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こどものあそび/Nemu Kienzle

2018.03.02 09:55

 小学4年生の娘りりが学校から帰ってくるなり「ママ、今すぐスライミー作りたい!」と言いました。スライミーとは、おもちゃ屋さんや駄菓子屋さんによく売っている蛍光グリーンや蛍光イエローのドロドロのおもちゃです。りりの学校ではいまこのスライミーを作ることが流行っているらしく、放課後はみなウチにすっとんで帰って近所のお友達とスライミー作りをしています。作り方は色々あって、洗剤と木工用のりに着色料を混ぜて作る方法もあるし、コンタクトレンズの保存液、髭剃りのシェービングフォームを入れて作る方法もあります。簡単そうに見えてなかなか上手く出来なく、出来たら学校に持って行って見せびらかせることができるので子供達が夢中になっているのもわかる様な気がします。うちで作ったスライミーは一度も上手くいかず、YouTubeやGoogleで事前勉強したにもかかわらず成功しませんでした。ガッカリしているりりとそのお友達を見ながら(こういう流行りは早く過ぎ去ってほしい、、、)と秘かに願うのでした。

 私がりりぐらいの歳だった頃の流行りは、マクドナルドのコマーシャルで爆発的に人気がでたヨーヨー。アメリカからヨーヨーチャンピオンが来てテレビで特技を披露したりして、いまあのヨーヨーチャンピオンは何をしているんだろう?と、ふと気になりました。流行りものを毛嫌いしていたうちの親は、流行っているおもちゃは買ってくれませんでした。わたしと主人のピーターも流行りものは嫌いです。でも、りりは「みんな持ってるのにわたしだけまだ持ってない~!」と、流行りものによくつられます。

 昨年はハンドスピナーという3本のウイングを手の上でくるくる廻すおもちゃが流行りました。りりは毎日学校から帰ってくると「みんな学校でハンドスピナーで遊んでるよ!」と言うので「ふーん」「あ、そう」と聞き流していました。するとある日、自分の貯金箱を開けて、「買ってくれないなら自分で買う!」と言って、ピーターを連れて本当に買って来てしまいました。ピーターによると、おもちゃ屋さんで従業員がダンボール箱に入ったハンドスピナーを店内に持ってくると、子供や保護者が我も我もとワーッと箱にたかり、あっというまに箱が空になってしまったそうです。それなのに流行りが去った今は、ガソリンスタンドやスーパーのレジの横に半額以下の値段でも売れないハンドスピナーが置いてあるのです。「みんなが持っているから自分も持っていないと、仲間外れにされる」という一時的な流行りは、どの国でも一緒なんだなと思いました。

 遊びと言えば、りりは小学4年生になった今も「ごっこ遊び」が大好き。おもちゃで遊ぶよりもこっちの方が楽しいみたいです。最近は、ごっこ遊びをしている時は子供部屋のドアをしめているので、どんな遊びをしているのかを知る機会がありません。でもこの前、たまたまお友達と遊んでいる時に聞こえた会話はこんな感じでした。「もうここにはいられない」「人間じゃないことが分かってしまった」「早く自分の故郷に帰らなければ」。これを聞いて???のわたし。もうちょっと長く聞いていると、宇宙人とお友達になった地球人ごっこをしていることがわかりました。あまりにも台詞が デヴィッド・ボウイ主演のSF映画『地球に落ちてきた男』に似ていたのでびっくり。しかし、この映画上映時には生まれていなかった二人。時代を越えていつでもこういう遊びができるっていいなぁとおもいました。

 わたしも「ごっこ遊び」が大好きで、小学生の頃は探偵ごっこにハマりました。たまたまそこいら辺で見かけたおじさんを悪者と仮定して、そのおじさんを探ったり、習性をノートしたり、尾行したり。おじさんにとっては大迷惑。でも、おじさんに気づかれずに遊ぶのもまたスリルがあって楽しいのです。

 マンションに住んでいたので、近所の子供達を引き連れてよくいろいろな遊びをしました。その中で一番記憶に残っているのは、隣家の庭に無断侵入したこと。マンションの裏庭の垣根の向こうには、大きな松の木が生えている広い庭と平家の古い邸が建っていました。人の気配がするのに、一回もそこの住民を見たことはありません。興味津々で、ある時垣根の下に犬が通れるぐらいの小さい穴を掘って枯葉で隠しておきました。

 マンションの悪ガキが数人集まったところで、探偵になったつもりで垣根の下の穴をくぐって反対側に出ました。そこには大きな穴が地面にあり、真っ暗な入り口から中を覗くと奥の方でピチャーン、ピチャーンと水の音がしました。あまりにも怖くなっていきなりみんなで退散!帰り際に誰かが「わーっ!」なんて叫ぶものだから、きっと私たちの侵入がバレたに違いありません。翌日、垣根の下の穴は埋まっていました。

 でも悪ガキ軍団はくじけません。数日経ってから、今度は堂々と正門玄関から行くことにしました。ピンポーンと呼び鈴を押すと、立派な門がちょっとだけ空いて、着物姿のお婆さんが「何か?」と顔を出しました。「バトミントンをして遊んでいたら、羽がそっちの庭に入ってしまったので取りに行ってもいいか」と聞くと、「いいですよ」と言って中に入れてくれました。穴なんか掘らないで、初めっからこうやって入れば良かった。家には上がらないで、そのまま庭に入って大きな穴の隣にわざと落としたバトミントンの羽を拾いに行きました。

 後ろからついてきたお婆さんが、「防空壕には水が溜まっていて危ないから入ってはいけませんよ」と言った。あの暗い穴は防空壕だったんだ。どのくらい広い防空壕なんだろう?学校の授業で戦時中の防空壕については知っていたけれど、実際に見るのは初めてでした。よーく目を凝らすと、陽の光でなんとなく中が見えます。入り口の両脇にコンクリートのベンチみたいなものがあって、その先は長い廊下が続いています。でもそれ以上見ていると怪しまれるかもしれないから、バトミントンの羽を取ったらすぐまた正門へ引き返しました。

 ちらっと豪邸の方を見ると、わたしと同じぐらいの歳の女の子がこちらを見ていた。なんだ、こんなとこに隠れていないでわたしの悪ガキギャングに加わったらいいのに、と思いました。もしかしたらあの子が私たちの遊びを毎日見ていて、垣根の下に掘った穴についてチクったのかもしれない、と気づいたのはウチに帰ってから。そのあと、豪邸があった土地は新興宗教に買い取られ、毎日のようにでんでん太鼓の音が聞こえるようになりました。それにしても、あそこに住んでいた女の子は何処に行ったんだろう。

 大人になってから聞いた話によると、お隣の土地は、第二次世界大戦中に内閣総理大臣になり、戦後の東京裁判で処刑された東條 英機の豪邸でした。それを聞いて、庭にあったあの大きな防空壕の理由が解けました。

▲ スライミーをお友達と作る

▲ 手作りの刀で遊ぶ

▲ いらない段ボールを切って作ったラップトップで仕事をしているふりをしているリリ「今日は残業だわ」