【THE SHOKUNIN】常に120%の満足度を目指して家具づくりと向き合っています
【家具職人】鍋島亮三さん(45歳)
リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは、家具職人の鍋島亮三さん。オーダーメイド家具づくりにおいて、妥協を許さない姿勢に、リフォーム会社から絶大な信頼を寄せられている。
仕上げは触る回数を極力少なく
「昔、親方から『触る回数が少なくならないとうまくならないよ』と言われていました。家具は形にするまでが大変ですが、僕は仕上げも重視しています。仕上げの作業の時にベタベタ触ると、手の跡が残ってしまうのです。僕は手袋をして、極力触らないようにしています」
鍋島さんは仕上げのペーパーがけも「ゆっくりやればいいものではない」と言う。かえってキズを付けることもあるので、端を持って、手際よく行う。それだけでも、仕上がりが全然違ってくると話す。
全くの素人から家具職人の修行を始め、2004年に独立した鍋島さん。現在はリフォーム会社からの依頼の他、個人客からの注文も約3割を占めるようになった。現在、アトリエには鍋島さんを含めて3名のスタッフが働いている。
「お客さまは図面通りの100%のものを求めています。それ以上の120%のものを提供すれば、『ここに頼んでよかった』と思ってもらえる。この120%の満足度を得るためには、それなりのこだわりを持っていないといけない。だから、自分自身が納得するまでやり直しを行います」。
2011年にはショールームをオープンし、オリジナル家具も販売している。「これからは新しいデザインに挑戦したいと思っています。シンプルな形が好きですが、遊び心を入れて、木のテーブルにアイアンの脚を付けてみたりと、幅を広げていきたいと思っています」と鍋島さんは話している。
▲オリジナル家具の設計図
▲鍋島さんの道具。手前は伝統工芸士が作った鑿のセット20年以上愛用している、その上に乗っているのは「しらがき」。奥にあるのは玄能、鉋、罫引きなど
▲このしらがきは左利き用のもの。罫引き(下写真)も左利き用のものを作ってもらった。「左利き用の道具を揃えるのに苦労しました」と鍋島さん
推薦の言葉
スタイル工房 チーフプランナー
於保 誠之さん
鍋島さんとのお付き合いは十数年前から。たまたま鍋島さんがスタイル工房浜田山店の前を通りかかった際に来店してくれて、スタッフと話をしたのがキッカケです。「面白そうな人だね」と、仕事をお願いしたら、それがもう素晴らしかったんです。
技術やセンスはもちろんですが、人一倍責任感が強い。造作家具はリフォームの中でも高価なものですし、一生ものです。鍋島さんはそうしたことも考え、お客様や私たちプランナーの思いを真摯に受け止め、徹底して責任を持って製作をしてくれます。
例えば、建物は少し歪んでいたりします。鍋島さんはそれも考慮し、きちんと家具を収めてくれます。想像以上のものが出来上がってくるので、弊社スタッフは全員、鍋島さんを信頼して仕事をお任せしています。弊社のショールームの家具はほとんど鍋島さんにお願いしていますね。
だから、鍋島さんの家具で、お客様が喜ばなかったことはほぼゼロなんです。作業をしている時の姿、接客、メンテナンス方法など、ほとんどのお客様からお褒めの言葉をいただいています。
鍋島さんからリフォーム営業担当者にメッセージ
「こうしてもらうと助かるなぁ」
オーダーメイド家具の見積もりを出した時、なぜそうした金額になるのか、理解していただけると助かります。
例えば、天井と壁に取り付ける食器棚の仕事がありました。元々大工さんが作った棚があったのですが、ガラスの引き戸が落ちて割れたりしていたそうなのです。調べると、横幅が1500ミリもあったのに、収縮幅の大きい集成材を使っていて、しかも、間仕切板も入っていませんでした。
そこで、プランナーさんと相談し、間仕切り板を入れ、底板が垂れないように、突き板の中に無垢材の芯を入れることにしました。さらに、出来上がったものを持っていくと玄関から入らないので、バラして持っていき、現場で組み立てる必要もありました。
家具は形だけをイメージしがちですが、機能性や取り付け方法についても考えなければいけません。見積もりを出すのに、何日もかかることがあります。なぜ、この金額になるのか。時にはアトリエに来て、作業工程を見てもらうと納得してもらえるのでは、と考えています。