プレゼント事件とアーリートラウマ
僕は身近な人とのプレゼントのやりとりが苦手です。割と昔からだけれど、顕著になったのは大人になってから。
この前この性質を巡って、妻と事件が起こりました。
パートナーシップの築き方や四魂の窓、アーリートラウマのことなどが関わっていてかなり面白い話なので、この分野にご興味があったら、ぜひ読んでみてください。
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僕らはその日、久しぶりに札幌の街に二人で行きました。
いきの車の中で彼女が僕の手袋に気づきまして、「それ街用ではないよね。雪かきにはいいかもしれないけど。街に履いていける(北海道弁では手袋を履くという)かわいいやつとか必要だね。」というようなことをいいました。
僕はその時まで全く気にしていなかったんだけれど、「そうか、けいこさんがそういうなら街用の手袋を入手するか。」と思ったわけなのです。
僕の心の中にはそれ以降、「街用に最適な手袋は何か」という問いが「データ収集必要案件」としてキープされました。四魂で智の強い人が自動で作動させてる機能。
ランチをちょっと素敵なお店で食べたりして過ごした後、夕方、別行動タイムを取ろうってことになりました。この時点で僕のデータ収集機能は、2つ目の手袋に求める要素をその時なりに割り出していました。それはスマホのタッチパネル対応ということと、東京で自転車乗っていても快適な防風防滴。
そしたらたまたま無印良品で手袋を見かけました。
機能として申し分なく、デザインも品があってふつうにいい感じで、2000円しないので2つ目買うにはなかなかいいんじゃないかなと思った。
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早速けいこさんにメッセンジャーで写真送って、これどうかな、と聞いたのね。
けいこ「・・・それがいい?」
わたる「この件を早く片付けたい」
け「。。。」
け「とりあえず買わないでください。」
わ「えー、そうなんだ」
というやり取りになりまして、僕はもやもやしたのでした。
合理タイプの僕としては街用の手袋決めるなんてさっさと処理済みボックスに入れたい案件なのです。
帰る時間が迫ってきて、どうするつもりなんだろうな〜と思って「あとでみるの?買っていいの?」とまた連絡してみたところ:
け「手袋は私が担当するから。心配無用。」
わ「うーん、心配すぎる」
(僕が大事にしたい機能とか知らないだろうし、と思ってる)
「よほどダメじゃなければ、今日これを買って帰りたい。」
け「手袋買った」
わ「えーーー!!!なんで!!??
機能は!?」
け「、、、」
「プレゼントなのに」
「気に入らなかったら返品してください」
というやり取りになりました。彼女にとって、クリスマスのプレゼント交換はとても思い入れのあること。ツリーの下にプレゼントが積まれて行って、クリスマスの日にそれを開ける、みたいな欧米風のスタイルへの強い憧れがあるのです。
僕はこの瞬間、「はっ、しまった!」という気持ちと同時に激しい怒りがわいてる、みたいな状態になっていたのでした。
英語で言うアップセットって感じ。
けいこちゃんがせっかく選んだプレゼントに、なんというかケチつける感じのこと言ったことにも痛みがあるし、機嫌損ねることへの恐れも出てくるし、いやしかしそもそもさぁ!!っとまた怒りが沸騰する。
札幌駅ステラプレイスのベンチに座って、なんだこの激しい反応は、と思ってちょっとよく観察することにしました。
明らかにアーリートラウマが複数、刺激されちゃっている。
あと5分か10分は時間ある。
顔をあわせるまでに、ごめんって言えるくらいには落ち着いておきたい。
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何がそんなに怒りに触れるのか。
まず出てくる声は「尊重されていない感覚」ということ。ああそうか。僕なりに手袋についてすでにあれこれ研究を始めて、こういう条件がそろってるのがいいなというところまで考えたけど、それが何もなかったかのように扱われている気がしている。
小さい時からしっかり調べて考えて本質を捉えたと思ったことを話しても、その重さと深みで受け取ってくれる人は身近にいなかった。そしてその場の思いつきとか、僕から見たら薄っぺらい意見やアイデアが優先されることがよくあった。
あなたの考えは取り上げるに値しない、と扱われているようで、これは必要な尊重や尊敬が得られない経験であり、ほとんど魂を冒涜されるくらいの感覚でした。
そうしたことが続きすぎて僕はすっかり、「決して誰にも理解されない病」になっていったのでした。この人たちには本当のことを言うだけ無駄だな、と。
常に他のタイプよりも深くものを見ようとしている智の人、あるあるです。
その再現なんだな。
僕へのプレゼントは、あなたの考えは取り上げるに値しない、を物質化して突きつける。
それが関係の薄い人だったらそんなに気にならないけれど、ごく親しい人だと、理解や尊重を期待している分、痛みが大きくなる。
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そもそもクリスマスのプレゼントとか苦手だったのだけれど、なんでかさらに深くわかった。
欲しくないものをいただくことがほとんどだし、いただいちゃったものの、どうしたらいいのかわからないのだ。僕は。
手袋とか、品目が決まっていたらさらに僕のリサーチしてきた結果は無駄に捨てることになる。その労力や時間といった、費やしたリソースごと。ああ、がっかり。
だからそんな思いをさせるんじゃないかと思って、プレゼントを選ぶのもたいそう苦手。一緒にいって相手が選んだのに対してお金払わせてもらう方が気が楽。
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とはいえ、こうした声は僕の中の、傷ついて防衛的になっている「子ども」の部分が言ってること。
そうか〜、尊重されない気持ちになったのか〜。
それは下手したら魂冒涜されるレベルなのか〜〜。
そりゃいやだよねえ。
とわかってあげるステップが必要。
必要だけれど、そのあとは大人に戻るのも必要。大人同士でいい関係を作っていきたかったら。
この場合、僕の中の成熟した大人の部分は、
「まあでも、どんな手袋買ってくれたまだ知らないわけだし、あきらかに僕に対する前向きな思いから買ってくれたものなんだよ。ひとまず否定的なこと言ったのは謝って受け取ろうよ。意外とすごい気に入っちゃうかもしれないよ。」
という感じに立て直して、待ち合わせ場所に向かいました。
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けいこさんもやってきて、僕は「ごめん、さっきのはひどかった。僕の傷がたいそう疼いてしまった。」と言いました。
けいこさんは幸い、ものすごく怒っていたり不機嫌だったりはしませんでした。
が、「も〜〜。最悪だ。クリスマスプレゼントの中身をこの段階で自分からばらさなきゃいけないなんて。」と言っていました。
そして「何がそんなに傷に触れたの?」と聞きました。
彼女はこういう話を聞くのは大好き。
それで電車に乗ってから、僕は上で書いたような発見を話して、彼女は適宜、「なんでそれが尊重されていないことになるの?」とかいろいろ質問しながら聞いていました。
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け:「あ〜、プレゼントもらったらすごい責任感じちゃうわけね。それを使わなきゃいけないって思うんだ。」
わ:「だってその人なりに最善だと思って選んだわけでしょ。僕がもし大切な人にわざわざプレゼントするなら、知りうる限りの情報を使ってベストを尽くすと思うわけ。それがスルーされたらだいぶショック大きい。
そういうショックを与えるのは忍びない。」
け:「でもそれはしょうがないじゃん。重いなあ。そこじゃないんだよ。プレゼントっていうのは。気持ちを受け取って、モノはまあ、そういう時はしょうがないから使わなくたっていいんだよ。
気持ちだけ受け取るっていう風にできないってことかあ。
この手袋だって開けてみて気に入らなかったら、極端な話、返品して気に入ったのに代えたっていいんだよ。ほんとにそう思ってるよ。」
わ:「ひえええ、そ、そうなのか。」
け:「私がもらう時も、気持ちを受け取ってる。中身は気に入らないものだったら、使わないとか、あげるとかすると思う。せっかく何かもらえるチャンスだったけれどそれが十分生かされなかったのが残念だな、くらいは思うけど、相手に悪いとかは思わない。」
わ:「そうかあ〜〜。そういう人いるのはわかるし、多分その方が軽やかなんだろうけれど、ハードル高いなあ。」
け:「私の話もしていい? 今日手袋の話が出たから、別行動タイムが始まった時にふたこさんにあげる手袋を見に行ったわけ。クリスマスラッピングして当日まであけずに取っておくの。
初めのお店はいいのがなくて、時間ないけどいくつかお店あたってみて、そのうち、お、これは!というのをみつけた。
そして急いでレジに並んでるときに、メッセージが来たんだよ。無印の手袋買っていいかって。ここで買ったとバラすわけにもいかないし、とりあえず買わないでって送るしかなかった。
別のカウンターでクリスマス専用のラッピングサービスをやってるっていうから、急いでそこに行ってお願いしようとした。そしたらなんか、条件があってダメかもしれないみたいで、奥の上司に相談してくるとかって話になって、まあ結局OKだったんだけれど。
そうしているうちにまたふたこさんから、手袋今日買っていくってメッセージがきた。こんな時に畳み掛けるように。で、もうしょうがないから「買った」って伝えることにしたんだよ。
クリスマスまで中身内緒にしておきたかったのにな〜〜。も〜〜。」
みたいな話をしました。
けいこちゃんの話を聞いているときに、なるほどと思ってその気持ちを受け取ることと、実際のモノとわけて捉えてみることを意識してました。
そしたら限られた時間の中で奔走してくれたその気持ちが、暖かく流れ込んでくるような気がしました。
尊重や尊敬の欠如が流れ込んできていたのに、別のチャンネルに合わせたことで、暖かさが流れ込んできた。
彼女にもそのことを伝えました。
この分野で仕事してきてるからこういうことがあるのはよく知ってるはずだけれど、あらためてなんとも不思議な感じの嬉しさを味わいました。
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で、僕のここのトラウマの重症っぷりを「いや〜、だいぶひどいね」って二人でおもしろがって、笑って帰ってきたのでした。どちらかの傷が反応してしまったとき、できるだけ短時間でこのくらいのところまでたどり着きたいと思っているし、その認識を二人で共有できているのはしみじみありがたいなあと思います。
今回触れた傷はとくに癒しが進んだわけでもないから、またきっと刺激されちゃうことでしょう。
でもここから変わっていくであろうことが実感できたエピソードでした。
手袋はまだ、ラッピングされたままクリスマスの日まで置いておく予定です。
こうしてこの日の、真実からの関わり合いは終了したのでした。
おしまい。