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金色の雨

2019.12.10 11:35

目的地は、地下鉄4番出口を出て10分直進した先にあるカフェ。



今日の午後はこれからそこで一緒に仕事をしている人と会う。



これからどうしていくかの打ち合わせをする会。



地下鉄を下り、4番出口を探す。



午前中雨が降ったからか、地下鉄の駅には湿った空気が充満していた。



雨水があちこちに黒いシミを作っている。



薄暗く、じめじめした空間の中を、足早に4番出口を目指して歩く。



階段も雨で濡れている。



地上の風が、地上と地下を結ぶ階段を滑り降りてくる。



風が私の髪の毛を乱していった。



ところどころに水たまりがある地下鉄の階段。



時間には余裕がある。



転ばないよう、一歩一歩慎重に階段を上っていく。



踊り場で一回左に曲がる。



階段を見上げると、出口から空が見えた。



まだ雨の名残を残した雲が、それでも雨を降らせるほどの力もない雲が、空には広がっている。



正面から雨上がりの風がぶつかってくる。



湿っていて、生暖かい風。



転ばないよう、一歩一歩慎重に階段を上る。



地上に出ると、そこには銀杏並木があった。



太い道路沿いに、銀杏の木が一列に並んでいる。



金色に染まった銀杏は、雨の粒をまとってさらに輝いていた。



足元の歩道には銀杏の葉の絨毯が広がっている。



一迅の風が銀杏の木を揺らす。



雨粒を含んだ銀杏の葉が舞う。



それはさながら金色の雨だった。



地下鉄4番出口から直進徒歩10分。



私はその道を、目的地に向かって歩き始めた。



アスファルトの上にできた金色の絨毯は滑りやすい。



転ばないよう、一歩一歩慎重に歩を進める。



時間にはまだ余裕がある。



足元を見ると銀杏の葉が散らばっている。



手のひらほどの大きな葉ばかりが落ちている箇所もあれば、指先ほどの小さな葉ばかりが落ちている箇所もある。



「同じ銀杏の木でも、木によって葉の大きさが違うのか」



そして時々立ち止まり、銀杏並木を見上げた。



力のない雲が広がる空。



その空を背景に銀杏の葉が舞い散る。



歩いては立ち止まり、立ち止まっては上を眺め、また歩き出し、立ち止まって今度は足元を見る。



地下鉄4番出口から直進徒歩10分。



これから会うのは、一緒に仕事をしている人。



一緒にこれから先のことを考える人。



一緒にこれから先をもっとよくしていく方法を考える人。



転ばないよう、一歩一歩慎重に歩を進めながら、これからのことを思う。









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