ハンティントン・ビーチ 2019.12.05 11:29 (ハンティントン・ビーチの桟橋) (ハンティントン・ビーチのダウンタウン) ロスアンゼルスからカリフォルニア州道1号線をサンディエゴの方へ向かって一気に南下している。 リムジンをハイヤーしている。ドライバーは23歳で来て、滞米30年になる日系一世の男。運転しながら、ときどき身の上を聞かせてくれる。聞かせてくれとは、頼んではいないのだが……。二度の結婚で二人の子供がいると。 「一番目の妻が南米の女で、離婚で二人の間の男の子を結局私が引き取って育てています」 「南米ってどこなの?」 「エクアドルです」 「ああ、国名が“赤道”というあの国ね。熱く情熱的だったんだ……。で、2番目は?」 「アメリカ人です。それとの間も男の子が生まれまして……」 「……で」 「二人とも自分の子供ではありますが、顔がまったく似ていないんですよね」 「はあ?当たり前でしょう?!タネはいっしょでもハタケは違うんだから。異なる作物が育っておかしくはない」 脈絡があるようなないような感じでボソボソと話は途切れ途切れに続く。カリフォルニアのナイス・ブリーズでどこかのネジがちょっと緩んでいるのかも知れない。この州道を南下する右側はずっと海で、揺れるパーム・ツリー越しの太平洋を眺めていたいのだが…… 「アメリカの女というのは言い出したら、絶対に自分の意見を曲げないのです。で、最後は泣き出すのでどうにもお手上げになります……」 「そんなに口角泡を飛ばして酷い口論していて、最後はI love you.ちょっと言いすぎたとかテキは言うんでしょう?」「あら!……よくご存知で!」「アメリカ人女性と結婚してヤツから聞いた。ワケわからなくて狂うって」 「そうなんですよ!」 さらにボソボソは続く。 「下の子が13歳の頃ギャングに染まりそうになったので、更正させるための〝ブートキャンプ〟(新兵教育訓練施設)に入れたのです。そのキャンプというのがサモアにあるんです」 「はい?!メラネシアにまで拉致連行しちゃうワケ?」 「はい。2年間みっちりと叩き直したんです」 「ほげ〜〜」 彼の描写力が優れていれば、もしくはコチラが根掘り葉掘りもっと訊き込めばなかなかのドラマが横たわっていそうだが、この旅の目的はソレではない。サーフィンの大会が開かれることから、〝サーフ・シティ〟と呼ばれるハンティントン・ビーチがそろそろだ。