引っ越しとダンサー／小坂逸雄

先週の土曜日に小豆島に引っ越しをしてきたダンサー・俳優などを生業としている松之木天辺さんのトークイベントを開催した。去年まで小豆島へ訪れたこともなかった天辺さんは、昔から「小豆島に住む」と周囲に口にしていたそうで、今回の引っ越しは小豆島という場所に対する具体的な憧れというものではなく、彼の頭に思い描いていた抽象的な何かが確信となった結果というニュアンスが濃い印象だった。確信とかそんなに大げさなものでも無いような気もするけど、それにしてもそんなおとぎ話のような展開で住居地を移したことは興味深く、イベントでいろいろなお話を聞くにつれて、だんだんその理由が天辺さんの生き方に由来しているように思えてきた。身体を動かしてパフォーマンスをしているからか、仕事上、移動や様々な土地に行くことに慣れているからか、いずれにせよ天辺さんは「動くこと」によって、引っ越しすらもまるでダンスをするかのようにこなしてしまったんだろう。ボクはまだ天辺さんのダンスを見たことがないけれど、たぶんきっとそれは少しハチャメチャで、だけど彼なりの哲学や思想が感じられるものであるような気がしている。いつか天辺さんが踊る舞台を観るその日が来るのが楽しみだ。

（写真：太田有紀）

小坂逸雄
東京出身、小豆島在住。
2020年4月現在、高松にて養蜂の修行中。