日経新聞コラム2019.11.28【33年目の弦楽四重奏団、4月に幕】
日経新聞11月28日九州版に掲載されたかんまーむじーく のおがた代表の渡辺伸治氏の原稿です。
博多駅前のビジネス街の一角で33年間、弦楽四重奏曲を奏で続けてきた福岡ハイドン弦楽四重奏団について書きました。
文化財団が地域発の弦楽四重奏団の主活動である定期公演を全面的にバックアップするという全国的に珍しいケースです。
33年の継続はその賜物です。
広報の周知、開催時間、開催ローテーションなど個人的に惜しいと思うことがいくつかありますが、弦楽四重奏というストイックな音楽を日常に根差した演奏会で聴かせたことはとても有意義です。
【以下、私の独り言です。どうそお付き合いください。】
5~10万人の4つの小都市の公立ホールで弦楽四重奏団を雇用する。
つまり一つの市がメンバー一人を雇用。
給与は、小都市が雇用可能な額として地方のオーケストラと同額位。
あまり高くないですが。
◆年間8回のホールコンサートを主催。
・弦楽四重奏 ×2回
・弦楽四重奏(または三重奏)+ピアノや管楽器など他楽器 ×2回
・弦楽器(四重奏団メンバー)&ピアノ による二重奏リサイタル ×2回
・ファミリーコンサート ×2回
◆学校などを対象とした実施のアウトリーチを一市につき年間50回実施(1日2回で行程25日)
リハを含めて年間140日くらいの拘束となりましょう。
弦楽四重奏にはベートーヴェン以降の芸術作品から、初期のハイドンやモーツァルトのような聴きやすい娯楽作品まであります。
それに他楽器を加え、さらにDUOなどで構成すれば古典派以降の室内楽の重要レパートリーのほとんどを網羅できます。
そして編曲でファミリーコンサートとアウトリーチにも対応できます。
またアウトリーチはピアノのない会場でも実施できます。
小都市でのクラシック音楽の事業としては十分ではないでしょうか?
「おいおい、室内楽ばかりで、オーケストラは聴けないの?」
という要望に対して、ホールがバスを貸し切り、アクロス福岡の九州交響楽団の演奏会に引率する企画を年2回ほどいかがでしょうか?
行きの車中で予習会、帰りは余韻に浸る会を。
弦楽四重奏団が地域に育つ。
音楽を深く愛する聴衆が地域に育つ。
そして地域の聴衆と四重奏団の間に「おらがの四重奏団」といった親密な関係性が生まれる。
誰もが幸せになれるのでは?
このような手法で小都市の文化基盤を耕すことはできないでしょうか?
【渡辺氏の12.4追記】
1975-94年、福岡市では岸邉百百雄さん主宰の弦楽四重奏団、福岡モーツァルトアンサンブルの定期演奏会が開催されていました。
第1回演奏会の直後、この四重奏団を育てようと後援会が立ち上がり、演奏会の主催を担いました。
それが19年の継続を可能にしたのです。
この演奏会は各地に広がり、北九州市、宗像市、佐賀市で開催されるようになりました。
最後の5年、私は直方市で主催することに。
全ての会場の聴衆を合わせると、ピーク時は700人ほどいでしょうか?
地方における弦楽四重奏の活動では考えられないことです。
そのころの福岡県内での演奏会の数は今よりはるかに少なかったです。
しかし弦楽四重奏の定期演奏会があることで、音楽を深く愛する人は今より多く育っていたのでは?と思うのです。