三年間の軌跡。今何を思うのか。2年生インタビュー#2 (飯川瑠夏、川合耀祐、平体まひろ、青木佳)
ついに始まった“2年生卒業インタビュー企画” 。
続く第二回の今回は、「トリゴーリン役(B)、飯川瑠夏」「ソーリン役、川合耀祐」「ポリーナ役、平体まひろ」「制作部、青木佳」のチーム昼間部。
本科時代から共に過ごしてきた4人だからこそ出来る“思い出トーク”を交えつつ、色々なお話を伺ってきました!!
①57期とロシア文学
ーまず最初に『かもめ』に決まった時の心境を聞かせて下さい。
飯川
二択を投げられてね『三人姉妹』と『かもめ』で。
平体
ー分かります(笑)
飯川
僕がどちらを演りたいかって時に言ってたのは、年齢的な問題っていうのかな、『かもめ』でいうトレープレフとニーナとか、そこらへんの“ザ・青春”みたいなのをやっておきたかったっていうのはあったんだよね。でもほんとに個性が活きてて楽しいよね。みんなちゃんと生きている、というか。
(飯川瑠夏)
川合
昼ドラみたいだよね。なんかもう、めちゃくちゃだし(笑)
平体
読んでいる時には分からなかった人間関係が色々なところにあるから楽しいよね。遊びがいもあるし。
青木
うん。でも私は『かもめ』をやるって決まった時、キャスティングが自分たちの想像通りすぎると面白くないのかな、という気持ちはあったかな。
飯川
その話は演技部でも出てたよね。僕らの中で勝手に喋ってただけだけど。
青木
今回はね、なんか、
平体
天変地異みたいな。でも一方で「あ〜やっぱり!」みたいなことも起こりつつ、
青木
そう。だからほんとに多様性が見られる作品になりそうだなと。
②それぞれのきっかけ
ーありがとうございます。
次に、皆さんが文学座を選んだ理由を聞かせてください。また皆さんが役者になろうと思ったきっかけ、制作に携わろうと思ったきっかけも聞かせてください。
平体
(青木に)佳ちゃん最初、演出部だったもんね。
青木
演劇がずっと好きでそれを仕事にしたいなって思ってたんだけど、観るばかりで作る側の人たちのこと何も知らないなって。
そんな時に文学座の説明会の存在を知って行ってみて、植田(真介)さんの話聞いた時に「ここで一年やれるならやってみよう」って思ったの。
それで演出部で入ったけど、だんだん福祉政策としての演劇や芸術活動とか、公共に於ける芸術に関連した仕事をしている人たちに目が向くようになって、そっちの方に興味が出てきて。それは演出部にいても出来ることではあったんだけど、俯瞰的に作品とか演劇のことを考えながら仕事をしたいなって思って制作に移ってみようって。
(青木佳)
飯川
僕は受験前に研修科の『お気に召すまま』を見たんだけど、それがすごい良くて。たくさん芝居を観てたわけじゃないから芝居の出来不出来はあんまり分からなかったけど、とにかく研修生の一体感というか、すごい輝いてて。「本当に心から楽しんでいるんだな」って。それから実際に説明会に行ってみて文学座にしたっていう感じかな。(川合に)よっちゃんはまたちょっと違う感じだよね?
川合
僕は岐阜県可児市出身で、近くにアーラ文化創造センターっていう劇場があるんだけど、そこでやる市民参加ミュージカルに小学4年生の時からほぼ毎年参加してたんですよ。それがない日はそこから派生した子供劇団にも行ってたんだけど、そこで教えてくれてた人に「東京行って役者やってみたら?知り合いが東京でワークショップやってるから参加してみなさいよ」って言われてそこで一年間お手伝いとかしてたんだけど、だんだん居場所がないなって思い始めちゃって。で、その時に文学座のことを思い出して。高校二年生の時に高橋(正徳)さんの演出で『わが町』をやって文学座のことは知ってたし、帰省した時に高橋さんが居たりして『文学座来ないの?』って言ってくれていた気がしたから(笑)
(川合耀祐)
川合
それで周りの人にも相談して「(文学座)いいんじゃない?」って。
で、受けに行ったら同年代くらいの人がいて声出しとかやってて、たいしたもんだなって。自分もこう、「あー」とかそれっぽくやってみたり。
一同:笑
飯川
でも本当に人との繋がりって大事だなって思う。
川合
うん、本当に。役者を目指した理由はその、やってみなって言われたってのと、人前に立つことが楽しかったから。純粋な楽しい・・・そう、お調子者だったから。苦しいなって思う面もあるけど、セリフが入ってみんなとお喋りするのが楽しいよねって。だから頑張りたいと思います。
青木
(平体に)まっひーは?
平体
私は中学校の部活入る時に友達と一緒にバレーボール部に入る気満々だったんだけど、「バレー部は廃部になるので今年から新入生は募集しません。代わりと言ってはなんですが、新設で演劇部が出来るので」って言われて(笑)
昔読んだ漫画で演劇のことはなんとなく知ってたし、友達とみんなで「入る?」って入部したんだけどそれが馬鹿みたいに楽しくて。
高校では何もしてなかったんだけど、大学生の時にもう一回やりたいなと思ってまた始めたら、やっぱり一回ちゃんと勉強したいなって。そう思ってた時に受けた文学座のサマーワークショップがほんとに楽しくて、それがきっかけで文学座を受けようと思ったの。実はその時、別の養成所も受けていてどっちに行くか最後の最後まで迷ったんだけど、坂口(芳貞)さんの面接受けた時に「すごい好きだな。坂口さんがいるところに行きたいな。」って。
(平体まひろ)
平体
でも文学座でほんと良かった。「やってやんぞ!」って気持ちで入所式行ったけど、「みんな仲間なんだ」ってちょっと泣いたもん。
飯川
僕も入所式感動した。「ここから僕の一年始まるんだ」って。
平体
そう!「これみんな仲間なんだよ、奇跡じゃない?すごくない?」って。
飯川
ほんとに友達欲しかったし、芝居やりたいっていう熱があったから、それについて切磋琢磨出来る仲間をすごい求めてて。だからほんとに嬉しかったな。人と話したいっていうワクワクドキドキだった。
川合
俺は“HUNTER×HUNTER”の試験みたいだなっていうのでワクワクしてた(笑)
一同:笑
③共に歩んだ三年間
ー入所式ってなんか記憶に残るというか、印象深いですよね。
次の質問ですが、皆さん全員昼間部出身ということで三年間一緒だったと思うんですけど、三年間で一番印象に残ってることって何ですか?
平体
本科ってすごい印象深いなぁ。なんでだろ。
川合
だって週6日(授業が)あって、なんならオフの日も観劇とかでみんなに会うもんね。
青木
研究所的な思い出は本科の方が結構あるかも。
ーそうなんですね。
平体
それこそ『かもめ』とかすごい印象深いもん。始めて一対一でやってさ。初期だったからこそ、みんなの芝居がどんどん変わっていって。
飯川
みんな成長したんだな。
『かもめ』やってんだぜ?卒業発表会で。
平体
ほんとに!あーなんかいきなり感動的になってきたな。
青木
あ、でもなんか対称的で面白いなって思ったのは、西川(信廣)さんの『恋愛日記』と(小林)勝也さんの『白夜』の授業かな。なんか同じ劇団の人たちでこんなに違うことやるんだって。
平体
クリエイション方法の差がすごいよね(笑)
青木
そう。西川さんの授業は、なんか「すごい分かる!分かりやすい!演劇ってこういう風に作るんだ」ってなったし、最初にそれをやれて、取っ掛かりとしてすごく面白いなって。勝也さんはもう、「え?いきなり風になるの?」みたいな(笑)
この人の授業の魅力はここだよね、というか「こういう世界もあるんだな。」っていうのが分かってすごく面白かったし、いまだに覚えてるな。
川合
僕は研修科に上がった時かな。通知見た時は「おわぁ〜」って感じで泣いたんだよね。口では「それはもう上の人が選ぶから分からない。神のみぞ知るだよ。」みたいなこと言ってたけど、やっぱり「選ばれたいな。」って思ってたし。
今までは苦手なことも多かったし、そう上手くはいかなくて。選ばれるっていうことがなかなかなかったから、その時に選ばれたっていうのは「あ、僕は必要な人間なのかな?」ってちょっと感動したし、その時の心の充足感的なものは凄かったですね、はい。
飯川
そうなんだ。僕はやっぱりどうしても『わが町』(※1)の印象が強いかな。初舞台ってのもあるしね。勝也さんの演出だったんだけど、勝也さんとの出会いも僕の中では大きかったかな。やっぱり自身も俳優をやってるからなのかもしれないけど、勝也さんならではのアプローチ、芝居の創り上げる工程が印象的で。沢山発想のヒントをくれたし、その時は割と自由にやらせて貰えて、僕はかなり楽しかったな。
僕がやったのがウィラードっていう役なんだけど、ウィラードがこう出てきて、一人でずっとベラベラ喋るシーンがあるんだよ。その時はスポットライトもお客さんの視線も独り占めで、「自分のやりたいことやってるぞ!どうだこれ!」って(笑)ドルンさんの言葉を借りて言うと、“精神の昂揚”。「だから芝居ってやめられないな」ってその時思ったし、今でもずっと残ってるかな。でもほんとに色々あったね。
川合
もう毎日が楽しかったよね。稽古場行くのとか超楽しかった。苦痛なことはなかったもん、週6日でちょっと身体的に疲れたとかはあったけど。
平体
でも、俳優についての逆説(※2)はつらかったかな〜。
飯川
あー!それはつらかったわ!苦痛なことあったわ!
一同:笑
川合
もうすでにあったわ、あった(笑)
平体
私はそれまで自分で脚本を書くことも演出することもなかったし、しかも私の大好きな坂口さんだし、自分の経験を交えつつ書けって感じだったじゃない。で、「この人だけには嘘をつきたくない」って思ってやってたんだけど、あの時の自分と向き合いまくる時間というか、しかもそれを表に出す、創作にするっていう、あのプロセスが本当につらくて。
あれがあったからこそ、その時の自分とゆっくり向き合うことが出来たから良かったなって思うんだけど、つらすぎて、それこそ三日間連続とかで休んだもん、私。でもそれも今思えばほんとに全部必要な人生経験だったから、それをさせて頂いた俳優についての逆説はありがたかったなと思います。はい。
④57期から58期へ
ーありがとうございます。それでは後輩へのメッセ
ージをお願いします!
飯川
先輩面出来ないな(笑)ほんとにめちゃくちゃ助けられてるから(笑)
平体
気の回る子ばっかりだし、もうほんとにいつもごめんなさいって感じ。
青木
そうね。でもだから逆に、自分を出すっていうのをもっとやってくれてもいいのかなって思う。まあ来年2年生になるから遠慮するってこともなくなると思うけど、先輩だけどライバルだし、やっぱりここにいる限りは「卒業発表会だけど主役やります!」くらいのギラギラさがあった方が今後いいな、と。
飯川
良い意味でわがままにね。
青木
そう!研究所にいるっていう所属意識とかを良い意味で持ちすぎないで、自立して、自分の体が武器というか売り物だから、自分自身をもっとどんどん外に出して、「こんないい役者いるんですけど」っていう意識を育ててくれたらきっともっといいんじゃないかなって。で、気の回る所はもう、そのまま活かしていただければ、有難いことこの上ないです。
平体
もう使ってやろうくらいの勢いでね、その、環境を。
川合
・・・はい。
一同:笑
川合
ちょっと返事しちゃった(笑)
飯川
よっちゃんはどうですか?メッセージ、みんなへの。
川合
そうだな、後輩が出来ても、先輩面しないで、仲良くコミュニケーションを取って、年4回の発表会をほぼ同じメンバーでやれる機会とかを噛み締めながら、あの人なんで成長したのかなとかも考えつつ、この環境で得られるものをたくさん吸収していけばいいんじゃないんでしょうか。どうでしょう。じゃあるかくん、どうぞ。
飯川
今回、同期がみんな揃ってるっていうのはほんとに嬉しいことなんだけど、1年生との関わりがあまりないから、それはちょっと寂しいなって。新たな人とやることで「この人こんな芝居するんだ」とか発見もあったりして面白いしね。うーん、メッセージ・・・分かんないけどほんとに二年ってあっという間で、だから僕が思うのは、研修科って今、年4回発表会あって、その公演に集中するのはもちろんなんだけど、その先をちょっと考えてた方がいいなって。この後どうなっていきたいのかを自分に問いながら、いまこうした方がいいんだなとかこういうこと準備しといた方がいいなっていうビジョンを持って一年どうやるかっていうのがあったらいいかな・・・と一年前の自分に言いたいです(笑)
平体
あと健康第一。バイトも大変だと思うけど、ほんとにあの、よく食べてよく寝てね。私もだけど。やっぱり6時間は寝ないとダメよ。体調崩すもん(笑)
川合
ご飯を食べて寝ると元気になるから。こういうのやってると精神的に病む時もあるじゃん?精神的に病むと体調って崩れるわけですよ、病は気からとはよくいったもんで。だったらせめて、無理やりにでもおにぎり食べて寝る!栄養ドリンクでも何でも飲んで寝る!っていうのをした方がいい、まじで。しんどくなったらご飯を食べて寝る、そう。
平体
はい。気をつけます。
ー先輩方からのお言葉を胸に留めて頑張ります。最後に物申したいことなどあればお願いします!!
青木
あ!物申したいこと!集合写真に私を入れなさいよ、絶対。私、去年から1枚も入ってないから(笑)
ーじゃあ、この記事に大きく書いておきます(笑)
青木
もう見出しで書いといて!
飯川
一丸となってやってるからね。
平体
あ!私も物申したいこと!
“外でまた、会いましょう”って思う!
飯川
おぉ〜(笑)素晴らしい
平体
いまここで影響を受けた人たちだから、外行って何年後何十年後、現場で会えたらそんな嬉しいことないよねって。
飯川
幸せだね、それは。
ー最後にほっこりしたメッセージありがとうございます。今日は色々なお話を聞けて嬉しかったです、ありがとうございました!!
※1…毎年本科の1回目の発表会で上演される作品。研究所で初めて演技を学ぶ生徒もおり、初舞台となる者も多い。
※2…宮本研の『俳優についての逆説』をテキストに、稽古場(山本ビル)で行われる発表会。作・演出を生徒自身が手がける三分間の一人芝居が内容に含まれる。
記事:甲斐巴菜子
写真:池亀瑠真
※この記事はインタビューを元に再編成したものです