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酒場BETTAKO

BETTAKO -其の142-

2019.12.02 22:22

薩摩紀行の最終日。

東京・大阪から大隅に集い、天文館という

ネオンの明かりと、人達の熱量が灯り続ける

街とは異なる鹿児島の地、大隅の片田舎。

久々にみんなと、そして農家と共に元気づける

交流がもてた、今回の薩摩紀行。


楽しい事もあれば、辛い事もある。

芋蔓のように、根強く頑張れば、辛い時が

多くても、ほんの微な楽しさの明かりに

勇気づけられ、歩み続けられる。


【たかが唐芋、されど唐芋】15年前…。

その言葉を教えてくれた。

たかが…、されど…、各々に当てはまる言葉、

実に深みのある言葉である。


扉の向こうは?

大した奥行きではないが、重機で開けられた

空間ではない。聞けば人の手によって掘られた

その穴は、さつま芋達に取って、心地よい

のだろう。


虫が苦手な人は入れないその掘り穴の中には、

多くの自然界の命達が、出荷を待つさつま芋達と

共存していた。


虫達も突然扉が開けられ、驚いたのだろう。

慌てて身を隠そうとする。

素晴らしいね。この自然の湿度…と室温は。


この農家…自分にとって衝撃が走った農家。

今まで見てきた、焼酎原材料用のさつま芋とは

異なる…根底から覆された驚きの農家との出会い

それが、16年前の鹿児島だった。


今だからこそ、いろんな知識と技術をシェアし、

新しいチャレンジを繰り返す農家であるが、

古い思想と新しい思想が、うまく折り合いながら

新品種の培養技術が向上している。


さつま芋にも、先祖代々はいる。

先祖から受け継がれた、遺伝子を基から父と母が

生まれ、そして子が生まれ、その子から再び、

新しい生命が生まれる。

現状登録されているだろう、約49品種のさつま芋

食用や焼酎の原料芋として、多くの人達の手で、

新たな作品となっている。

自然と戦い、苦労を重ね、そして今がある。

たかがさつま芋でしょ? その…たかがでは

あるが、多くの技術と苦労が詰め込まれている。


どんなに、焼酎の蔵元が、繁華街で有名でも、

地元では普通の産業会社である。

焼酎イベントや、焼酎を取り扱う紙媒体、

飲食店を多く見てきたが…。

徐々に違和感を感じ始めた2006年頃。


蔵元がイチバン?

馬鹿言ってじゃねぇーよ。蔵元は所詮ウワモノ。

基礎があってこそ、ウワモノがしっかりと

するものだろうよ。

じゃ基礎ってなんだよ? 農家や蔵元を支える

多くの人達の事だろうよ。


人より自分という、みっともない酒業界は

未だ続く。

銘柄を絶やさないためにも、買ったり飲んで

支援する? おいおい…お前さん何言ってるか

わかるかい?

鹿児島県だけでも、約112の蔵元がある。

ひとつの蔵元が平均5銘柄あったとしたら?

何ぼよ?


鹿児島県だけでも、大凡560名柄。

それが宮崎や大分、熊本、長崎、福岡、伊豆七島

全て合わせれば、無数の銘柄があるってもんも。

それら全部の銘柄を買って、飲んで支援

するのかい? 綺麗事だけじゃ済まされないよ。


蔵元にお世話になった?

何言ってんだい?蔵元は、神様でも何でもない。

じゃBETTAKOさんは、蔵元をどうみてるんすか?

蔵元としては認識してるけど、崇拝はしてないね。

口に入れるモノを作る、いわば同業者かね。

思いを込めた作品の裏には、それを支えている

産業が必ずある。その人達の協力があって、

作品となる。その作品を見抜き、更に磨きをかけ

手間をかければ、更に美味しくなる。

そう考えている。だから、蔵元がどうこうという

観点は、自身は持ち合わせてない。


素材のハッキリしているお酒は簡単だよね。

温冷のメリハリが分かりやすい。

でも、焼酎のように蒸溜酒は、難易度が激変する。

水質、扱い品種芋、麹、麹米…などなど、


素材が気化され、冷却され、液化する。

その中から、本来の旨味だけを、抽出するのは

誰もができることではない。

だから、蔵よりも、末端の生産者が自分にとって

大切な産業である。

焼酎を学びに来る同業者が時折いる。

教えてほしい意欲。

重々わかるが、焼酎は浸かれば浸かるほど、

沼になり迷い込む。

故に、辞めた方がいい…そうお勧めをしている。

片足突っ込んだ位が、普通の飲食店には妥当。


どんなに栗黄金や安納芋を用いて焼酎を

作ったとしても、あぁー。安納芋の味が強調

してるね。この安納芋の味を引き立たせているのは

白麹と、この甘味はヒノヒカリかな?


そんな事、焼酎を取り扱う酒屋、飲食店、

出版社付随のライターや、焼酎アドバイザーから

聞いた事も、問われた事も今までない。

それほど、焼酎は難題と繊細の紙一重の酒

なのである。程よく、楽しく飲めば旨いのが焼酎。

自分は、解析する側なので、楽しく飲める…

そんな機会が少ない。それが焼酎屋としての

重圧なのだろう。