せとかわデニム語り【プロジェクトリーダー みなみさん】(前編)
こんにちは!瀬戸内かわいい部のやすかです。
2019年1月にスタートを切った、「せとかわデニムプロジェクト」。EVERY DENIMさんと共にゼロから商品開発を進めてきたこの企画は、2020年春「デニムのピクニックシート」の発売に向けて準備を進めています。
10月にはたくさんの方々のサポートのおかげで、第一弾サンプルが完成。11月3日の交流会ではサンプルの手触りや撥水の効果をお客様に体験していただくこともできました。
「デニムのピクニックシート」という目に見えるカタチができあがってきた今だからこそ、カタチがなかった時のこと、何を考え何を思いこのプロジェクトを始めたのかを皆様にきちんとお伝えしたいと思い、せとかわデニムプロジェクトのリーダー・みなみさんにお話を伺いました。
南 裕子(みなみ)
1987年生まれ、備前市出身。かわいい雑貨、工芸、美術館をさがして、カメラ片手に旅するのが好き。瀬戸内かわいい部運営。せとかわデニムプロジェクト発起人/プロジェクトリーダー。BIZEN PRODUCT企画&デザイン。
本や舞台のPRや宣伝物のデザインの仕事を経たあと、2018年フリーランスに。「地域や文化のためのしごと」をテーマに、PR・デザイン・ライティングなどの領域で活動中。(twitter:@minami9ram)
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や:今日はお時間を取っていただきありがとうございます。
瀬戸内かわいい部(以下せとかわ)運営チームで、デニムプロジェクト(以下デニプロ)の発起人であるみなみさんに、この活動を始めたきっかけや想いなどをお聞きしたいと思っております。
みなみさんは、普段は東京でデザインやPR、イベントの企画運営などのお仕事をされながら、月1回のペースで地元岡山にも帰ってこられています。東京と瀬戸内を行き来するライフスタイルを選択されたみなみさんから、どのようなお話を聞けるのかとても楽しみです。よろしくお願いします。
み:よろしくお願いします。
や:みなみさんは、瀬戸内かわいい部が始まって、このコミュニティで何をしていくか考えたときに、「SNS」「イベント」「プロジェクト」という3つの活動を提示してくださいましたよね。「SNS」と「イベント」は私もすぐにイメージが湧いたのですが、「プロジェクト」というアイデアを頂いたときは「一体何をするんだろう?」とあまり想像ができていませんでした。
まずは、「プロジェクト」という活動を提案された理由について教えていただけますか?
「プロジェクト」という活動を提案した理由
み:はい。
SNSやイベントは活動内容として一番求められているものだと思いましたが、東京在住の私はSNS発信用の瀬戸内のネタを集められないし、イベントも毎回参加は難しい・・・東京にいながら地元と関われる活動をなんとか捻り出したいと思っていました。
瀬戸内にいなくても、家で10分作業をする、といったように少しずつ地元と関われる形を作りたいと思い、「プロジェクト」という活動を提案しました。また、瀬戸内かわいい部としてせっかく活動していくからには、消費したり享受したりするだけでなく、“自分で作り出していくという営み”を、活動に入れたいと思っていました。
実は、せとかわに出会う少し前、東京から岡山に転職を考えていた時期があったんです。地元のために形に残るものを作る仕事をやりたかった。でもリモートでの仕事は難しく、やっぱり東京で生きていくしかないのかな・・・?と諦めかけていたそんな時、せとかわに出会ったんです。
ここなら、デザインやものづくり、写真といったクリエイティブな活動に興味がある人たちが集まってきそう。一人では厳しいけど誰かと一緒なら、仕事と趣味の間みたいな形で、何か一つ企画を世に出すみたいなことができるかもしれないな、と思って。そう思って「プロジェクト」という枠だけ作りました。
や:思い返せば2018年秋に瀬戸内かわいい部のHPを作った時に、活動内容に「プロジェクト」という枠組みだけ作ったんですよね。プロジェクトって何をするの?例えば商品開発とか・・・と説明を入れていたら、まさにドンピシャなお話がやってきましたね。みなみさんが最初に枠を用意してくださっていたから、次の展開に繋がったんだなと思います。
せとかわデニムプロジェクトのはじまり
や:せとかわデニムプロジェクトが始まった当時のことをお話しいただけますか?
み: はい。2019年1月に、やすかさんと島田さんが会って話をしたと聞いて。島田さんたちはデニムを“かっこいいと”か“クラフトマンシップ”とかそういう視点で捉えられていて、“かわいい”という切り口で捉えられたことはなかった。“かわいい”観点でデニムを見て、商品のアイデアを出してみませんかという話があったと聞いて。すでにあるものを“かわいい”という観点から作り変えてみる、再編集してみるという取り組みはすごくおもしろいなと思いました。
最初は運営メンバーの中で意見を出そうと思っていましたが、せとかわを通して関わった方々の中にはものづくりに興味がある方も多かったので、そういう人たちにアイデアを出してもらった方がアイデアが広がると思って。
なおかつ「プロジェクト」というまだ空っぽの枠があったから、ここにデニムの商品企画を当てはめることで、もっとおもしろいものが作り出せるかもしれない。さらに、私みたいに地元と関わりたいけどきっかけがないという人に、そのきっかけをつくれるんじゃないかと思って。そんな思いから始まったのがデニプロですね。
や:プロジェクト全体のスケジュール管理からビジュアルデザイン、HPやSNSの運営、記事の執筆、イベントの企画まで多岐にわたってご活躍されているみなみさんですが、プロジェクトが始まって8ヶ月・・・リーダーとして今どのようなお気持ちでいらっしゃいますか?
み:そうですね・・・このプロジェクトがやりたい!と言い出した張本人なのですが、実は"リーダー"といわれると、ちょっと気恥ずかしいです(笑)
や:え!そうだったんですか!
み:はい・・・プロジェクトを立ち上げてすぐの頃は、率先して「次はこれをしましょう!」と先頭切って動くようににつとめていましたが、実は子供の時から、みんなをひっぱるリーダー役が不得意で(笑)今は「こんなことやりたいと思うんだけど、どうかな?」とメンバーに相談してその方に旗振役になっていただくことの方が多いです。
むしろ「私、これやりたいと思うんです!やりますね!」とメンバー主導ではじまる企画も増えてきて、最近はその後ろを「それって最高!もっとやろう!」と追っかけていくことの方が多いですね。
や:確かにメンバーの皆様それぞれに動いて、どんどんプロジェクトを進めてくださってますもんね。メンバーがお住いの地域が瀬戸内、関西、関東とバラバラで、最初はどんな風にプロジェクトを進めていくのが理想的なんだろう?と悩んだ時期もありましたが、自発的に動いてくださるメンバーの皆様のおかげで、工場さんとのやりとりやリーフレットの配布、マルシェやイベント出店など広い範囲で対応できることに気づかせてもらいました。メンバーが日本各地にいてくれることがチームの強みになっているように思います。
自分の手で何かを生み出す
や:せとかわでプロジェクトを始める時に、大切にされていたことはありますか?
み:誰かが作ったものを発信するだけじゃなくて、自分が責任を持って何かを作ってみるってすごい大事だなと思って。
や:自分が責任を持って何かを作ってみる・・・
み:はい。演劇、出版、アートやデザイン・・・私の周りには自分の名前で作品を作り続ける人が多かったのですが、そうした方々のお話を聞くたびに、自分の名前のもと何かを作り、世に出している人は、言葉の厚みが違う、ひとつひとつの言葉を裏打ちするものがある、と感じていました。だからこそ相手の心に響くんだ、と。
そのことを思い出して、「ゼロから作る」経験をして、その過程で生まれてくる言葉で自分たちの地域を語れるようになったら、地域の魅力を伝える言葉にもっと体温が宿るのではないかと思ったんです。それで、すてきなものをただ「楽しむ」だけじゃなくて、なにかをを「作る」ところから「届ける」ところまでを自分たちの手でやってみる企画をやれたら良いなあと。
や:そうだったんですね。
みなみさんと以前お話しした時に「文化を作りたい」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、自分の手で何か生み出し、それを語る人が増えていくことが「文化をつくる」ことの一つの手段なのでしょうか?
み:そうですね・・・実は私、自分自身が文化を作りたいわけじゃない、と思ったんです。
文化を作る人はもういっぱいいる。けど、それを伝えて、受け取って、評価して、語り継いでいく人が足りない。・・・文化においても、産業においても、それを「作る人」じゃなくて「伝える人」を増やしたいと考えてます。さらに言うと、メディアやインフルエンサーのような大きな伝え手じゃなくて、そのまちやコミュニティのひとりひとりが自分自身の言葉で語れるようになって、「小さな伝え手」が増えていくことがこれからはだいじだと思うんです。
ひとりひとりが自分の言葉で文化を語れること。文化を愛する文化がもっと当たり前になること。それが文化を守ること・もりあげることに繋がるはずだと思っています。例えば、デニムだったらデニム、アートだったらアート、それは何で良いのかを語ったり、その背景の作り手のことまで説明できたり、どうしてこの作品や商品が生まれたのかを感じ取ってその背景まで愛せる人、語れる人、伝える人がいることで文化って続いていくんじゃないのかなって思ったんです。
文化は作る人がいるだけでは文化にはならない。それをきちんと愛してくれる人や語り継いでくれる人がいて初めて残っていくんだろうなと思って。それに、自分の言葉で語れるようになってくると、どんどん愛着が生まれてくるんですよね。知れば知るほど愛が深まるというか。そうやって愛着がめばえたものがすぐそばにある世界ってすごくハッピーだと思うんです。
私自身、今回のデニムプロジェクトでデニムが自分ごとになって、「デニムについて勉強しよう」「児島のデニムストリートを見に行ってみよう」と思えるようになりました。家の中にも少しずつデニム製品が増えてきて、友達が遊びにきたとき「瀬戸内って、実はデニムの産地でね…」と話したりして。自分ごとになると、人って変わるんだなと思いました。
(聞き手:瀬戸内かわいい部 やすか)
Photos by Helen Suzuki Yuko Minami Yoshiko Seno Yasuka Umezaki
*後編に続く