「宇田川源流」 香港で最も民主的な選挙といわれる区議会選挙での民主派の圧勝とアメリカの支持と習近平の次の一手
「宇田川源流」 香港で最も民主的な選挙といわれる区議会選挙での民主派の圧勝とアメリカの支持と習近平の次の一手
先週から今週にかけては書きたいトピックがたくさんある。昨日書いたのは中曽根首相の話であり、今日は、香港の選挙と民主派の話をする。それ以外にも、トランプ大統領のアフガニスタン電撃訪問も、イランやイラクのデモの話も、イギリスロンドンでのテロの話も、ウイグルの関する様々な事柄もすべて大きな話である。また先週は北朝鮮のミサイルが飛んでいる。GSOMIAの復帰後初めての話であるが、まあ、それだけ北朝鮮は日米韓の内容をかなり注目しているということになる。その間に日本の国会はずっと「桜を見る会」であるから、まあ、平和を感じるとしか言いようがない。もちろん、呆れて言っているのである。
坂本龍馬が、船中八策で国民議会の提案をした。そのことは有名で、日本の民主派の人々は坂本龍馬が封建制の中で民主的なことを見通していたというようなことを言う人は少なくない。しかし、その船中八策の内容を伝え聞いた高杉晋作は「これは国民がバカになったら国が滅ぶという政策ではないか。そんなことをして国を亡ぼすわけにはいかない。こんなことは私が認めない」と言い放ったという。つまり、坂本龍馬は「封建制度の終わりと民主主義」を見通していたが、高杉晋作は「民主主義が衆愚政治に変わり国家が悪態化する」という坂本龍馬の一歩先を見通していたのである。
今の日本を見ているとまさに「高杉晋作」の言葉が身に染みるのではないか。高杉晋作といえば、「三千世界のカラスを殺し、主と朝寝がしてみたい」という都都逸を作ったことで有名(そんなことで有名なのかという突っ込みが来そうである)が、この高杉晋作を見習った長州の人々は、帝国憲法を制定し、天皇陛下の主権を崩さなかった。馬鹿が出てきても国を滅ぼさないということになったのである。そのことから「国体」という言葉が出てくるのである。
民主主義と封建主義、共産主義、その政治システムには、すべてに弱点がある。完全なものなどはない。なぜならば政治の主体が人間であるからだ。人間が完ぺきではないので、結局はシステムも完ぺきではない。それをごり押しして権力者が守ろうとすればどうなるのか。中国がよい例となる。
香港区議選、民主派が圧勝 初の過半数、親中派惨敗 デモへ強硬対応に「ノー」
香港区議会(地方議会、18区で直接投票枠452議席)選挙は25日未明も開票作業が続いた。香港メディアによると民主派が圧勝し、1997年の中国への香港返還後で初めて過半数を獲得した。親中派は惨敗し、抗議デモに強硬姿勢で臨む香港政府と中国の習近平指導部に、民意が明確に「ノー」を突きつけた。
香港メディアによると、中間集計で民主派が253議席獲得したのに対し親中派は27議席にとどまった。選挙前の議席数は親中派が約7割で民主派が約3割だった。6月に抗議活動が本格化して以降、初の香港全域での選挙。投票率は前回を20ポイント以上上回り、返還後最高の71・2%となった。投票者数も前回の約147万人から倍増の約294万人となった。
香港政府トップの林鄭月娥行政長官は、デモ隊が掲げた「五大要求」のうち、「逃亡犯条例」改正案の撤回には応じたものの、警察の「暴力」を追及する独立調査委員会の設置など残りの要求には応じていない。さらに、10月には緊急条例を発動して立法会(議会)の手続きを経ずに「覆面禁止法」を制定するなど強硬姿勢を貫いてきた。(共同)
産経新聞 2019.11.25
https://www.sankei.com/world/news/191125/wor1911250003-n1.html
米人権法に香港デモ隊が感謝
【香港時事】香港政府は28日、米国の「香港人権・民主主義法」成立を受けて声明を出し「デモ参加者に誤ったシグナルを発するものだ」と批判した。同法について「香港と米国双方の関係性と利益を損なう」と断言。「極度の遺憾」を表明し強い言葉で反発した。
香港政府は中国政府の意向を受けた対応しかできない。声明は「香港の人権や民主とは無関係」と同法を突き放し「強烈な反対」を表明した。一方で、米国が従来、香港に認めてきた関税の優遇措置などを今後も維持するよう求めている。
対照的に、デモに賛同する市民からは28日、喜びの声が上がった。多くのデモ参加者が使うインターネット上の掲示板では、同法成立に関して「トランプ大統領と米議員に感謝する」「欧州諸国も同様の法律を作ってほしい」と相次ぎコメントが書き込まれた。同法成立への感謝を表す集会の呼び掛けも広がっている。 【時事通信社】
2019年11月28日 11時55分 時事通信
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-481479/
香港のデモが、香港理工大学の攻防を終えて、新たな段階に入った。香港行政と、中国共産党は、香港理工大学の攻防を行い、大学生を警察の武力で鎮圧したことによって、デモ隊との戦いは収まったかのように見えた。しかし、実際にデモというのは、そのデモの背景に多くの人がいるということになる。その「声なき声」をどのように「見るか」ということが大きな問題になる。
日本の安保騒動の時は、学生が国会周辺に集まった。実際に国会を取り巻いたのであり、当時の話を聞けば、国会からの「帰宅禁止命令」が出たという。最近の集団的安保などのデモとは全く人数が違う。何故だか主催者発表は現在の安保デモの方が多く発表されている。まあ、主催者発表などというのは少し下駄をはかせるのは普通なのであるが、しかし、あまりにも現実と差がありすぎれば、数字も数えられないレベルと思われてしまうものだ。
さて、「声なき声」を見るときというのは、当然に「デモの現場」ではなく「その周辺」を見るということになる。つまり、その周辺が「日常と同じ」なのか「行政に批判的」であるのかということになる。香港のデモの場合、香港理工大学の周辺に心配で見に来ている人が多数いた。つまり、デモそのものの成り行きが気になっていて仕事をして日常通りの生活をしている人が少ないということを意味している。そのことこそ、まさに「声なき声」つまり「デモ隊に対する同情が強い」ということになるのである。日本における集団的自衛権や沖縄の基地反対デモのように「迷惑そうな顔をして通過する人」が多いわけではないのだ。
そのように「デモに参加するわけではないが心情的に応援している人々」が多い場合、武力で鎮圧してしまうと行政に対する反発が強くなる。当然に「強者が弱者を踏みにじる」という構図が出てきてしまう。そうなれば「弱者に対する与力」と「より強い強者の援軍」ということを求めることになる。それは、そのまま「アメリカの人権法の歓迎」と「中国共産党への憎しみ」ということになる。
当然に「強制的な排除」ではなく「何らかの対話または政治的な解決」が必要ではなかったか。そのことができなければ、結局は「根本的な対立の解消」はないというと、このような「より強い援軍」ということから、徐々に中国本土にデモが拡散することになる。民主化を求める人は中国本土にも、また、各自治区にも様々存在することになる。
さて、習近平派、アメリカに反論すると同時に、香港を力で鎮圧するというような感じになってくる。その鎮圧をどのように行うのかということが、大きな問題になる。単純に「デモの代表者を逮捕する」というだけでは話になるものではない。香港の鎮圧は間違いなく、武力で鎮圧を始めれば最後は「力比べ」になってしまうので、最後は、どちらかがあきらめるか、あるいは戦争になるまでは終わらない循環になる。つまり、習近平はその方向で舵を切ったということになる。もちろん共産党は「デモ隊があきらめる」方向を望んでいたであろうがアメリカが人権法を成立させたことによって、アメリカも敵に回さなければならないということになったのである。
最終形態はどうなるのか、中国の国内でデモが頻発するのか共産党内で反習近平がクーデターを起こすのか、すべてを鎮圧し習近平が皇帝になるのかはよくわからない。しかし、そのことによって世界のパワーバランスが大きく変わるきっかけにこの区議会選挙の結果があることは変わりがないことなのではないか。