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キリンの寝姿/小坂逸雄

2016.08.26 14:15

喫茶ままごとの閉店後、ビールを飲みながら喫茶のスタッフの人たちとおしゃべりをしていた。その日のお店のトピックは、お米を人類で最初に炊いて食べた人ってすごいよね、という話題だったらしい。たしかにな。でも、そんなこと言ったらナマコをはじめて食べた人もすごいよね、と誰かが言う。果物かと思って食べちゃったんじゃない?とボクが言う。冷静な喫茶のマスターの見解では、どうあれ、そういうことは、はじめてそれを食べた人が持っていた癖が米を炊くとかナマコを食べるとかいう行動に繋がっただけで、癖が生んだごく自然なことだったのではないか、と言う。ちなみにマスターの癖は茹でたそうめんの水気を切る時に31回ザルを振ることらしい。特に意味はなくて、ただ単に癖ということらしい。ふむふむ、と理解しようとしていると別の話題になった。スタッフの一人がある日、洞雲山(坂手にある山)に登った時、犬になった気分で登ったそうだ。犬になった気分とは、要は四つん這いになって登った、ということらしい。その話を聞いて別の人が、昔、山を四つん這いで登る癖を持った人がいて、それを見た人が四つん這いで山を登る人のことを未知の生命体だと認識してしまったがためにチュパカブラという謎の生命体が生まれたのかもしれないよね、と言う。四つん這いで山を登る癖ねぇ、、と思っていると、ということはネッシーって実はキリンだったんじゃないのかな?とワケのわからない仮説を誰かが立てる。キリンねぇ、、、と思っていると、キリンってどうやって寝るんだろう、とまた別の誰かが言い出した。木にもたれかかって寝ているのではないか、とか、互いに身を(首を)寄せ合って寄りかかりながら寝ているのではないか、とか、その姿はとてもうつくしいのではないか、とか。

くだらなくて本当にどうでもいい話ができて幸せな夜だった。演劇ってこうやって出来上がっていくものなのかな?とも思ったし、こうやって出来上がるワケないか、とも思った。どうでもいい話って、どうでもよくないよな、と思ったけど、この日のこれは本当にどうでもよくてたのしかった。




小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。