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「第1回福岡県認知症カフェ交流会」に関するご報告

2019.12.19 06:02


(はじめに)

・上記表題の件で、2019年11月17日(日)(14:00~16:30)、久留米市商工会館5階大ホールで、下記の内容で交流会が開催されました。その内容の概括をご報告します。

  ■主催:久留米市認知症カフェを広める会

  ■共催:音成脳神経内科・内科クリニック、(株)王子&エムコム、一社)久留米健康くらぶ

  ■後援:福岡県・久留米市・久留米医師会・久留米介護福祉サービス事業者協議会・

      久留米三井薬剤師会・久留米歯科医師会・西日本新聞社・読売新聞西部本社・朝日新聞社・毎日新聞社

  ■内容:【一部】武地一先生講演会「認知症カフェの現状と課題そして提言」

      【二部】活動報告「一社」久留米健康くらぶ開設6年間の歩み」

      【三部】交流会「認知症カフェの課題と対策の討議」

・参加者は福岡県下のみならず佐賀県からも出席していました。200人前後は参加していたようです。

・当交流会の趣旨は、NPOによるオレンジカフェ運営者の連携を目的として、お互いの情報交換や交流会などを通して、瀬在琢磨し合う環境を提供することにあります。

 環境づくりには当然NPO活動を援助・支援する福岡県・久留米市の行政関係や医療・福祉関係団体なども参加しています。

1.主催者:「久留米認知症カフェを広める会」

・久留米市では5つのオレンジカフェが運営(1つは休業中)さあれており、そのリーダー格が「(一社)久留米健康くらぶ」(理事長横道正克氏)である。

 久留米市内には久留米大学医学部、聖マリア学院大学など福祉・保健・看護・介護などの学部を要しており、自治体も積極的に介護・認知症対策に積極的に取り組んでいることもあり、したがってNPO活動も熱心に運営されているという評価を受けている。

2.「(一社)久留米健康くらぶ」→認知症カフェ「ほっとカフェ中央町」の紹介

・認知症本人や家族、心配な方々が進行防止・早期発見・予防で気軽に集う居場所づくりを

平日毎日(10時~16時)運営し、本年度で5年目を向かえる。平日毎日運営している

カフェは全国的に見ても非常に稀なケースである。

・利用者は約70人、入会金1000円、利用費用は時間帯別で以下の通り

利用費用① → 午前10時~12時及び午後13時~15時  月4回2500円

利用費用② → 1日利用(10時~15時) 月4回4000円

・当カフェの6年間の活動に対して以下の顕彰を受けている。

 ①2011年→久留米青年会議所主催「久留米人まちづくりコンテストグランプリ」受賞

 ②2015年→「ふくおか共助社会づくり表彰」にて福岡県知事賞受賞

 ③2016年→「福岡県地域づくり活動賞」にて準グランプリ活動賞

3.武地一先生講演会「認知症カフェの現状と課題そして提言」の概要

●武地先生は認知症対策(オレンジカフェ)の第一人者と評価されている医者である。

 (京都大学医学部卒業、1999年京都医大付属病院に物忘れ外来を開設、日本認知症学会・日本老年医学会代議員・専門医・指導医、京都認知症カフェ連絡会代表世話人、NPO法人「オレンジコモンズ」理事長、「オレンジカフェ上京」の開店など)

●武地先生の講演内容については、特に運営上の課題や問題点について指摘する。

(1)【最も印象的なお話】→「認知症になってよかった!?」とは!!

 ・冒頭に上記内容の話から始まった。認知症が皆が最も恐れているガンよりも大変が病気であるという認識が高まっているなかで、“認知症になってよかった”という指摘には驚きを感じえなかった

 ・認知症になってよかったという話は、オレンジコモンズに通うBさんの感想である。その感想とは次の通りである。

  “ここに集まっている人は病気のことが共通項でしょ。でも病気のことばかりではなくて、いろんなアホは話も何でも話せるからいい。自分の弱い部分をみんなにわかってもらえているから、とても気楽になれる。弱いところを隠さなければいけないところはしんどい。認知症にならなければ、こんなふうに人々で出会って、話しをする機会はなかったと思う”

(2)認知症およびその家族と接するときの運営上の留意点

①認知症の人と接する時

・「介護してあげる」という一方的な気持ちではなく、友人として一緒に楽しもうとしてい

るか

・遠隔記憶と近時記憶の違いを理解して、本人と会話することができるか

・疾患の種類や重症度を意識して、本人へのかかわりや会話、助言、同行ができるか

・本人の得意なことや興味があることを引き出すことができるか

・本人の不安感を意識し、安心を与えるような会話やかかわりができるか(会話の複雑さや声のトーンなどの調節も必要)

②認知症の家族の人と接する時

・認知症の人を見守る家族の気持ちを理解し、家族が話したいと思えるような傾聴ができるか

・家族の認知症症状への理解が不十分な場合、病気の特徴や接し方をアドバイスできるか

・家族が困っていることに対して、助言できるか(内容は多岐にわたる)

・介護保険サービス利用に関して適切なアドバイスができるか

・家族自身の健康や生活に対して助言や気を配ることができるか

③本人と家族双方へのかかわり

・認知症の人と家族の相互関係について理解し手、両者が良い関係にあるようにコーディネートできるか。

・家族が、日々の生活の中で、従来認知度の人がしていた役割を担っていることを理解し、

心理的支援や助言ができるか。

④認知症について、このようなことも心得ておこう

・認知度の中核症状と行動心理症状にわけて治療期間や治療目的の違いが説明できるか

・認知症の人に良い状態と悪い状態があることを意識して、その状態が周囲の人の理解や接

し方によって変化することを理解できているか

・認知症の本人や家族がみずから支援を求めて医療やケアの場に現れるのが難しい場合があることを意識し、そのような場合の対応法について専門職と相談することができるか

・若年性認知症の場合の本人・家族の特別な心境や制度利用について知識を持ち、かかわることができますか。

・ボランティア同士の考え方が異なるとき、時には他者のやり方に従ってみようと思うことができるか

・地域の人々のニーズくみ取り、認知度についての地域啓発に大切な助言を行うことができるか

(3)認知症カフェに期待される主な効果

①認知症本人

➢ 同じ立場の人とつながり、交流することができる

➢ 認知機能低下に引け目を感じることなく社会との接点を持てる

➢ 本人とスタッフが、対等な生活者として個性を尊重した交流ができる

②認知症の人と家族

➢ 同じ病気の家族を持った同士での日常の困難さや様々な工夫を話し合える

➢ 専門職にも気軽に相談できる

➢ 自分の家族以外の認知症の人の様子を見聞きすうることで、視野が広がる

③専門職のスタッフ

➢ 初期の認知症の人やその家族の葛藤や悩みをじかに感じる

➢ 認知症の人が持つ生活者としてのバイタリティを感じることができる

④市民ボランティア

➢ 認知症を生きる人々への接し方を深く学ぶことができる

(4)認知症カフェ運営上の課題

①京都認知症カフェ連絡会アンケート(2015年6月実施)にいる上位6位までの課題

 1位:マン・パワーの確保が難しい    2位:広報の仕方が難しい

 3位:参加者が少ない          4位:運営場所や設備が不十分である

 6位:運営の内容が定まらない

②多くの課題の1つに思えるが実は大事な課題 → カフェ開催回数の問題

・このテーマ1つを考えることが、以下の多くのことに関係する

➢ 本人・家族にもたたら効果 ➢ マンパワー(スタッフ数、専門職か市民か)

➢ コスト          ➢ 開催場所     ➢ 運営の内容

・年間30万円の収入が欲しい。(スタッフなどの人件費が支払い可能となる)

・自治体の補助は平均15万円ほどなので、自前では15万円程の収入が必要となる。

 <約15万円の収入を確保するためのケース>

 例1 月1回実施、1回当たりの平均参加人数30人のケース

30人×12か月÷15万円=参加者1人当たり約417円の徴収

 例2 月2回実施 1回当たりの平均参加人数30人のケース

60人×12か月÷15万円=参加者1人当たり約208円の徴収

・国ベースで認知症対策予算は約14兆円である。認知症対策NPOは全国で約1万組織あり、仮に30万円の補助金を出してもわずか0.002%であり、自治体はもっと補助金を提供すべきである。

4.久留米認知症カフェを広める会(「一般社団法人久留米健康くらぶ」)

(1)久留米健康くらぶの6年間の認知症対策(「ほっとカフェ」)での顕著な成果

 ・平成30年度での延べ利用者数は4,950人であったが、その成果としては次の2点に集約される。

 ①進行防止・早期発見へ寄与(家族の認知症への正しい理解とご本人への穏やかな対応)

 ②地域包括ケアとして寄与(病院・物忘れ外来・地域包括・介護事業所・市民ボラと相互連携・橋渡しの場所として機能)

【ほっとカフェ12月度活動】

(2)運営状況

【平成28年度活動計算書(平成28年4月1日~平成29年3月31日】

 (経常収益) 計5,578,308

  ①受取会費(正会員・賛助会費)   137,000

  ②受取寄付金           1,390,000

  ③久留米市助成金         1,125,000

  ④事業収益            2,918,545

  ⑤その他収益             7,763

(3)認知症カフェ6つの課題と提言

 ・以下の課題と提言は当広める会が、5年間の京都・東京・福岡県内等各地の先駆的認知症カフェ約40か所を訪問し取材した結果の集約である。

  また「社会福祉法人東北福祉会:認知症介護研究・研修仙台センター認知症カフェ実態調査(2017年3月)」を参照しまとめたものである。

≪ 課 題 ≫ ≪ 提 言 ≫

■認知症ご本人・ご家族の参加が少ない

・認知症カフェでは難しく〇〇カフェでは伝わらない。 1.表示は認知症【予防】カフェが良い。

・予防の表示により、認知症ご本人も家族も地域の方々も参加する。

■多くのカフェで、スタッフ不足と場所で継続が難しい。

・介護施設や地域包括等主体の運営ではスタッフ不足で課題が多い。 2.住民・家族の会・任意団体・NPOなどが

主体の運営が望ましい。

・地域の専門家や市民ボランティアの支援が広がり円滑な運営が可能

■プログラムや内容で困っており単調になりやすい

・脳トレ・体操・専門家・市民ボラ等スタッフ不足で難しい 3.笑顔で楽しく過ごす継続の仕組みづくりが必要

・脳トレ・体操・専門家のお話し・おしゃべり等様々な楽しみを創る

・住民主体の運営で地域の医療・介護従事者・市民ボラも集まる

■開催頻度が、スタッフ不足等で月1回が大半となっている。

・専門家主体では、月1回程度の開催が限度おとなっている。 4.最低週1回以上で、記憶の持続や継続参加に繋がる

・住民主体で、時間と思いのあるスタッフ数名で頻度も増える

■場所が、介護施設や病院等では敷居が高く立よりにくい

・調査結果で明らかですが地域に場所を変えた事例もある。 5.住宅街・商店街等の中の気楽に集える場所は大事な要素

・古民家・空き店舗・小集会所・お店の空いた時間などが良い

■運営費用に不安があり実費200円前後では赤字が続く

・大半がボランティア活動で、内容や運営の充実が難しい。 6.利用者会費制(500円/1回以上)+補助金で運営費+人件費も可能

・赤字・補助金期待では継続が難しく自立のための運営費確保は大事

5.今後の展開について

①住民型認知症【予防】カフェ(総合事業:住民型通所サービスB)の普及拡大

・第1回認知症カフェ交流会の武地先生の講演や参加者アンケート等のまとめより、更なる具体的な展開を検討する。(注当日の交流会でアンケートが実施され、その質問の一つに「住民型認知症【予防】カフェ」(日常生活支援総合事業)に対する今後の取り組み意向についてがなされていた)

・久留米認知症カフェを広める会として、行政等との連携を図り久留米地区での小学校単位での早期設置(約50か所)拡大を目指す。

・交流会参加者の有志で発足する≪福岡県認知症カフェ連絡会≫にて、様々な課題を検討して、各地域での設置拡大を促進する。

②福岡県認知症カフェ連絡会の次回会合について

・日時:2020年2月9日(日)14時~16時

・場所:福岡県NPOボランティアセンター5階会議室(福岡市:福岡県吉塚合同庁舎5階)

・対象:認知症カフェ運営者及び市町村・地域包括支援センター・社協・医療・介護従事者・キャラバンメイト他

・内容:①第1回交流会のまとめ・質問票・アンケート結果の報告

    ②連絡会参加者の現状と課題   ③会則について

    ④2020年度の活動について  ⑤その他質疑応答

【最後に:感想など】

・武地先生の講演は、オレンジカフェ運営の創始者などと紹介され、また著書も多かったが、内容的にはあまり参考にならなかった。残念ながら退屈であった。(認知症カフェの本を1冊読めばそれで十分済む内容程度の話であった)

・一方横道理事長(ほっとカフェ)の方は15分程度の話であったが、さすが実践的でマーケティング的な発想に基ずく運営の話であり、大いに参考になった。

・交流会については参加者を数グループに分け、テーブル毎に意見を交換し、武地先生や横道理事長が助言を与えるという形を検討されていたが、参加者が予想を上回り結局は質問票で質問し、武地先生または横道先生が回答するという形をとった。

・出席者の質問内容については、参加者が集まらない、運営費に困っている、卓話などで専門家を探すのが大変、行政支援があまり期待できない、実施場所に困るなどの内容が多かった。またその解答については、目新しいものがなかった。(その点では、むしろ当NPOの方が健闘しているという印象をもった)

・私の質問は、認知症予防カフェという看板を挙げるからには、認知症患者自体の参加をどう考え運営していくか、できれば認知症者とその他の人が同席という形を取った場合、その課題や展開方法を聞かせて欲しいという質問をした。

 この解答については、武地先生は、カフェ運営について一番重要な課題であり避けて通れない課題である。その対応方法については、認知症者とその他の出席者は別個の席または別個の部屋というように分けて実施すべきだという回答であった。

それに対して横道理事長は反論をされていた。質問者が望まれているように認知症予防カフェだとしても、認知症者が別個にという形を取るということはそれは逃げだ、同席するところにお互いの立場が共有できるのであり、摩擦が生じてもそれ自体が本当の実感体験であり、従ってお互いが良い体験になるので、質問者の方の指摘の通り、同席という取り組みにチャレンジして欲しいという回答であった。

・横道理事長は“住民型認知症【予防】カフェ”を久留米市内に約50か所を活動目標として取り挙げているが、この点につては時間がなく説明がなかった。住民型認知症【予防】カフェとは初耳であったが、推測すると厚生労働省が提唱している「住民型通所サーボスB」のことだと思われる。仮にそうであれば、一般のNPOが運営しているオレンジカフェとどこがとう異なるのかが不明である。「住民型通所サーボスB」(他にもいろんな形態があり、行政がいうことがますます混迷になってくような印象である)と考えれば、それは市町村マターとなるそうで、市町村自治体の意識がますます重要となりそうだと思える。

 厚労省はこのような施策を丸投げし、自治体にもっと今後このような活動を行う団体に協力させ、介護保険の節約に結び付けようとする考えであろう。(自治体が何もしないというより税金不足でできないのかもしれないが、厚労省はもっと口だけでもっと何もしないと思うのだが)

・この住民型認知症【予防】カフェの提案の中で、運営に当たっては、地域全体で取り組むこと、つまり主体者は住民・任意団体・NPOが核となり、地域の専門家、介護事業所、各種専門家などの協力を引き出すため、または場所の提供、予防施策に対するプログラム提供、そして補助金など自治体が積極的に支援していくという姿勢(仮に自治体が本気になれば)については賛同できる。

 この点久留米市は「市民活動・絆づくり推進事業費補助金」新制度を設けた。この趣旨は、校区(自治会などが行っている地域づくり活動など)とNPOが連携して地域のための活動を行うことに意義をみとめ補助金を支援するものである。

 わざわざこのような新制度を設けるということは、ややもすると従来のNPO活動(または自治体活動)が単独で行う活動(地域の協力がないので単独にやらざるを得ないという面が強いと思うが)でも、自治体などの活動目的と同質のものであれば、連携することで(それが一部連携、または支援・協賛活動でも)、そこに一つのプラットホームが形成されるであろうし、参加者も期待できると思える。(つまり1+1が3というシナジー効果が期待できるというがいえよう)

 当NPOも中学校区別で展開することで、各地域で活動している人々に協力していただき、その連携を強めていくという姿勢はまさに久留米市の姿勢を先取りしている考え方であるといえよう。私たちのオレンジカフェもまだ数回ですが、むしろ進んだ活動をしているという自信らしきものも感じました。