タクシードライバーのように/小坂逸雄
いろんな国を旅して、留学などの海外生活経験もあるという方とお話をする機会があった。たのしい国や出来事はきっとたくさんあっただろうから、逆に「どんな国がつまらなく感じたの?」と聞くと「英語が通じるところは意外とおもしろみが少なかったと思う」ということだった。英語を話すことができる方ならではの感覚かもしれないけど、なかなか深みのある回答だと思った。海外に行ったときは英語がよくわからなかったナーということで自分の英語力の弱さを痛感することがあるけど、たしかに通じなかったからこそおもしろかった!というところもある。語学力があるに越したことはないと思うけど、やっぱりわからないなりに全力を尽くしピンチや状況の打開を試みるというのはいろんな場面に於いてたのしいものなんだろう。
そんな話の流れから、ブラジルには「他人がたのしんでいることを邪魔してはいけない」とか、そんなニュアンスの諺があるということなども聞く。お国が変われば価値観も様々なのだ。でもその価値観ってのは道徳という最大公約数的なモノ以外にも自分の感覚でもあって、つまり少なくとも自分の感覚さえ変えてしまえばその瞬間に目の前の世界はいろんな方向に開けてくるはずだろう。要は許容するということなのかもしれない。
先日行ってきた台湾で乗ったタクシーはダンスポップミュージックをズンズン鳴らす運転手だった(写真)。タクシーが止まった瞬間に車外まで聞こえてくる音楽に「あ、変なドライバーをつかまえちゃったな…」と思ったけど、乗ってみるとそのドライバーの常識に身を委ねることが心地よかったり、むしろ普段自分が受けているサービスというものを期待しすぎていたことに気付いたりもした。そういえばベトナムでは百貨店のような場所でも店員がイスに座ってお喋りに興じていたっけ。
なんだこりゃ?!って状況を受け入れてたのしむ。平均を目指すサービスではなくて、もっと個性や意外性をたのしむってことを大事にしていきないな、と。改めてそう思った次第です。はい。
小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。