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のらくらり。

紳士のたまご

2019.12.03 23:20

子ども時代の三兄弟。

ルイスがイートン校入学を決意する話。

寮制度は都合よく捏造してる。


綺麗に磨かれた革靴で足を踏み入れた先は、ゴシック様式が美しいイートン校自慢の礼拝堂だった。

重厚な扉を開ければ色とりどりのグラスを通った光が眩しく視界を覆っていく。

祈りの時間でもないのにまばらにいる黒い燕尾服を着た学生たちは、よほど信仰心が深く根付いているのだろう。

静かに中に入ってきたルイスとアルバートには目もくれず、ただひたすらに前を見据えて背筋を伸ばしていた。


「緊張しているのかい?ルイス」

「アルバート兄様…いえ、そういうわけではありません。ただ、僕がいた教会の礼拝堂よりもずっと立派なので、少し驚いています」

「ここは特別だからね」


英国紳士を育てるという名目上の、人の上に立つ人間を育て上げるための機関だ。

神に祈りを捧げたくなるほど気狂うこともある。

元より神は信じないアルバートにはその信仰心を理解することなど出来ないが、それはルイスも同じだった。

実質のない何かに縋るよりも、最愛の兄がいればそれだけで良いと盲目的なまでに信じている。

今ではその実兄だけでなく、新しく兄となったアルバートもその対象に含まれていた。

この時代において神を信じないという人間は稀有なのだろうが、アルバートはともかく、ルイスは身近な兄二人が神を信じていないのだから自分が特異だということに気付いていない。

だがこの子どもはそれでいいのだと、アルバートとウィリアムの二人はそう考えていた。


「そろそろ時間だ。ウィリアムもじきに来るだろう」

「はい」


美しいステンドグラスを目に焼き付けて、再び礼拝堂の外に出て懐中時計を見る。

この秋からイートン校に通い始めたウィリアムとの待ち合わせ時間までもう僅かだ。

モリアーティ家次男に成り代わり、全寮制のこの学校に入学することが決まった時点で彼が屋敷を離れることは分かっていた。

理解の良いルイスは表立って悲しむことも拒否することもなかったが、それでも寂しそうに表情を落ち込ませることは多々あった。

ウィリアムとしても、半身であるルイスを屋敷に置いていくことに抵抗がなかったわけではない。

だがアルバートが伯爵位を継ぐための手続きとして、しばらく休学といった形で屋敷に残ることを選んでくれたおかげで、ひとまずは入寮することに決めたのだ。

アルバートにならば大事な弟を任せるに値すると、ウィリアムはそう判断している。

事実その判断は真っ当で、仮住まいで三人過ごした日々はルイスの警戒心を十分に解いてくれた。

甘え方を知らないまま成長してしまった不器用な弟は、包容力があり頼もしい兄によく懐いたのだ。

それに一抹の不安を抱えることもなく、ウィリアムはイートン校への入学を首席で決める。

何があろうと可愛い弟の一番は自分だという揺るぎない自信があるからだ。


「兄さんと会うのはひと月ぶりですね。楽しみです」


ルイスはシルクハットを被った頭を上げて、大きな瞳を微笑みで緩ませながらアルバートを見る。

聞けばこんなにも長い間、ウィリアムと離れて過ごしたことはないという。

アルバート自身は両親や実弟と顔を合わせる屋敷よりも寮生活の方がよほど気楽で好ましかったのだが、ルイスにとってはそうではないのだろう。

きっとウィリアムも同様だ。

何事も器用にこなすウィリアムは卒なく過ごしているのだろうが、ルイスは隠そうにも隠しきれていない寂しさが滲み出ていた。

アルバートと過ごす時間はまだ気が紛れるのだろうが、アルバートもやらなければならないことは多分にある。

ゆえにどうしてもルイス一人で過ごす時間の方が多くなったが、それでも気丈に振舞ってはアルバートの、引いてはモリアーティ家のために在るよう常に懸命だった。

そんな生活の中でようやく時間が取れた今、ウィリアムが過ごすイートン校へ面会に来たのは正解だったと、アルバートは新しく出来た可愛い弟に優しく微笑んだ。


「あ、兄さん!」

「ルイス、久しぶりだね。元気だったかい?」

「はい!兄さんもお元気そうで嬉しいです!」

「アルバート兄さん、お久しぶりです。家の方は問題ありませんか?

「あぁ、万事滞りなく進んでいるよ。君の方はどうかな?」

「今のところは順調です」


燕尾服に黒いガウンを羽織ったウィリアムが、思わずと言ったように駆け寄ってきた弟の体を抱きとめる。

線の細い体は記憶の通り細いままだ。

距離が出来てしまうルイスのハットを下ろすと、現れた金髪が光を浴びて輝いている。

自分のものとよく似た髪は空気にまぜられてふわふわと舞っており、頬をくすぐる感触がどうにも懐かしくて心地よかった。

ひと月ぶりに会う弟は変わらず可愛いままだ。

ウィリアムがルイスの細い体を掻き抱く力は自然と強くなっていた。


「ルイス、心臓の調子はいいのかい?」

「何ともありません」

「良かった。アルバート兄さんに迷惑はかけてないかな?」

「だ、大丈夫です」

「はは、大丈夫だよ。ルイスはよくやってくれている」

「兄様」

「そうでしたか」


アルバートの言葉を聞いて嬉しそうに目を見開くルイスの頭を、ウィリアムは堪能するように優しく撫でる。

同時に小さな頭を抱き寄せて、痛々しい火傷の跡を慈しむようにキスをする。

冷たくなってきた空気で少しばかり冷えた体をマントで覆い温めるように抱きしめれば、ルイスの方もウィリアムの背に腕を回してくれた。


「ちゃんと頑張れているようだね。さすが僕の弟だ」


ウィリアムは寂しさを押し殺して頑張ってきたであろうルイスを労う。

ルイスの性分は今までいつも一緒にいたウィリアムが一番よく理解している。

だからこその労いの言葉だ。

誰より愛しい兄の言葉と抱擁に、ルイスは今まで感じていた寂寥感が吹き飛ぶような心地がした。

ウィリアムの弟であることがルイスの誇りであり、彼に相応しい存在でありたいと強く思う。

今は兄に守られてばかりだが、彼に認められることできっと理想の自分になれると思うのだ。


「…はい。僕、頑張ってます」

「偉いね、ルイス」

「さて、風も吹いてきたし一度ウィリアムの部屋に行こうか。ウィル、案内してくれるね」

「はい。行こう、ルイス」


仲睦まじい弟たちの再開を微笑ましく見守っていたアルバートは、風に揺れたウィリアムのマントを見て声をかけた。

自分とウィリアムはともかく、循環が不安定なルイスを長時間この空の下に置いておくわけにはいくまい。

アルバートはウィリアムの自室があるであろう、敷地の中央に位置しているカレッジの方を見た。

それに続くようにウィリアムは手に持っていたハットをルイスに被せ、そのまま手を引いて歩き出す。

イートン校に通っている二人の兄とは違い、敷地内の地理に詳しくないルイスは促されるまま足を進めた。

視線の先では二人の兄が何やら学校生活についての話を進めている。

就学したことのないルイスには分からないことも多く、会話に混ざることは早々に諦めて周りの景色を眺めることにした。

そうして燕尾服を品良く着こなす学生とすれ違うたび、こいつらもゆくゆくは大嫌いな貴族社会を担う人間になるのか思うと気分が悪くなったが、前には敬愛するウィリアムとアルバートがいたため何とかやり過ごすことが出来た。


「兄さんの部屋は一人部屋なんですね」


案内されたウィリアムの部屋はカレッジの中でも特別のようで、左右ともに部屋はなく独立した専用個室だった。

浴室やトイレ、洗面台は勿論、キッチンの用意もあり、来客にも対応できるよう間取りは広く取られている。

寮といえば相部屋という印象があったルイスは思いのほか広々とした部屋に、モリアーティの名が効いているのだろうかと推察する。


「この中央寮は成績優秀な人だけが住めるんですよね?」

「あぁ、ウィルの成績ならこのカレッジに住むことは確実だったからね。予め庶務に一人部屋を用意しておくように伝えておいたんだよ」

「そうだったんですか。さすが兄様ですね」

「兄さん、ルイス、紅茶の用意が出来ました」


ソファに腰掛けていた二人の元に、ポットとカップを持ったウィリアムがやってくる。

綺麗な飴色をした紅茶を一口飲んで、ほうと安心したようにルイスは息をついた。


「兄さんが一人部屋で良かったです。もし同室の人がいたら、その人が兄さんに相応しい人か見極めなければならなかったので」

「ふふ、ルイスは厳しいなぁ」

「厳しくないです。兄さんと住居を共にするなら相応の人でなければなりませんから!」


両手でカップを持ち、力強くウィリアムに言い募る姿は実に弟らしかった。

ルイスがそう考えるであろうこと、そしてウィリアムがルイス以外の人間を生活空間に置くことを嫌うだろうと予期していたアルバートは、内心で自分の判断を褒めながら紅茶を飲む。

さすが兄弟だけあって、ルイスが淹れるものとよく似た風味が出ているそれはアルバートの気持ちを落ち着かせてくれた。


「あ、そうだ。兄さん、こちらをどうぞ。僕が新しくブレンドした紅茶です。アルバート兄様にも気に入ってもらえたので、兄さんのお口にも合うといいのですが…」

「どれどれ…うん、いい香りだね。明日のティータイムに飲ませてもらうよ」

「是非!あとこちらはいつもの茶葉です。そろそろなくなる頃かと思い、持ってきました」

「ありがとう、ルイス」


他愛もない会話を楽しむ弟たちを見て、アルバートの目と心は随分と安らいだ。

殺伐とした毎日がじんわりと潤っていくように思う。

同じ目的を持つ仲間でありながら家族でもあるこの関係を、アルバートは特に有難いと感じている。

胸を張って家族だと言える弟たちを、アルバートは気に入っているのだ。


「ところでウィル、来年度はルイスもここに入学させようと思うけどいいね?」

「はい、勿論」

「え?僕も学校に行くんですか?」


優雅に紅茶を飲みながら会話をする兄たちに、ルイスは驚いたように声を出す。

モリアーティ家次男に成り代わっているウィリアムはともかく、肩書上は単なる養子に過ぎないルイスはこのまま屋敷の執務を担うはずだった。

少なくともルイスはそう考えていた。

まして使用人の雇用を避けている現状、アルバートが復学してルイスも就学してしまうと屋敷の管理をする人間が誰もいなくなってしまうのだ。


「あぁ。ここならウィルも僕もいるから寂しくないだろう?」

「で、でも僕にはイートン校に通えるだけの学はありません」

「大丈夫だよ。夏までに僕とアルバート兄さんで勉強をみてあげただろう?」

「足りない分は復学するまでに僕が教えてあげるから安心するといい」

「ですが、僕が学校に行ったら屋敷を守る人間がいなくなりますよ」

「ロックウェル伯爵家に一時お願いすればいいだけの話だ。僕がイートン校を卒業すれば大学ヘは屋敷から通えるしね」


何でもないように言うアルバートとにっこりと笑うウィリアムを見て、ルイスは少しの欲が出た。

勉強することは嫌いではない。

博識で聡明な兄と暮らしてきたのだから、知らないことを知ることが出来るのは貴重な機会だということも理解している。

自分の世界の中心は揺るぎなく二人の兄で、それが変わることなど有り得ない。

だが見聞を広げる意味で学校に通うというのは、学のない者にとっての憧れなのだ。

自分にはその資格はないと考えていたし、このまま兄の役に立てるのであれば屋敷の執務に精を出すことに何の抵抗もなかった。

それでも許されるならばアルバートとウィリアムが通ってきた道をなぞりたいと思うのは、ルイスが弟気質であるがゆえなのだろうか。


「それとも、ルイスは僕と同じ学校に行くのは嫌かい?」

「ウィリアム兄さん…いえ、そういうわけではなくて、その、本当に僕が行ってもいいのか…」

「構わないよ。むしろ、養子とはいえ今や君はモリアーティの人間だ。伯爵家に在る以上は一定の学歴を持っていてもらわなければ困る。先のことはさておき、伯爵家の名に恥じぬよう学校には行っておいて欲しいのが当主である僕の意見だ」

「アルバート兄様」

「兄さんもこう言ってくれている。ルイス、色々な知識を身に付けておけば、いつかきっと君の役に立つ」


燕尾服姿のウィリアムを見て、ルイスは同じ服を着て彼の隣に立つ自分を想像する。

きっと今の自分が想像出来ないくらい、誇らしくそこに立つのだろう。

何よりこの二人の兄は、金を積んでルイスを学校に入れるのではなく、ルイスの学力を信じた上で入学する未来を信じてくれているのだ。

ルイスが自ら学びを深め成長する糧となるよう入学を勧め、そしてモリアーティ伯爵家の名に相応しく在るよう願っている。

それが想像するだに嬉しくて、気分が高揚してきてしまう。

自然と上を向いた口角に気付いたウィリアムは、ルイスの頬を柔らかく擽ってから笑いかけた。


「来年、ルイスが入学してくるのを待ってるからね」


アルバートも同様にルイスの頭を撫でて、僕も待ってるよ、と声に出す。

誰より敬愛する二人の兄に期待されては、弟として応えないわけにはいかない。

ルイスは決意を新たにするように深く頷いてからウィリアムとアルバートの顔を見て、そしてウィリアムが着ている燕尾服にじっと視線を注ぐ。

いつか自分も兄のようにこの燕尾服が似合うイートン校の学生になるのだと、誰でもないこの兄たちに誓いをたてた。




(僕が身に付けた知識は、お二人の役にも立つでしょうか)

(どうしてそんなことを聞くんだい?)

(僕は僕のためになる知識よりも、兄さんたちの役に立つ知識が欲しいんです)

(ルイス)

(兄さんの役に立つ知識であれば、それが僕にとって役に立つものなんです。お二人の役に立つ知識を、僕はこの学校で学ぶことが出来ますか?)

(…学べるよ。ルイスにその気があるなら、きっと学べる)

(兄様)

(僕もそう思う。ルイスならここで身に付けた経験を駆使して、僕たちの目的のために昇華してくれると信じてる)

(兄さん)

(ありがとうルイス。君の気持ちが嬉しいよ)

(一緒に頑張ろう、ルイス)

(…はい!僕、頑張ります!)




「兄さん兄さん!僕、イートン校に合格しました!9月からは兄さんの後輩になれます!」

「おめでとう、ルイス。頑張ったね」

「って、あれ?兄さん、荷物まとめてどうしたんですか?」

「学年が上がると棟が変わるんだ。だから引っ越しの準備をしてるんだよ」

「そうなんですね。僕も手伝いますよ」

「ありがとう。終わったら合格祝いに兄さんと三人でケーキでも食べに行こうね」

「はい!」


「…兄さん。兄さんの新しい部屋ってここですか…?」

「そうだよ。あ、その荷物は向こうに置いてもらえるかな」

「あ、はい…あの、兄さん。ベッド、二つありますけど」

「うん。今年から相部屋になるからね、一応二つ置いてもらってるんだ」

「あ、相部屋ですか!?兄さん一人部屋じゃなくなるんですか!?」

「そうだよ」

「だって、以前アルバート兄様が庶務に伝えておいたって…」

「僕が相部屋を希望したからね。兄さんの口添えで割合ランクの良い部屋を空けてもらえたよ」

「え、兄さんが希望したんですか!?兄様も許可を!?だ、誰と相部屋になるんですか!?」

「誰って…」

「兄様はちゃんと相手方のことを知ってるんですか!?知った上で了解を得てるんですか!?」

「了解も何も、兄さんの口添えがなければ彼と相部屋にはなれなかったからね。相手が誰なのかも知ってるよ」

「そ、そんな…!」

「ルイス?どうかしたかい?」

「…誰ですか?」

「ん?」

「兄さんと同室になる人は誰ですか…?」

「ルイス、少し落ち着こうか。可愛い顔が台無しだよ」

「笑い事ではありません兄さん!これは一大事なんですよ!誰と相部屋になるんですか!?僕がこの目で見定めなければ!!」

「ウィル、ルイスは来てるかい?」

「あ、兄様!」

「こんにちは、兄さん」

「ご報告が遅くなりました、兄様。無事にイートン校に合格しましたので、9月からこちらに通うことが出来ます」

「良かったね、ルイス。僕のところにも報告が来ていたから、寮の部屋割りについては僕の方から口添えしておいたよ」

「その件ですが兄様、ウィリアム兄さんの部屋が相部屋になると聞いたのですが…」

「あぁ、その方が良いかと思ってね。ルイスもそう思うだろう?」

「ぼ、僕はさっきそのことを知ったばかりで…いえ、兄様!」

「何だい?」

「いくらアルバート兄様が認めた人間であろうと、僕の目に適う人間でなければウィリアム兄さんとの相部屋を認めることは出来ません…!」

「…ん?どういう意味かな?」

「兄さんに相応しい人間でなければ、同室なんて以ての外です!僕は認めません!」

「…ウィル、もしかしてルイスは何か勘違いをしてるのかな?」

「えぇ、そのようで」

「何でお二人して笑ってるんですか!ウィリアム兄さんの一大事なのに!」

「はは、悪いねルイス。つまり、君が認めた相手でなければウィリアムの同室者としては失格だと、そう言いたいのかい?」

「はい!」

「ふっ、くく」

「に、兄様…?」

「ふふ、ねぇルイス。僕が希望して、アルバート兄さんが認めてくれた相手なのに、ルイスはそれを否定するのかな?」

「そ、そういうわけでは…で、ですが兄さんの同室者である以上僕も関わることになりますし、僕にも紹介があって良いですよね!?」

「そうだね。でもルイスはよく知ってるんじゃないかな、彼のこと」

「僕がよく知ってる…?」

「うん。僕の次に彼のことを知ってるはずだよ」

「ですが、このイートン校の知り合いなんて兄さんたち以外にいませんけど…」

「今はそうだね」

「…?」

「だってまだ入学してきてないからね。ルイス、9月に入学するんだろう?」

「え?」

「僕の同室者はルイスだから。まだここの学生じゃないよね」

「え」

「先週の頭には伯爵家当主である兄さんのところにルイスの合否通知が来ていたからね。兄さんが庶務に口添えしてくれたんだよ」

「…え」

「本当なら学年が違うと同室にはなれないんだが、向こうが勝手に伯爵の名に怯んで気を利かせてくれたんだよ。僕は別に権力を駆使するつもりはなかったんだけどね」

「兄様…」

「でも困ったな。せっかく良かれと思って行動したのに、肝心のルイスに気に入ってもらえないなんて。今からでもウィルの個室を準備するよう伝えてみようか」

「え、や、兄様!」

「ねぇルイス。ルイスは僕が同室じゃ嫌なのかい?」

「や、嫌じゃないです嬉しいです!」

「でもさっき散々認めないって言ってたよね?」

「ち、違うんです、僕が勘違いしてました!ごめんなさいお二人とも!」

「ふ、あははは!全く可愛いな、ルイスは」

「ふふ、僕こそごめんね。からかいすぎたかな」

「…僕の部屋、本当に兄さんと同じなんですか?ここ、成績優良者だけの棟ですよね?」

「詳しい成績は聞いてないけれど、向こうが勝手に手配したんだから気にしなくていいだろう」

「そういう訳だから、9月からはよろしくね、ルイス」

「は、はい兄さん!僕嬉しいです」

「僕も嬉しいよ。早く9月が来ればいいのにね」