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story30.使者が呼び寄せた、お宝発見!

2019.03.16 04:21

お宝発見と言っても、なんでも鑑定団に出るような壺や掛軸が出てきたという訳ではありません。でも、自分にとっては、ずっと見つけたいなと思っていた念願のお宝をついに発見しました。

先日、我が家の調査のため、聴竹居倶楽部等の代表理事である松隈先生をはじめ、住宅遺産トラスト関西や古材文化の会の方々、写真家の方などがお見えになり、1日かけて、家の内外の撮影やさまざまな調査など、精力的に行っていただきました。撮影については、できるだけ家の原形をレンズにおさめるため、家具から電気製品、自転車、ポストに至るまで、現生活に関わる物は全て片付けるとともに、徹底して光の量や色にこだわり、照明器具や反射板など細部まで気を配った非常に本格的なものとなりました。調査については、まず棟札がないかを確認するため、ヘッドライトを頭に付けて、2階の屋根裏に潜入いただきました。棟札とは、建築の記録・記念として、建物内部の高所に取り付けられた札のことで、それには竣工年月日や建築家、大工さんなどが明記されているそうです。ただ、残念ながら、その札は見つかりませんでした。それ以外にも、蔵の採寸など、これまで積み残していた調査を適宜行っていただきました。さらに、別の方には、施主である祖父(永井専三)の手紙など、家に残っている古い書簡を調べていただきました。これまでも、古い書簡から藤井厚二という名前が見つけられないかと思って、それっぽい書簡を調べていましたが、なかなかその名前は見つかりませんでした。ただ、調査前日、たまたま家の外の納屋を掃除した際、祖父の時代と思しき書類が入った箱を見つけ、家の中に移動しました。それでも目ぼしい書簡は見つかりませんでしたが、調査当日、前日見過ごしていた別の書類の束を念のため確認してみたら、その中身は建築当時の領収書や請求書など家屋建設に関わる書類群だったのです。さらに、確認すると、建築家藤井厚二と施主永井専三のやりとりをしている手紙類、今であれば電子メールで取り交わすような内容のものが数多く出てきました。これまでも藤井厚二建築というのは99%確実であったのですが、これで100%立証されたことになります。しかも、聴竹居も手掛けていた酒徳金之助という名工の大工さんが関わっていたことも判明しました。

今回来られた松隈先生は、長年藤井厚二建築の研究をされている、いわば藤井厚二の使者であり、我が家を訪れた使者が、その日にこの手紙も呼び寄せたのではないかと思います。また、祖父の永井専三も上から私を操り、これまでずっと気を揉んでいたけど、今回やっと見つけたかと胸をなで下ろしたような、そんな気がしています。 

Katsuji