【R18】"可愛がってもらっておいで"
ロンドンの屋敷で長兄のアルバートと末弟のルイスは夕食とシャワーを終えてのんびりと過ごしていた。
ソファに腰掛けて資料に目を通すアルバートの隣に座り、ルイスも読みかけの本を読んでいる。
毎週末の恒例ではあるが、生活の拠点がダラムであるルイスと次兄のウィリアムはアルバートに会いにロンドンまでやってくる。
だが今晩は関連大学の教授が集まるパーティに参加するとのことで、ウィリアムは今この場にはいないのだ。
今頃はまだ立食形式で学生指導に関して話に花を咲かせているのだろうか。
集中力が切れてきたルイスは文字を追っていた顔を上げて、ふと実兄の顔を思い浮かべた。
穏やかに微笑みながら楽しんでいるのかもしれないが、疲れていなければいいと思う。
隣に座っているそんなルイスの様子に気が付いたのか、アルバートも資料を机の上に置いて彼を見た。
「ルイス、そろそろ休むかい?」
「え?いえ、大丈夫ですよ」
ウィリアムが帰ってくるまで待っているつもりだと暗に伝えるが、確かに手持ち無沙汰になっているのも事実だった。
だが今日はアルバートにも起きていてほしい。
ここ数日ばかり各々が忙しくしており、久々に三人揃う夜なのだ。
今日を逃しては次にいつゆっくり夜を過ごせるか分からない。
アルバートとともに過ごす時間を自ら無くしてしまう愚かなことを、ルイスは絶対にしたくなかった。
「兄様はお疲れですか?もし良ければ眠気覚ましに紅茶を淹れてきましょうか?」
「いや大丈夫だよ。まだ眠たくはないし、せっかくルイスがいるからね。でも少々飽きてきたし、資料に目を通すのは終わりにするとしよう」
「そ、そうですか」
仕事で使うという資料に目を通すアルバートの邪魔をしないよう、だがせめて隣にいられるよう手頃な本に目を通していただけのルイスは瞳を輝かせた。
ようやくアルバートの意識が自分に向けられると思うと嬉しさを隠しきれない。
ウィリアムとは常に一緒にいるが、アルバートとは短い時間だけしかともに過ごせない。
ルイスにとってのアルバートはウィリアムとは同じようで違う感情を抱く特別な人物であり、大切で愛しい兄なのだ。
それを知っているアルバートは頬を赤らめて表情を明るくしたルイスの髪を撫でる。
たまにしか会えない可愛い弟はやはり健気で思慮深く、心地よくアルバートの気持ちをくすぐってきた。
「では兄様、ウィリアム兄さんが帰ってくるまでもうしばらくここで過ごしていても構いませんか?」
「あぁ。今晩は久々に三人揃う日だからな」
「はい!」
そう言ってアルバートの腕に両手を回して抱き着いたルイスは至極機嫌が良さそうだ。
鍛えてある腕は頼もしく、シャワーを終えた体からは清潔感のあるシャボンの香りが漂ってくる。
肩に顔を押し付けるようにアルバートの体温を感じているルイスは、こんなにも彼に近づいたのはいつぶりだろうか、と過去の記憶を振り返った。
ルイスの記憶が正しければ、恐らくはひと月は経っている。
それだけの期間、アルバートに触れていないしこうして過ごすこともなかったのだ。
ウィリアムが傍にいたとはいえ、寂しくないはずがなかった。
優しい兄を見上げてその整った顔をじっと見つめれば、甘やかすように色を溶かした瞳で返される。
「…アルバート兄様」
「今日のルイスは普段と違うね。もしかして寂しかったのかい?」
「そういうわけでは…子どもじゃあるまいし」
「そうかい?私は寂しかったよ」
「え?」
「ここしばらくルイスに触れられなくて、君の肌が恋しかった」
アルバートは目を見開いた弟の顎に手をかけ、蜂蜜を煮詰めたようなカラメル色をした瞳を覗き込んだ。
視線を遮る眼鏡をそっと外して机の上に置けば、より澄んだ瞳が目に入る。
舐めてみたらきっと甘いだろうその色は、はっきりとアルバートの顔を映していた。
思いがけない兄の言葉に呆けたように彼を見上げていたルイスがその意味を理解したとき、薄く染まっていた頬がまたも色濃く赤を灯している。
ルイスは元々人形のように綺麗な顔をしているが、こういった初々しい反応を見るとやはり可愛いという形容詞の方がよく似合う。
それはアルバートだけでなくウィリアムも同様の意見を持っていた。
「兄様…」
アルバートの右腕を抱いていた両手はそのままに、ルイスは精悍な顔をしている彼を見る。
確かにアルバートとはしばらくそういった意味で触れていなかったし、ルイスとしても二重の意味で寂しさが募っていた。
それに気付きつつ感情を押し殺していたのだが、つい今朝方のウィリアムの言葉が思い出される。
列車の中で囁かれるように伝えられた助言は、今この瞬間にこそ役立たせるべきではないだろうか。
「…ウィリアム兄さんが、アルバート兄様に可愛がってもらっておいでと言っていました」
「…ほう、ウィリアムが」
「…はい。僕も、言葉の通りにしてほしいです」
「私に可愛がってもらいたい、と?」
ルイスはこくり、と頷くことで返事をした。
この末弟がしばらくの間、アルバートに抱かれていないことは当然ウィリアムも知っている。
常に抱かれていないと満足できない淫乱のはずもないが、基本的にルイスはウィリアムとアルバートに対しては献身的であり依存的だ。
セックスせずとも触れ合うだけで十分満たされるのだが、最近はアルバートとは抱き合うどころか手に触れることさえなかった。
さぞかし彼に飢えているだろうと簡単に予想は付く。
だからこそ今日というタイミングを逃さないよう、ウィリアムはからかいながらも可愛い弟に助言をしたのだ。
きっとルイスのことだから、変に遠慮を重ねて素直に甘えられないだろう。
そんな弟の背中を押す意味で、アルバートもルイスの誘いを待っているはずだと伝えてあげたのだ。
同じ人間を愛した者同士、ウィリアムにはアルバートの考えなど手に取るように理解出来る。
「随分と魅力的なお誘いだね、ルイス。誰に教わったのかな?」
「…ウィリアム兄さん、です」
「それを聞いて安心したよ」
ルイスに知識を教え込む相手はウィリアム以外に存在しえないことなど知っているが、恥ずかしそうにしながらも懸命に自分を誘うルイスの姿があまりにも可愛くてその口から答えを聞きたくなった。
当の彼は明らかに羞恥に満ちた表情だが、視線を逸らさず真っ直ぐにアルバートを見ている。
控えめな弟が自ら可愛がって欲しい、と要望を口にするほど自分に飢えているのだと思えば気分が良い。
アルバートは瞳を細めてルイスの右頬に手をやった。
「ならばウィリアムの言葉通り、久々の君を堪能させてもらおうか」
「…アルバート兄様」
ルイスが眉を顰めたのも一瞬のことで、長く伸びた前髪を掻き分けて爛れた皮膚にキスをされて囁かれれば、脳内はアルバートで一杯になる。
アルバートの声はゆっくりと染み込むようにルイスの中へ浸透し、まるで情事を思い出されるような甘さを含んでいた。
うっとりとした瞳でアルバートを見上げたルイスは僅かに口を開く。
「ん、ふっ…ん、ん」
白い歯と赤い舌に誘われるまま、アルバートは薄くとも弾力に満ちたその唇へ覆い被さった。
滑らかな唇の感触は触れるだけでも満足いくものだったが、特に抑える必要のない欲望のまま、アルバートは軽く唇を舐めるだけにして開かれた口内へと舌を進めていく。
熱い口腔内では待ちかねていたようにルイスの舌がアルバートのものに触れてきた。
言葉だけでない積極的な様子がアルバートの欲を更に煽る。
しばらく互いの舌を絡め合わせていると、ルイスはアルバートの腕に回していた両手を彼の肩に添える形で姿勢を変えた。
そうしてルイスの息が続くまで唇を重ねながら、アルバートはソファの上に細身の体を押し倒す。
「…っは…ぁ…に、兄様、ここでは…」
「どうして?もう我慢できないだろう?」
「で、ですが、ソファが汚れてしまっては困ります」
「汚さなければいいだろう。もし汚れても私は構わないしね」
「に、兄様」
上質なソファに優しく押し倒されたルイスが兄を見上げて抗議しても、聞き入れられる様子はなさそうだ。
潔癖症でイレギュラーを好まない彼が、誰もが出入りしているこの場所で情事に及ぶことを許すとは想定外だった。
どうしたって汚れてしまうし、日頃はモランやフレッドもこの場所で過ごしている。
ルイスとしても落ち着かないし、アルバートの寝室で彼の香りを感じながら抱かれる方が安心できる。
「ウィリアムもじき帰る。出迎えはしたいだろう?」
「それはそうですが…」
「ルイスも、移動するまでの時間を我慢できないはずだよ」
「ふっ、ぁん」
後のことを考えて気がそぞろになっているルイスを見て軽く笑い、アルバートは細い首筋へと顔を埋めた。
音を立てて舐めるだけでは気を逸らせないことは承知で、同時に右手で胸元を撫でては淡く主張している突起に指を押し当てる。
指先で捏ねるように刺激をすればすぐに硬く指を押し返される。
痺れるような甘い感覚に、ルイスもたまらず瞳を閉じて感じるままに声を上げた。
そんな弟の様子に気を良くしたアルバートは指で突起を弄りながら、もう片手でシャツのボタンを外していく。
ボタンを全て外してから勢いよく前を肌蹴させれば、アルバートが弄っていた片側だけの突起が赤く染まってツンと立ち上がっていた。
白い肌の中でも一際美しく映えている。
「おや、こちらだけが可愛く主張しているね。とても美味しそうだ」
「ん、兄様…」
「だがルイスは寝室に移動したいんだったな?では今から移動しようか?」
「…兄様、意地悪です」
もうここで良いですとばかりにアルバートの頭に腕を回し、ルイスはやや不満げに言葉を出した。
自分で焦らしておいてよく言うものだと思うが、久々の愛撫で簡単に流されてしまったのはルイス本人だ。
顔を赤くしながらアルバートを見上げ、少しだけ首を伸ばして高い鼻先にキスをした。
「もう、ここで抱いてください」
「ふふ。では汚さないよう注意しなければ、な」
「んぁ、ふ、に、兄様、ぁ」
言質を取ったアルバートは意気揚々と手を動かして、もう片方の突起に直接触れた。
段々と芯を持って立ち上がるそれを指先で感じ、先ほどまで弄っていた突起には唇で吸い付いてみせる。
少しだけ強めに爪を立てたり噛みついていると、白い体が波打つように震えては吐息のような声が聞こえてきた。
ルイスは胸の尖端を良いように弄られ、腰の奥から沸き起こる疼くような快感に気付いていても、瞳を閉じてただ身悶える。
唇を噛みしめないのは今まで散々ウィリアムとアルバートに指摘されてきたからだ。
傷が付くだけでなく、二人の兄から声を聞かせてほしいと散々言われてきた成果である。
羞恥は残るが声を出した方が余計なことに意識を取られず快感が増すと、そう教えてくれたウィリアムの言葉をいつも実感している。
今日も声を我慢せず漏れ出るままに口を開けば、全身が熱っぽく快感に満たされる。
そんなルイスの体の中心を、アルバートは己の太腿でぐりぐりと擦って刺激を与えてやる。
胸への刺激で少しだけ硬く触れていたルイスの性器が、アルバートのおかげで更に硬度を増していく。
ルイスは硬くなっている自身に気付き腰が引くが、それに勘付いたアルバートが追い詰めるようにより強く足を押し付けてきた。
元よりソファに押し倒されて逃げ場などないし、気持ちが良いのは確かだ。
ルイスは抵抗を諦めて、アルバートから与えられる胸と性器への愛撫を感じるだけにした。
「ん、ゃ、にぃさま、僕、もう…」
「イきそうかい?」
「ぁん…は、い…」
「ならやめようか」
「ふ、ぇ?」
足の間にはアルバートの体があるため、もじもじと動いてしまう下半身を隠すことも出来ない。
胸への刺激だけでなく揺れ動く体の中心を逞しい太腿で擦られては我慢できないと、ルイスが懇願するように兄を見れば、すぐに胸への刺激も太腿からの刺激も止められてしまう。
突然のことに思わずルイスがアルバートを見れば、愉しげに笑う彼と目が合った。
そうして互いの顔を見ているとアルバートの顔が近づき、再び唇を重ねられる。
ルイスは食べられてしまうのではないかと思うほどに深いキスを受け止めた後、下半身にひやりとした空気が触れているのに気が付いた。
キスを終えて視線をずらせば、アルバートの手により自身の性器が露わになっているのが目に入る。
「ん、に、兄様…?」
「ソファが汚れてしまうのが気がかりなんだろう?なら精液はこぼさない方がいいからね」
「え…や、まって兄様っ…ふ、ぁ!」
そうにっこり笑ったアルバートの言葉に一つの可能性が脳裏を過ぎり、慌てたルイスが急いで体を起こして腰を引くが遅かった。
キスを終えたばかりで艶めいていた唇を一舐めしてからルイスを見たアルバートは、弟の制止をなかったことにして、露わになっている形の良い性器へと顔を寄せる。
そして震えながら緩く勃ち上がる弟の性器を何の抵抗もなく口に含んだ。
「や、んん、あ、あぁ、んぅっ」
濡れた舌の感触に頭を振りながらルイスは感じ入るが、その手はアルバートの頭に添えられている。
本人としては引き離そうと力を込めているのだろうが、感じやすいルイスが感度抜群の性器を口に含まれていては思うような力が入るわけもない。
ただアルバートの髪の毛に指を絡めているだけの結果に、兄は静かにほくそ笑んだ。
「に、にぃさま、ぁ、それいや、嫌です、んんっ」
「ソファを汚してはいけないんだろう?仕方ないのだから我慢しなさい」
「あ、あぁん、ふぁ」
潔癖症であるはずなのに、戸惑うことなく口淫をしたがるアルバートの心理はいつまで経っても理解出来ない。
気高く見目良い兄の口内に自身の性器が収まっているところを見ていたくなくて、ルイスはただ瞳を閉じて喘ぐように声を出した。
ウィリアムといいアルバートといい、何故こうも進んで口淫をしたがるのだろうか。
ルイスは快感に蕩けた思考で疑問に思うが、背筋を走る強い快感に集中を乱されてしまう。
「んっ、あ、や、嫌だって、言ってるのに、ぃ、あぁ」
アルバートの舌の上で喜んだように震えているルイスの性器からは、じわりと癖のある味をした液体が滲んでくる。
それがルイスの快感を何より如実に知らせてくるのだが、頑固な弟はまだか弱い抵抗をやめていないようだ。
アルバートは硬く膨れた性器を口から出して、その根元に軽く吸い付いた。
ぴくりと跳ねる白い太腿を横目に、唾液で濡れた尖端から垂れているもので指を濡らしていく。
熱い口内とは違う、少しだけ冷えたその指先にまたもルイスの背にぞわりとした快感が走った。
「ソファを汚してはいけないし、ウィリアムからもルイスを可愛がるよう言われている。何より、気持ち良いだろう?ルイス」
「ん、んんっ」
アルバートの口から解放されたことに気付いて瞳を開けたルイスの視界には、艶めかしく唇を濡らしている兄がいた。
そのあまりの色香と男を感じさせる視線にルイスは自然と胸が高鳴る。
「アルバート兄様…格好良いです…」
アルバートを見上げてうわ言のように呟いたルイスを愛おしげに抱きしめてから、長い指を性器の奥へと進めていく。
綺麗に乱れる弟をひと月ぶりに見て耐えられるほどアルバートも忍耐強くはない。
まして潤んだ瞳で隠そうともしていない好意を全身にぶつけられているのだから、愛しい想いは増々募るだけである。
アルバートがルイスの秘部を撫でるように濡れた指を這わせていると、先ほどまで散々弄っていた性器が震えているのがよく見えた。
今にも達しそうなほど膨らんだ性器からはとろとろと先走りが流れている。
恍惚とした表情を見ても、恐らくはほんの少しの刺激ですぐにイってしまうのだろう。
アルバートは指を僅かだけルイスの中に押し入れてから、竿を伝う液体を下から舐めとりながらその全体を口に含んだ。
そうして性器を強めに吸いあげると同時に、彼の内部に埋めた指を根元まで勢いよく挿入した。
「ひっ、ぁあっんっ」
「…ご馳走様」
前と後ろ、同時に激しい快感を与えられたルイスは耐えきれずにそのままアルバートの口内に精液を吐きだした。
あまりに強いそれにルイスは眩暈がするような浮遊感を覚え、両腕で目元を覆い隠して息を整えている。
対するアルバートは舌の上で跳ねるルイスの性器を感じながら、とろりとした液体を一息に飲みこんでいた。
初めて口にする前は相応に抵抗があったものだが、今では好んで飲む程度には気に入っている。
硬度を無くして柔らかくなった性器を労わるようにねっとりと舐めあげてから、アルバートは名残惜しげに顔を上げてルイスに口付けた。
「ん、ふ…ゃ、やぁ」
「おや、嫌いかな?この味は」
「…好きなわけ、ないじゃありませんか」
「私もウィリアムも気に入っているんだがな」
「お二人がおかしいんです!」
軽く舌を絡めてから唇を離せば、至極不快そうに手で口元を覆うルイスがいた。
想定内の反応にアルバートは目元を緩め、彼の中に挿入した指をゆっくりと左右に動かしていく。
その軽い違和感に眉を顰めるルイスは知りたくもなかった自分の精液の味を知ってしまい、まだ理性が勝っているうちに日頃から感じている疑問を口にした。
「ん、そもそも、どうして兄様は口淫したり、ふ…の、飲んだりするんですか…汚いことは、お嫌いでしょうに、ぅ、あ」
「そうだな…最初は自分でもどうかと思ったが、ウィルがしているのを見て羨ましくなったからだろう。一度してみればそれほど悪くないものだったし、何より…」
「んん、ぁ…兄様、そこもっと…ふ、ぅ」
「恥ずかしがって善がるルイスが可愛い」
全身が火照って汗ばんだルイスの唇をなぞるように親指で触れて、そのまま唇を撫でながら人差し指と中指を口内に入れていく。
ルイスの薄い舌をくすぐるように弄っていると、飲み込めなかった唾液が口の端から零れていった。
それを自らの舌で追いかけて快感に蕩けた表情を堪能していると、遊び入れていた指を締め付けるようにルイスの下半身が動き始めている。
「にぃさま、も、はやく…」
「分かったよ、焦らなくていい」
「ん、んぅ」
アルバートの指を舐めながら首に腕を回して強請ってみせれば、相も変わらず余裕を浮かべた表情をした兄の喉が上下に揺れる。
それを何も考えずに見届けたルイスは腰を上げるよう促され、寝たまま彼の太腿に乗り上げるような姿勢になった。
自然と足を兄の腰に巻きつけていると、自分の中にある指が増やされるような感覚がする。
内側をほぐすように不規則に優しく指を動かされると、もどかしい快感が全身に走った。
ウィリアムといいアルバートといい、挿入する前は念入りに準備をしてくれるのが嬉しくもあり悲しくもある。
早くその逞しいもので貫いてほしいのに、優しい兄達はルイスの秘部がぐずぐずに蕩けるまでは絶対に挿入してくれないのだから。
「ん、ゃ、兄様、も、ぁあ」
「そろそろいい具合だね…ルイス、挿れるよ」
「アルバート、兄様…ん、あつい…」
アルバートは指で届く範囲を丹念にほぐし、ルイスの表情が快感を拾っていることを確認してから自らの衣服を肌蹴させた。
既に硬く反り勃っていた性器はルイスのものより大きく太く、先走りでうっすらと濡れている。
自分の性器とルイスのそれを重ね合わせるようにして握りこむと、その熱さと硬さを直に感じたルイスがこくりと唾液を飲み込んだ。
これからこのアルバートの熱くて硬くて大きいものが自分の中を満たしてくれるのだと、そう思うだけでも快感が過ぎる。
欲に満ちた顔で兄を見上げれば、アルバートも了解したようにその額にキスを落としてから蕩けきったルイスの秘部に押し入った。
「…兄様ぁ…ん、んっあぁ」
「っく…ぅ」
きつく締め付けられるのを苦とも思わずアルバートが腰を進めると、段々と迎え入れるように内部が柔らかく蠢いた。
ゆっくりと全てをルイスの中へと挿入すれば、アルバートの硬く勃ち上がった性器を包み込むように収縮する。
挿入の刺激で襞の部分が切れていないことを目視で確認し、同時に視界に入ったルイスの性器が再び震えているのがよく見えた。
「痛くないかい?ルイス…」
「へぃき、です…兄様、なか、動いて…兄様…」
「…ルイスのお望みのままに」
「ふぁ、あっ、は、あぁっ」
ルイスの腰を抱いてゆっくりと中を掻き混ぜるように動かせば、抑えようとしない嬌声が部屋に響いた。
奥を激しく突くよりも、優しく粘膜を擦るような動きの方がルイスの好みに合っていると気付いたのは数回抱いた頃だ。
可愛がるという約束がある以上、特別気持ち良くさせてあげなければならない。
己の欲望のまま腰を振るよりもルイスの快感を優先出来る程度には、アルバートはルイスのことを想っていた。
「ん、んぁっ、に、にぃさまぁ、そこ…んん」
「…あぁ、ここだろう?気持ちいいところは」
「ふぁ、あん、にいさま、兄様っ…」
「何だい?」
「ん…すき、すきです、アルバート、さま…にいさま…ふぁ、あぅ」
「…私もすきだよ、愛してる」
「ひ、やぁ、あぁっ!」
胸を締め付けるような甘い快感を抱いたアルバートは愛おしげに彼を見つめ、揺れて勃ち上がっていたルイスの性器を手のひらで覆う。
そうして思いがけないルイスの告白を聞いてつい勢いよく彼の最奥を突いた刺激で、手の中の性器は溢れるように射精した。
その熱い迸りをこぼさないよう受け止めつつ、熱く締め付けるルイスの中にアルバートも同じように熱を吐きだした。
「っは、はぁ、はぁ…は…に、いさま…」
「…気持ち良かったよ、ルイス」
「…ありがとうございます」
アルバートの精液でルイスの内側が濡れるような快感を拾う。
彼の顔を見上げて言葉を貰い、ルイスは嬉しそうに腕に力を込めて兄の頭を抱き寄せた。
まだ離れないと言わんばかりにアルバートの腰に絡めた足をそのままに、大事で愛しい彼の熱を全身で感じている。
そんな弟の仕草を拒否するでもなく、アルバートは静かにルイスを抱きしめていた。
「ん…兄様のお体、温かいですね」
「ルイスも温かいよ。熱いほどだ」
「兄様…」
甘えるようにアルバートの首元に擦り寄って、うっとりと安心しきったように声を出す。
情事を終えたばかりのそんなルイスが一番無防備で可愛らしいとアルバートは思う。
欲を誘うような香り立つ彼本来の匂いが汗に混じって鼻に届くと、出したばかりの欲望が再び沸き起こるのを感じるが、今はまだこのまま微睡んでいたい。
アルバートはそう考えるが、手のひらに残るルイスが吐きだしたものが垂れそうになるのに気付いてゆっくりと腕を持ち上げた。
目に入るのはルイスの肌にも負けないほど真っ白いとろりとした精液だ。
特に何の抵抗もなく手を口に持っていき、アルバートは自らの手のひらを汚すそれを舐めとった。
その様子を至近距離で見たルイスは、厭らしいほどに自分を翻弄した赤い舌と自らの欲そのものである白い液体とのコントラストに再び眩暈を覚える。
「に、兄様っ、待ってください、そんなもの舐めないでください!吐いて!」
「だがソファを汚すわけにもいかないんだろう?私のものはルイスが受け止めてくれたのだから相子だ、気にしなくていい」
「気にします!駄目、舐めないで…あぁ、もう…」
「ルイスも頑固だね、全く…」
いつまで経っても同じような反応をするルイスに、アルバートは呆れたような笑みを返す。
自分の制止も聞かずさっさと全て飲み込んだアルバートに、ルイスは心底申し訳なさそうに眉を下げて視線を逸らした。
だがそんな弟を気にかけるでもなく、アルバートは軽く腰を動かしてまだ自分は中にいるのだということを指摘してやれば、青褪めていた顔がすぐさま赤らんでいく。
壁に掛けられている時計を見てそろそろ頃合いだろうと腰を引けば、寂しがるようにルイスの中が収縮した。
「んっ…に、兄様…?」
「もういい時間だ。ウィリアムも帰る頃だろう」
「…そうですね、もうこんな時間ですか」
アルバートに抱かれるまま上半身を上げて、ルイスは彼の膝に乗り上げた。
そのままソファに座っては中に出したアルバートの精液が流れてしまうからだろう。
腰を引き寄せられてアルバートと向かい合わせに座っていると、リビングの扉が開く音がした。
驚くほどにタイミングの良いウィリアムの帰宅にルイスは瞳を見開いて後ろを振り返る。
「…ただいま帰りました、兄さん」
「お帰り、ウィリアム。実りあるパーティだったかな?」
「えぇ、充実した時間を過ごすことが出来ました。…兄さん達も良い時間を過ごせたようで何よりです」
「兄さん、お帰りなさい。何か飲まれますか?」
「いやいいよ、ルイス。気にしなくていい。それより、ちゃんと兄さんに可愛がってもらえたかな?」
「…は、はい」
ゆっくりと二人に近づいたウィリアムは、抱き合う兄と弟を見て愉快そうに表情を緩めている。
肌蹴て汗ばんだ体と濃密な空気が残るこの空間で何があったのか、ウィリアムでなくとも手に取るように分かるだろう。
照れたように顔を伏せるルイスをアルバートが抱きしめ、ふわふわと踊っている髪の毛をウィリアムが撫でつける。
そうしてしばらく三人ソファで時間を過ごした後、ベッドの広いアルバートの寝室へ移動するのだった。
(ふふ、可愛がってもらえたんだね。良かった)
(…でも兄様、久しぶりだというのに意地悪でした)
(へぇ?どうして?)
(おや、あまり虐めたような覚えはないんだが)
(…嫌だと言っているのに口淫してしまうし、僕が出したものを飲んでしまわれました)
(気持ち良くなかったの?)
(そうではなくて…!嫌なんです、兄様にそんなことさせるのは)
(私は構わないと言っているだろう)
(…僕としては、アルバート兄さんの気持ちは理解できるかな)
(そんな!兄さんまで!)
(だって久々だろう?僕もひと月空いたらルイスが嫌がろうと全身くまなく触れたいと思うからね)
(ぅ…)
(ちゃんと可愛がっていたつもりなんだが、足りなかったかな?)
(かもしれませんね…では僕も手伝うので、これから足りない分を補うのはいかがです?)
(そうだな。まだ夜は長いし、明日は午後から出れば十分間に合う)
(決まりですね。行こうか、ルイス。歩けるかい?)
(え、あ、大丈夫、です…え?)
(おまえが満足するまで可愛がってあげよう。期待していなさい)
(楽しみにしておいで、ルイス)