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トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(2)

2019.12.18 08:00

松山・ケミビルで不定期に開催されているイベント「知らなくても楽しい、知ったらもっと楽しい○○の世界」。

10月11日の第4回目となる同イベントでは『愛媛の建築』のテーマのもと、白石卓央、宮内健志と宮畑周平さんの三人で、愛媛の建築やデザイン、地域の素材など様々な観点でトークを行いました。

本記事では本ブログの共同執筆者である宮内健志によるトークの内容をお伝えします。


以前の記事はこちら

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)



「構えていない建築を分類分けする」

風景の中にある無意識で見ているものを、意識する。その意識したものを伝えるために分類分けしてはどうかと考えました。そこで参考にしたのがタモリのボキャブラ天国というちょっと古いテレビ番組です。


僕も小さい時に観ていた記憶があります。今もタモリ倶楽部で空耳アワーってやっていますが、聞き間違いとか同じリズムで言葉をちょっと変化させて面白おかしくする言葉遊びです。ボキャブラ天国ではネタを分類分けするところも面白さの一部になっていて、タモリさんと観客が一緒になってネタを分類分けしていきます。

この分類分けの軸はボキャブラ天国そのままなのですが、X軸上に渋いとインパクト、Y軸上に知的とバカ。これをそのまま「構えていない建築」に当てはめてもいいのではないかなと。僕が好きなのは渋い建築なのでここらへんですね。それとは反対に奇抜でインパクトのある建築。それが知的なのかバカなのか、知的とバカというか建築家が作ったのか素人が作ったのかがわかりやすいかもしれません。そのXとYの間に渋知とかバカパクとかあります。つまらないものはポイです。

それでは写真を振り返っていきます。「郡中の群れる家」は渋いですよね。バカか知的かどうか。これはバカシブ2対7です。

あふれだす軒先園芸、インパクトありますよね。知的かバカか、バカパク5対5。

ベランダの透かしブロック、デザインされていますがそこまで面白くないのでポイです。

↑(アゲ)ハウス、どうですか?インパクトはありますよね。知的ではなさそうなのでバカパク。参加者からの掛け声もお待ちしています。

モルタルの独特な仕上げは・・・

(会場)渋かな

そうですね。バカシブです。

トマソン、これはインパクトありますよね。バカか知的か、トマソンという名前の由来が知的っぽいので知的です。インパクチ9対4。

こんな感じで分類分けをしてみました。


「#松村っぽい建築」

話題が変わりますが、もう一つ愛媛の建築で紹介したいものがあります。「松村建築を探せ」です。

先ほど白石さんの話の中にもありましたが、元々八幡浜市の職員であった松村正恒さんという建築家が、愛媛に多くの優れた建築を残しています。松村さん自身、建築家が前に出て目立つのは嫌だというタイプだったので作品はほとんど発表されていません。なので、「実は松村さんの設計だった」という建築が愛媛にはまだまだあるのではないかと思っています。

写真は松村さんが設計したと分かっている飯尾小児科です。松山の街中にある小児科です。外観はアールが効いていたり、庇が付いていたり松村さんの建築の特徴がみられます。特徴を知っているので、なるほどな、わかりやすいな、という建物もあります。

この写真は須之内歯科です。平和通りにあります。この建物は、インターネットで検索をしても松村さんが設計であるとは出てきません。僕がふと通りかかった時に、これは松村さんっぽいなと思いました。たまたま知り合いの不動産屋さんが須之内歯科で働いている女性と出会い、院長に建物が誰の設計なのか聞いてもらいました。そうすると松村さんだということが分かりました。ここに新たな松村建築が発掘されました。ちなみに右側の恋中の建物は違う方の設計のようです。

ここで松村建築の特徴を紹介したいと思います。

松村さんの経歴もあり、病院建築が多いです。日土小以前からそうですが、軒や庇など夏の日射を遮る屋根等がしっかり出ています。あとはバルコニーや手すりのシャープさ、かっこよさ。デザイン全体の薄さとか軽やかさも特徴になります。また大きな連窓引き違い窓も特徴の1つです。窓の上にもう一つ窓がついている窓ですが、日土小も外の光を教室内にたっぷり取り入れるため大きな窓がたくさんあります。あとはベランダバルコニーなどで建物が堀深くなっていることなどです。

次の写真は松村さんが設計したかは分からないのですが、ある医院の建物です。面白いなと思って、よく見てみると連装の引き違いの大きい窓、袖壁、シャープさ、庇などこれは松村さんの設計ではないかと思いました。建物正面から見ると袖壁と優しい庇があります。須之内歯科と同じようにパラペットがくり抜かれているデザイン。横から見ると真ん中がぽっかりと開いて中庭があります。反対側の建物とよく分からない繋がり方をしています。これは誰が設計したかは分かっていません。

このように愛媛には松村っぽい建築がいっぱいあるので、これを機に発信したいなという思いがあり「#松村っぽい建築」というものを考えました。今インスタで検索しても0件ですが、これから皆さんと一緒になって松村建築の特徴を参考にインスタに「#松村っぽい建築」というハッシュタグをつけていただいて建物の写真を投稿していただければと思っています。それを僕と白石さんが見ます。そして松村建築っぽいものは調査します。そして結果をDMします(笑)。


最後に、「建築」とは。建築家の青木淳さんの言葉に、建築とは「ルールを作ること」と、「矛盾をクリアすること」というものがあります。建築家は建物のルールを作ることができます。例えば窓は大きい引き違い連窓だけにするとか。矛盾をクリアするというのは、建築家は建物をデザインしますが、クライアントあっての建築です。お金を出す人がいて初めて建築が作られます。そのクライアントの要望には必ず矛盾があるものです。例えば、開放感が欲しいけどプライバシーは守りたいとか。そのような矛盾をクリアする事が建築であると青木淳さんは言いました。その言葉をひっくり返すと、ルールと矛盾が建築の見方や、読み解き方になるのではないかと思います。どうしてこのような形の建物になったのだろう、こういうルールがあるのではないか、ここは矛盾しているよねとか。シンボリックな建築を作りながら、オブジェクトじゃないほうがいいと言ったりだとか。

街の中には実は宝石のように光輝く建築がまだまだたくさんあるのではないかと思っています。



トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(2)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(2)

トークイベント『愛媛の建築について』座談会


トークゲスト PROFILE

宮内 健志・みやうち けんし

松前町出身。高知で8年過ごし2014年に帰郷。現在は工務店で働きながら、えひめ建築めぐりのブログを更新中。町の中に潜む独特な建築が大好物。