鈴木さんの杜豚(もりぶた)その2/大塚智穂
2016.08.01 12:00
2015年秋。
小豆島町にある醤油会館で「文字に文字展」がおこなわれた。
私はクロージングイベントの打ち上げのお料理を頼まれた。
島外からのお客様も多いとのことで、今回のお料理は島で揃う旬のお野菜やお魚、そして初めて杜豚を使ったメニューにしようと決めた。
お料理を頼まれた時は食材だけでなく、調味料もなるべく島の物、また手作りの物を使うようにしている。島ではお醤油蔵も沢山あるし、島で作られた御塩(ごえん)もある。さらに、小豆島産のオリーブオイルまで揃う。おなじ風土で作られたもの同士、相性が悪いはずがない。
いよいよ仕込み開始。
初めて鈴木さんの杜豚を手にした時、ドキドキした。
普段スーパーで何気なく買っていたお肉だったけれど、
本当はそうじゃないんだ。
ぶーちゃん。
沢山の人に食べてもらうからね、ありがとう。
自然と出た言葉だった。
鈴木さんの杜豚は色々なお料理に変身した。小豆島の御塩(ごえん)をふんだんに摺り込み、庭に生えているローズマリーやレモングラスで香り付けし、ローストや塩豚に。島のニンニクも入れて作ったリエットはブルスケッタに。ホロホロになるまで煮込んだラグーも並ぶ。有り難いことにどれも好評で、杜豚を使ったお料理は沢山の人に食べてもらうことが出来た。
大切な命をいただくのだもの。
1人でも多くの人に食べてもらいたいという気持ちが、さらに強くなった。
大塚智穂