かがみの孤城
2017年1月、当時中学2年生だった我が子が自死(自殺)で先立ってから、1年と半年ほど経った頃でしょうか。
お姉ちゃん(長女)が何を思ってか貸してくれた書籍が、この『かがみの孤城/辻村深月著』でした。
~生きづらさを感じているすべての人に贈る物語~
--2017年啓文堂書店文芸書大賞受賞
--王様のブランチBOOK大賞を受賞
--第11回神奈川学校図書館員大賞(KO本大賞)を受賞
--埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2017の1位
--2018年本屋大賞 第1位
--第6回ブクログ大賞を受賞
書籍のキャッチコピーや、話題作であることを裏付ける上記ニュースなどよりも、私の心を最初に鷲掴みにしたのが、本書の装丁の凝り具合でした。
実際に目にするとわかるのですが、わずかに凹凸のあるイラストとフォントデザインがとても美しく良く出来ていて、そのナカミが気になる、借りたのでなければ、CDやDVDなどでいうところの“ジャケ買い”になったような一品。
出版社サイドがこれほどまでに手をかけて愛情を注ぎ込み出版するのには、それ相応の作品なのだろうと思ったからです。
そして表紙の女子中学生のイラストにも、亡き子を重ねて惹かれるものがありました。
ミステリーとはいえファンタジー要素も強いのかな。
ギチギチに硬いだけのストーリーではなく、かといって夢見がちの“おめでたい”だけのお話ではない。
後半からはスピード感あふれる描写で、文字を追って読んでいるだけのこちら側にも「ええええ!?」という驚きと胸が詰まるような臨場感をもって物語が迫ってくるのです。
主要登場人物七名は、学校で居場所をなくしたような似た境遇の学生たち。
我が子の場合は登校拒否こそしていませんでしたが、本人なりの悩みを抱えて思い詰めていたという状況は、物語の子供たちと同じなので、その点でも重ねて読んでしまうこともあり、また考えさせられることも多く、ラストの方はもう涙を拭うことも忘れ物語に入り込み、読み終えると…、途端に悔しくなりました。
この本を亡き子に読ませたかった…! と。
このお話にあの子が出逢っていたら、もしかしたら死なないでいてくれだだろうか、と。
……なんて。
こういうのもタラレバの一種なのでしょう。
でも本当に悔しくなりました。
本書は2017年5月に初版書籍発売。
我が子が先立ってから四ヵ月後でした。
*
なぜ今、この作品についてBlogで触れたのかと言いますと、ウェブ上にあるテレビ番組HPで一般からの書き込み板に投稿した私のコメントをピックアップして、うちに取材&弔問に来てくださったNHK(Eテレ)番組ディレクターさん方と、二度目にお会いした時、会話の中で『かがみの孤城』を持ち出して、私が熱く語っていたんですね(^^;)。
それを聞いたディレクターさんたちが本書を読み、その後、著者である辻村深月さんにコンタクトをとっていたようです。
そして今年2019夏の当番組で、辻村深月さんからHPに寄稿をいただくことができた、というお知らせがあったからです。
★辻村深月さんからの寄稿★
https://www.nhk.or.jp/heart-net/831yoru/diary/2019/diary001.html
(番組『#8月31日の夜に。』~生きるのがつらい10代のあなたへ )
まさか(間接的であろうと)こうした繋がりを持てるとは考えていませんでしたので、私は驚きと嬉しさと切なさでいっぱいになりました。
悲しいご縁ではありますが、我が子の自死があり、その後に繋がってゆく人の心と心、交流、さらには絆だったり、間接的にでも繋がりを持てたことで、今度はその繋がった誰かが公に向けて発信した言葉(コメント)であったりが、“今、まさに生きづらさを抱えている人々”に、良い意味で何らかのヒントや気づきをもたらしていくのであれば、それは願ってもない事ですから。
「今、これを読んでいる嵐の只中にいるあなたにも、どうかしがみつける何かがありますように。荒れた海を泳ぎ切って、どうかこちらの岸まで辿りついてくれますように」
辻村さんが言う「しがみつける何か」、先立った我が子にもあったはずなのになぁと。
それにしても、生きているうちに我が子にも、もたらしてほしかったな~~(-_-;)。
(タラレバであれ)今更ながら本当に悔しく思います。
それほどに胸に迫ってきた小説でした。
https://www.poplar.co.jp/pr/kagami/
光の加減で、タイトルの『かがみの孤城』の色味が変わるのも美しい。