勝負かけてます
いよいよ心持ちにしていた日が近づいてきた。そう、豪華合コンの夜である。
それは秋の終わりの頃、友人のAちゃんからの携帯から始まった。
「恵美子さん、Ⅰさんご存知ですか」
知っているもなにも、私の男性リストの中でも今いちばん美形でセクシーな男性である。以前ちらっとお見かけして素敵だなあと思い、私は〇印をつけていたのだ。
「あの、私とBさんがパーティーで、偶然Ⅰさんと一緒になったんです。そうしたら、私とBさんとで一度飲み会をしようということになったんです。そしてⅠさんが、恵美子さんとMさんも誘ってくれって」
さすがⅠさん、聡明な選択である。美人女優のBさんとお酒を飲んだりすると、世の中のねたみとそねみを受けることになる。美女の栄誉を誇るAちゃんは、お嬢さまっぽいおっとりとした雰囲気をマスコミの世界にいても持ち続けている人だ。そこに一般人の私とMちゃんを入れて中和させようということなのだろう。Mちゃんは明るいキャラで人気が高い。彼女がいるとあたりは笑いにつつまれるのだ。
「それでⅠさんは、ものすごいイケメンをあと三人、ご用意してくださるそうです」とAちゃん。
ふーむ、あちらは合コンの態勢らしい。それならば、こちらも期待してしまうわ。私はMちゃんと会うたびに、こそこそ相談した。
「どうせ私たちは、お笑いキャラということで動員されてるのよね。男の人はみんな、Bさんにいっちゃうだろうし」
「でもね、Bさんは彼氏ができたばっかりで、のろけまくっているから、案外私たちに勝算はあるかもしれませんよ」
が、私たちの不安が天に届いたのか朗報がもたらされた。なんとBさん、仕事の都合がつかずキャンセルとなったのである。
「これでようやく私たちにも男運がまわってきたのかしらね」
そうしたらAちゃんからまた連絡が「Bさんのかわりに、Cさんをお誘いしました」
私とMちゃんは激怒した。Cさんといえば、超セクシー系タレントである。日本人離れした容姿の持ち主で、とにかく妖艶な人である。
Mちゃんはフンマンやるかたないという感じで言った「Aちゃん、合コンっていうことを少しもわかってない。いったい何を考えているのよ」
そうよ、そうよと私は合唱した。合コンで後から女の人を追加するときは、既に参加が決まっている人とのバランスを考えるのが鉄則ではないか。それを超強力セクシーキャラを入れてくるなんてひどすぎる。
「ふたりとも、どうしてそんなに怒るんだよ」その場にいた男性が私たちの剣幕に恐れをなして、こわごわと質問する。
「あなたたちだって、合コンのときに横浜流星くんを連れてこられたらどんな気分がすると思う?それと同じよ」
「なるほど」男性たちは大きく頷いた。
もちろん天下の美女と同じ土俵に立とうなんて、これっぽっちも思っていないわ。だけど、これじゃ、みじめすぎる。「こうも違うものか」と思ったとしたら、あまりにも悲しい。
「恵美子さん、人生どんな出会いがあるかわかりませんからね。当日までに作戦を考えておきますよ」Mちゃんは言った。
この言葉はどれほど私の励みになったことだろう。こういうポジティブな考え方だと、何をやってもうまくいくような気がする。
そう、そうね。そう言われるとだんだんその気になってきた。「一緒に頑張りましょう」ギュッと手を握り合う私たち。
そうしたら今日、Aちゃんからメールが入った「Cさんはやめて、Dさんをお誘いしました」
再び絶句。Dさんといえば、そう、人気抜群の女子アナではないか。清楚な雰囲気をもった愛らしい容姿で知られている。セクシータレントの次は女子アナなんて、ひどい、ひどすぎる…。
一難去ってまた一難。どちらが男性の好みであろうか。会社員の人だったら、やはりDさんのような気がする。そうこうしている間に合コンはあさってに迫った。我々シロウトコンビは、どれほどの人気を獲得できるか。女子アナに勝てるか(やっぱり無理か)。でももう後には退けない。私は覚悟を決めた(何のことだ?)。結果は次回。
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