wings for Life World Run』を走ると仮定して作ったプレイリスト。追いかけてくるゴールから逃げ、最も長く走ったひとが優勝となるランイベントを、走ることと誰よりも真摯に向き合ってきた彼の選んだ楽曲たちが彩ってくれる。
走る心を強く揺さぶる、音と仲間
──普段、長い距離を走るときはどんな音楽の使い方をしますか?
マラソンを走るとき、僕は20キロを過ぎるまで音楽を聴かないんです。初めの10キロは耳栓をして、ひたすら自分の呼吸を聴く。次の10キロは周りの声援を楽しむ。で、20キロ以降からようやく音楽を聴き始めるんです。まず呼吸や空気だけを楽しむのも、あとから音楽を最大限に効かせるための……料理でいう「空腹は最高のスパイス」。そこからはもう音楽が思いっきり効いて、自分のなかに入り込んでくるんですよね。あと、40キロとか50キロを走るときは、ラスト10キロで絶対にUVERworldを聴くってことも決めてます。
こないだ横浜マラソンでフルを走ったときも、20キロ過ぎからようやく音楽を聴き始めて。シャッフルで後輩の曲が流れてきたとき、アドレナリンが出まくって、涙がこぼれてきましたね。沿道の応援でサンバを踊っている女のひとがいたんですが、そんなテンションのひとからも目をそらされるくらい、俺のほうがハイになっちゃってたり(笑)。
僕は普段『PRIDE RUN』という仲間たちと一緒に、毎日それぞれ10キロを走っています。ルールは、かならず50分以内(キロ5分ペース以内)で走りきること。だから今回、もし俺が『Wings for Life World Run』を走るとすれば、同じスピードを狙っていきたいと思うので、キャッチャーカーに追い付かれるまでに約30キロ走れる計算になります。なので、その約30キロを走り切るために、ラスト10キロで聴きたいプレイリストを作りました。
──約30キロ中のラスト10キロ。つらくなってきた後半戦で、どんな曲を、どんなふうに聴きたいと思いましたか。
俺はマラソンしながら、走れる喜びを感じながら、泣きたいんです。感動がしたくて、マラソンをしてる。だから1曲目にはちょっとバラードっぽい曲がよくて……『7日目の決意』(UVERworld)から始めたいです。
走っているときって、普段なら特に何も感じないような言葉が、ぐーっと心に入ってきたりすると思うんです。横浜マラソンのときにも、沿道のひとが「自分を信じて!」とか「君ならできる!」みたいな看板を持っていて。普通なら「あんた誰や(笑)」って思うはずのところやのに、そのときは素直に受け止められるんですよね。音楽も同じで、いつもの入り方とは全然違う。ずっと素直に、ずっと深くまで届いてくるというか……横浜でもいろんな感動と混ざりながら、やけに音楽が刺さってきました。
──それは、どんな種類の感動だったんですか。
走ることの感動ってさまざまあるんですけど……でも、自分のなかではもう“走ること”は2周くらいしてしまっているんです。多少ケガをしていたり、身体的に苦しい部分があったとしても、「苦しい」と思いながら走ってはいない。長年続けていると、走りたいのに走れなかった時間もあって、走れる喜びをわりと純粋に知っているからかもしれません。自分のなかでその喜びやうれしさに気づいているからこそ、大会とかに出たときはすごく幸せなんですよね。それに、僕はそういうとき仲間と一緒に参加したりするから、一人ではないことがいつもと違うエネルギーにもなる。コースの途中で出会うひとに対しても「このひとはここまで走れるほどトレーニングをしてきた――このひとにも一人で走ってきた時間があるんだな」って思うと、自分が今までやってきたいろんなことも、なんだか一人じゃなかったって思えるというか。みんなが同じような想いを抱いて走る、ってことに幸せを感じてるのかな。そういうさまざまな部分に引っかかって、感動できるんだと思います。
で、自分の楽曲でその場面に一番しっくりくるのが『7日目の決意』なんですよね。横浜マラソンでも32キロ地点からシャッフルでUVERworldを聴き始めたけど、1曲目だけはこれを選んでスタートした。シャッフルって「次はあれが聴きたい」「あれ来い」って思って、本当に来たときの感動がはんぱないですよね(笑)。そういう意味では、このプレイリストもシャッフルで聴いてもらってもいいかもしれません。
──ほかにポイントとなる楽曲はありますか?
『PRAYING RUN』はいつも3回くらい聴きますね。そもそも僕は、自分でも明確な理由がわからないまま走り続けていたんですけど、“走ること”を初めて深く考えて言葉にしたのが『走るひと2』の取材だったんです。そのとき、今まで理解できていなかった感情がひとつずつ繋がっていって……自分の言葉で“走る”を語れたことが、すごくうれしかった。だから今度はそのメッセージを、音楽で伝えたいと思うようになったんです。『PRAYING RUN』が生まれたのはそれから数ヶ月後。地元の滋賀で走っていたとき、聴いていた音楽のドラムに、ふざけて自分の呼吸を合わせてみたりしていて……そしたらふと「あ、いつか語りたかった“走ること”について、このリズムで曲を作ったら面白いな」と思った。それから走り終わるまでの40分くらいで、ほとんど作り終えたのが『PRAYING RUN』なんです。それぞれの場所でいつも一緒に走っている『PRIDE RUN』の仲間たちにこれまで投げかけてきた言葉や、共有してきた想いがどんどん頭のなかに浮かんできて、止まらなかったんですよね。『PRIDE RUN』のメンバーにはそれぞれ自分の仕事があって、俺なら音楽をやっています。自分に残された時間すべてを音楽に費やして、これ以上何をしたらいいのかわからへんから、走ってるんだと思うんです。「どうかUVERworldが少しでもいろんなひとに知ってもらえますように」「俺の歌詞が届きますように」みたいなことを祈りながら。なんとかうまくいきますように、っていう気持ちが、俺たちを毎日走らせてくれる。もう“走る”というよりも“祈る”に近いんです。そんな俺たちの共通認識がタイトルにふさわしいと思って『PRAYING RUN』と名付けました。
この曲、たとえばケガをしているときには歌えないんですよ。毎日走り込んで、積み上げてきたものを乗せて歌ってるから、走っていないときには全然気持ちが追いつかないし、それがないままパフォーマンスをしても響かない。しっかり重みを持たせて歌うために、俺は一生走り続けなあかんなと思える曲なんです。だから、走っているときは大事なポイントで何度でも聴きたい。1回じゃ足りないんですよね。
Photo: Kashiwazaki Yusuke/Text: Sugawara Sakura
プレイリストは5月5日(木)、疾走プレイリストAWA公式アカウントにて公開されます。
TAKUYA∞
2005年にデビューした滋賀県出身の6人組バンド『UVERworld』のボーカルであり、ほぼすべての曲の作詞・作曲を手がける。独自のサウンドと歌詞のみならず、生き様や人間力が今を生きる人々の間に響き、若者を中心とした幅広い層から絶大な支持を得続けている。
Wings for Life World Runの詳細はこちらから
http://www.wingsforlifeworldrun.com/jp/ja/
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