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この道往けば act2

紀伊半島遠征第4弾 紀北隧道群 海野隧道

2019.12.15 02:13

紀伊半島東岸、熊野灘を南下する今回の遠征。

紀北隧道群では2つ目となる隧道を紹介します。

なかなか複雑なこの辺りの隧道事情、ややこしいのでまずは地図をご覧ください!

ご覧のとおり、海野浦隧道長島隧道から目と鼻の先。

というよりここから国道42号は連続トンネル区間に突入します。

長島隧道編、一番最後にお見せしたこの看板・・・、

ここから尾鷲市までの区間にある現道トンネルは、最初の長島隧道も入れて5本。

予想される煉瓦隧道の数は6本。

つまり少なくとも、

現トンネルには全て煉瓦隧道がセットになっていると考えられるのです!


そしてどこかに対応するトンネルのない廃隧道が隠れているということ・・・。

これは油断ならない!

まぁこの問題は後々解決しよう!

今はこっちだ!

それではレポスタート!

古里トンネル(ふるさとトンネル)

それがこの隧道に対応する現道のトンネルです。


世間にあふれる「ふるさと○○」の仲間として扱われるのは心外なこのトンネル。

実はこのトンネルのある地区名が名前の由来なのです。

三重県北牟婁郡紀伊長島区古里

(きたむろぐんきいながしまくふるさと)

とってつけた名前じゃないんだよ!

その旧道にあたる道は現在、歩道として現役です。

当然そこに付随する隧道も歩行者用として現役。

古里歩道トンネル(ふるさとほどうトンネル)

それが彼の世をしのぶ仮の姿の名前。

しかしその姿は、とても忍び切れていませんでした。

長島隧道に負けず劣らず・・・、

いかつい!!

蔦が絡まりかなり読みにくくなっていましたが、扁額は当時のままでした。

海野隧道(かいのずいどう)

この辺りは長島隧道しかり、海野浦隧道しかり、よく似た名前の隧道が林立していてややこしい!

探索の際はお気をつけて・・・。


しかし煉瓦作りのポータルに近代的な設備は似合わない。

柳ヶ瀬隧道なんかもそうですが、時代に追いつくためには仕方いんでしょうが。

しかしそれでも彼は今もなお現役です。

洞内は当然コンクリート補強がされていました。

これなら一般の方でも恐怖感なく歩けるものと思われます。

内部は素掘りの区間と巻き立て区間が断続的に現れます。

これは内部の一部だけ煉瓦を巻きたてたとは考えにくいので、後年補修した部分をそのままコンクリートで吹き付けたものと予想されます。

坑口付近は煉瓦だったと思われますが、内部の一部だけってのはちょっとねぇ。

隧道から出る瞬間、僕はこの瞬間が大好きです。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

川端康成の「雪国」の冒頭です。

雪国は東京で妻子と暮らす主人公、しかしたまに長いトンネルを抜けて雪国で芸者と暮らす物語です。


このトンネルの使い方。

これはまさにトンネル、隧道の「異世界感」をフルに利用した文章だと思います。

オブローダーにとって、隧道を出るとそこはもう別の世界なのです。

最初は機会に繋がれた患者のような印象を受けたポータルも、いざ通り過ぎると機械化されたボディを持つサイボーグのようにも見えます。

楯状迫石と機械のコラボもいいじゃないか!

二転三転してますが、その時の正直な気持ちの変化です!

この翼壁は当時からのものでしょうか?

隙間なく積まれた谷積みの石組。

素晴らしい!

非常に達筆な扁額の文字。

これ多分、「海埜隧道」って書かれてるんでしょうね。

他の資料を見る限り、「野」に統一されてるようなので飾りなのかも。

そういえば前の長島隧道も「長嶋隧道」と表記されていました。

煉瓦造りの歩道トンネル。

そんな余生も悪くないのかも・・・。

そんなことを思えた隧道でした。

さて・・・、

かつての一級国道の旧道。

そうは思えないほどの細い道は、轟音響かせる現道に飲み込まれていきました。

今もなお現役の老兵、しかしその生きざまは決して悲哀ではない姿がありました。

次はどんな隧道が待っているのか?

さて行くぞ!


以上、紀伊半島遠征第4弾 紀北隧道群 海野隧道編