「宇田川源流」<現代陰謀説> 中国から亡命したスパイが膨大な情報を提供したという事件報道に関して次に中国共産党の取る「一手」
「宇田川源流」<現代陰謀説> 中国から亡命したスパイが膨大な情報を提供したという事件報道に関して次に中国共産党の取る「一手」
毎週金曜日は陰謀説の日である。毎週現在進んでいると思われる陰謀に関して、その陰謀の内容をしっかりと解説している。逆に、世の中で「陰謀論」といわれることの中で、まあ、どうにもならないような内容をすべて排除するということを目標としている。何でもかんでもどこかの団体やユダヤ人の陰謀というような話をしていても、あまり大きな意味はない。そのような陰謀論を語ることそのものが陰謀論であるというようなことになっているのであるが、本人たちは「自分こそ陰謀を暴いた」として、大きな陰謀を仕掛けている人の「駒」となってガセネタを吹聴しているということになる。まあ、どうにもならないとしか言いようがない。
さて、陰謀の主役といえば、様々な団体や国家などが存在するのであるが、実際にはその実行犯が存在するのが普通である。その実行犯というのは、工作員とかスパイと言われる人々の事を言う。スパイというと日本では、娯楽映画の007シリーズをイメージする人が多い。それだけ日本人というのは映画なごの作品に影響されやすいということであり、マスコミ等に感化されやすいのであるが、当然それらは作品、つまり作り物でしかなく、本物とは似ていても、全く違うという場合が少なくない。実際に、イギリスで007の映画を見た情報部MI6の職員は、映画はあくまでも娯楽作品であり、映画のように街中でカーチェイスや、銃撃戦をやり、基地らしい所で大爆発をおこせば、翌日の新聞のトップになりすぐに懲戒であると笑つていたと、BBCが報じている。逆に言えば、それほど繊細で厳しい仕事であり、陰謀論者が言うような計画的なものではないのである。他人の心を動かすのは、それほど難しい事であり、例えば身近な異性の心もままならないので恋愛小説という分野が成立するのだが、敵国のそれも見ず知らずの集団を動かす事が、そんなに簡単にできるはずがない。陰謀論は、そのような失敗まで計算しているかのごとき ありえない話をまことしやかに言うのである。
さて、その計算外の失敗例の最たるものがスパイの裏切りである。
中国から亡命希望の元スパイ、豪に膨大な情報を提供 報道
【11月23日 AFP】香港と台湾、オーストラリアで中国のスパイ活動に関わっていた男性がオーストラリアへの亡命を希望し、中国の政治干渉活動に関する膨大な情報を豪当局に提供していたことが分かった。豪メディアが23日、伝えた。
豪メディア大手ナイン(Nine)系列の複数の新聞によると、亡命を希望しているのは、「威廉王(William)」こと王力強(Wang Liqiang)氏。王氏はオーストラリアの防諜(ぼうちょう)機関に対し、香港で活動する中国軍の情報将校の身元と、香港と台湾、オーストラリアで行われている活動の内容と資金源に関する詳細な情報を提供した。
王氏自身も、香港と台湾、オーストラリアのすべてで、潜入工作や妨害工作に関与していた。任務の中には、中国本土に移送され、反体制的な書籍を販売した容疑で尋問を受けた書店関係者5人のうち1人の拉致も含まれていたという。
ナインによると、王氏は有力紙のエイジ(The Age)とシドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)、報道番組「60ミニッツ(60 Minutes)」とのインタビューの中で、中国政府が複数の上場企業をひそかに支配し、反体制派の監視と調査分析、報道機関の取り込みを含む諜報(ちょうほう)活動の資金を出させていることについて、「微細にわたって」説明した。
王氏は現在、妻と幼い息子と共に観光ビザでシドニーに滞在し、政治亡命を申請している。
■中国に戻れば死刑
王氏によると、香港では民主化運動に対抗するための大学や報道機関への潜入など、上場企業を隠れみのにした諜報活動に関与した。そこでの王氏の役割は、香港のすべての大学に潜入し、反体制派に対するバッシングとサイバー攻撃を実施するよう指示することだった。
台湾には韓国のパスポートで別人になりすまして潜入し、2018年の地方選と来年の総統選への干渉工作を行った。さらにオーストラリアでは、エネルギー業界のダミー会社を通じて同国でスパイ活動を行っているとみられる高位の諜報員に会ったという。
ナインのウェブサイトに23日に掲載された24日放送予定の「60ミニッツ」の映像の中で、王氏は「帰国すれば命はない」と通訳を介して述べ、中国に戻れば死刑に処されると訴えた。
王氏に関する今回の報道は、オーストラリアで高まっている中国の諜報活動や内政干渉への警戒感をさらにあおるとみられる。
今年9月までオーストラリア保安情報機構(ASIO)の長官を務めていたダンカン・ルイス(Duncan Lewis)氏は、22日付のシドニー・モーニング・ヘラルドに掲載されたインタビューで、中国が「水面下で狡猾(こうかつ)」に組織的なスパイ活動と利益誘導を駆使してオーストラリア政治体制の「乗っ取り」を企てていると警鐘を鳴らしていた。(c)AFP
AFP 2019年11月23日
https://www.afpbb.com/articles/-/3256283
スパイ、工作員という存在は、信用がなければ成立しない。つまり、本国、この場合中国は、オーストラリアを工作するために多くの情報を渡していたし、また、わざわざ教えなくても、調べる能力があるからその仕事に就いているわけで、同国内の事などは、言われなくても知ることができるのが普通だ。情報は金で買うものではなく、信用で手に入れるものである。そのように考えた場合、信用を手に入れる為に、オーストラリアの人が普通では知りえない敵国中国の情報を出して、信用を得てゆく。しかし、そのつど情報をとるために中国に帰っていては 怪しまれるので、 まとめて情報を持ち、普段は、オーストラリアの日常をすごし違和感を周囲に与えないようにしながら情報をとってゆき、工作を行う時の準備をするのである。
当然にそれ以外の情報、自分の任務や標的なども持っている。通常、工作を行う時に使う情報は、自分の持つ情報の10%程度が最高レベルと言われている。残りは予備で持っていたり出せないものばかりだ。そのスパイが裏切るということは残りの90%が、全て出てしまうということになる。
香港で活動する中国軍の情報将校の身元と、香港と台湾、オーストラリアで行われている活動の内容と資金源に関する詳細な情報を提供した。〈上記より抜粋〉
もちろん、これだけであるはずがない。日本のレベルの低いマスコミではないので全てを「知る権利」などと言って手の内を明かしたりしない。当然に、オーストラリア人が頑張ればわかる程度の情報のみをマスコミで公開していると思われる。オーストラリア政府にすれば、中国が狡猾にも、国内で工作し香港に関する情報操作をしていたという事が明らかになり、中国に関する国民の印象が悪くなり、なおかつ、親中派への支持が少なくなれば良いので、それ以上の情報を与える必要はない。
同時に、中国による香港への民主派弾圧や、スパイをはじめとした軍の介入を印象付ければ、また国際社会に発信できればそれで良いのである。
さて、中国はどうするであろうか。
今のところ、公式にこの事に関してのコメントはない。そこで一般論で考えてみる。まずは無視が一番良い。下手に反応し揚げ足をとられて、工作をしていた事が真実であるとされるのが、国際的には最悪である。ー度実例を作ると全てが疑われるので今後の活動に支障が生じる。つまり、外交的な活動に制約ができるという事になる。衆知としても本人が否定しなければならないのだ。その上で、「裏のことは裏で処理する」つまり、暗殺ということになろう。
王氏は「帰国すれば命はない」と通訳を介して述べ、中国に戻れば死刑に処されると訴えた。〈上記より抜粋〉
という事まで本人が言うということは、命はない、という事を自覚しているのであろう。
その上で、作戦そのものを作りかえて、または、その現象を逆手にとって、次に何かをしかけるということになる。まあ、それだけ、中国から見たオーストラリアは、工作しやすく影響力の大きな場所なのである。
このような事件から見える事は少なくない。日本も、他人事ではないと、考えるべきであろう。