【福島県】前沢(南会津町)
山深い南会津の小村・前沢は、野岩鉄道会津高原小瀬口駅からバスで更に40分の「前沢向」で下車、館岩川を渡った先に展開する中門造りや直屋の農村集落である。
集落の歴史は文禄年間に小勝入道が移住してきたことから始まるが、明治40年の大火で全戸が焼失。
現在残る集落のうち15棟はその大火後の再建で建築されたものである。
冬は豪雪地帯となる山間部に、こうした民家群が周辺の耕地、山林、河川などと共に独特な農村集落の歴史的風致を作り出している。
平成23年に重伝建指定を受けているが、集落内は「前沢ふるさと公園」という形で保存されており、散策には入場料を支払う必要がある(冬期間を除く)。
(写真は県道を挟んで集落向かい側の展望台からその全景を撮ったものである)
【福島県】前沢(南会津町)201910
集落内の民家の形状は、寄棟造りの主屋に切妻屋根の中門をL字型に接続した「中門造り」と呼ばれる「曲家(まがりや)」、もしくは直方形平面をした「直家(すごや)」と呼ばれるものである。
「中門造り」は福島県南会津地方の他に秋田県、山形県、新潟県などで見られるが、特に現在の集落形成には新潟県の大工の棟梁がかかわったともいわれている。
現在も大半の民家で住民が生活を営んでいる。
【福島県】前沢(南会津町)201910
民家や農地の造成で河原の玉石を野面積みにして、土留がされている。
【福島県】前沢(南会津町)201910
集落内の曲家住居。
軒高が高く、壁面は柱、梁、束、密に通した貫などの木組みを化粧として見せている。
外壁は真壁、もとは中塗りのままの土壁としているのが多かったが、現在は漆喰仕上げが多い。
【福島県】前沢(南会津町)201910
伝統的な茅葺き屋根が多いが、トタン屋根に吹き直している民家も見られる。
【福島県】前沢(南会津町)201910
集落奥に鎮座する鹿島神社からの眺望。
山間部に屋根が重なり合うように見える。
【福島県】前沢「前沢曲家資料館」(南会津町)201910
平成4年に旧伊南村より移築された明治期の中門造りの住居で、内部見学が可能。
当時の間取りをそのまま残し、農具や民具など集落の暮らしぶりを知ることができる。
家族団欒の部屋「下縁」
冠婚葬祭や寄り合いの場として使われた「上縁」
農作業の場だった「土間」 横には「馬屋」